以下は、岩波文庫「シベリア民話集」(斉藤君子訳)に掲載されている一話の紹介、感想です。
もともと私の行き付けの チャット友達に見せるため、昨年の秋くらいに書いてサーバー上にアップしたものを若干加筆修正したものですが、もとの文章は今のところ内輪以外には見られていないはずで す。

ちなみに私はこの本、まだ343Pあるうちの46Pまでしか読んでません。
ここで感想を書いたのは、そこまでの6話のうち最もロックだった話ですが(この言葉の使い方合ってるかいまいち自身がない)、聞くところによると、このすぐ後に載ってる「兎のミルカ トリク」という話はもっとロックらしいです。

さておき、以下本題。文体はここから常体で。


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まず、私がシベリアの民話に興味を持ったきっかけの話から。

「北のことばフィールドノート」(津曲敏郎 編著/北海道大学図書刊行会)という本を読んでいたときのこと。
アジア・北米の北太平洋沿岸地域の少数民族およびその言語、生活、文化を紹介している本だったのだが、その中にツングース系民族の民話の紹介があった。
「ツングースの民話には日本の民話とよく似た話がたくさんある」とのことで、「因幡の白兎」「鶴女房」などの日本の民話とよく似た話が紹介されていた。
日本人のルーツ、有志以前の日本人と周辺諸民族との交流……。不思議なつながりが古代へのロマンを掻き立てる。

だが、そんな私の感傷は、「”さるかに合戦”とよく似た話」として紹介されていたある一話によって、遥か彼方へと吹き飛ばされてしまった。
以下、引用。(著者は風間伸次郎さんという方)


一羽の小鳥がいた。別の場所に七人の妹をもつ1人の男がいた。小鳥は男を殺しにでかけた。途中で出会ったドングリと、魚のアゴ骨、下痢便、焼き串、それに大槌を引き連れて男の家に行っ た。全員所定の位置に隠れた。男が帰って来てかまどの灰をかきまぜるとドングリが爆ぜて男の目に入った。水を飲むと魚のアゴ骨が喉に刺さった。下痢便に滑って転び、焼き串が体にささった。小鳥に突っつかれて家の外へ出てくるところへ、屋根から大槌が落ちてきて、男は死んだ。小鳥は二人、 ほかの者も一人ずつ男の妹を嫁にもらって暮らした。


……「さるかに合戦」と似てるとか、古代への郷愁だとか、そんな問題などもうどうでもよくなる このカッ飛びっぷり。
そして、その他に紹介されている様々な民話にも、ここまで強烈でないにしろ共通する、多少の矛盾や不条理など気にもしないその奔放さ。
そんな素晴らしきシベリアの民話に魅せられた私は、すぐさま書店へ走り、この岩波文庫「シベリア民話集」を購入したのであった。


さて、そんな期待に胸を膨らませて買った本書であったが、最初の五話を読んでみると、どれもこれもが期待したほど凄まじい話、というわけではなかった。
いや、そのうちの一つ、アジア・ エスキモーの「海で遭難した男」という民話は、いま詳しくは述べないがかなりブッ飛んでいたのだが、
その他の話は多少のツッコミ所はあるものの、比較的平穏であった。
特に、同じくアジア・エスキモーの民話「オーロラになった若者」は、両親に死なれた青年が、「死者の魂は天に昇ってオーロラになる」という話を思い出し、紐を伝って天に上り、北極光の長になるという美しい話である。

それならそれでいいのだが、少し不安になってくる。もう「海で遭難した男」ほどの逸品はないのであろうか……。
しかしそんな私の不安は、このチュクチャ族の民話「人食いケレ退治」によって、見事に打ち砕かれた。

 注釈によると「ケレ」 というのはチュクチャとコリャークの民話に登場する、地下に住むといわれる魔物。ときどき地上に出てきては人間に危害を加えるが、最後に勝つのはいつも人間の方であると のこと。つまりこれは妖怪退治の類の物語である。

 さて、前置きがかなり長 くなったが、いよいよはじまりはじまり……。


「人食いケレ退治」


 昔、息子がみんな死んでしまった男がい た。男は年をとり、息子たちに先立たれてしまったんだ。ところが、年をとってから男の子が生まれた。この子は大きくなると、ボートを作りはじめた。 父親が眠っている間も ボートを作ったほどだ。

 ボートを漕ぎ出して、はるかかなたへ旅立った。旅の途中、島に男がいるのが見えた。

(岩波文庫の本文では特に示されていないのですが、後のストーリーを見る限り、どうやらこの”男”は前述した「ケレ」のようです)

「こっちだ、こっちへこい!」
「今 いく」

 男の子はいった。男の子は旅の間に小さなアザラシを仕留めていた。

「オーイ、遊ぼうじゃないか。なにかおもしろいことをしようぜ」
「いいとも」

 おっ、小さい男がボートの中に隠れたぞ。もうひとりが探したが、 どこにもいない。すると男の子がボートの中からころがり出てきた。

(この辺、「男の子」とか「小さい男」とかが、登場人物の誰のことを指しているのかが不明瞭でちと混乱しますが、そこら辺は民話の常(^^;)

「オーイ、おれはここだ! 今度はお前の番だ」

 すると相手は家になった。(意味不明)

「あいつはどこにいるんだろう。こまったぞ」

 というと、

「オーイ、おれはここだ!」

 と返事をするものだから、男の子は男を見つけてしまった。(なんだったんだ……)

「今度は肝を食べようぜ!」
「オー、いいとも! じゃあ、おいらはボートのところへいって、ナイフをとってくるよ」

 男の子はそういうと、ナイフをとってきた。そのときいっ しょに、さっき仕留めた小さいアザラシをふところにいれてきた。血といっしょにふとこ ろにいれたんだ。

「オイ、おいらが先にやる!」

 男の子はナイフ でじぶんの腹をさいて、肝を食べるふりをして、アザラシの肝を切って食べた。

「今度はおまえの番だ」

 というと、相手はいきなりじぶんの腹をさいて、死んでしまった。じぶんでじぶんを殺してしまったん だ。

(前述したように、この”男”がケレだというこ とは、本文中のどこにも明示されていないので、最初にこのシーンを読んだときはかなり ビビった(汗))


 男の子はまた旅をした。顎骨の家(※アーチ型の鯨の顎骨を円錐形に組み立てて骨組みとし、その上にアザラシの皮を張った夏用の住居)がもう一軒見えた。その家では年とったばあさん魔物のケレが頭を料理していた。(ひ〜、スプラッタ〜(^^;)男の子は家の中に入った。

「どうしたことだ。わしらの家に押しいるやつはだれだ」

 男の子が中に入って、毛皮の上に座ると、ばあさんケレが出てきた。ばあさんは血のこびりついた女もののナイフをもってきて、研ぎ始めた。すると男の子は、ナイフを持っているばあさんに いきなり襲いかかって、ばあさんからナイフをひったくると、ばあさんの頭にきりつけたんだ。ばあさんはくたばってしまった。こうして男の子はばあさんケレを殺したのさ 。


(…………(汗))


 それから外に出て、また旅を続けるうち、一軒の家を見つけた。その家にいってみると、家の中に服がちらかっていた。そのときふいに炉の方から 声がした。

「おっ、ここにいたな! こいつが遊びの賄い人を殺したんだ。こ いつが殺したのはおれたちの食い物の賄い人と遊びの賄い人だったんだ」

(え〜と……、よくわからないんですけど、「遊びの賄い人」= 最初の男、「食い物の賄い人」=ばあさんケレ、っていう解釈でいいのかな?)

 そして頭がにょきっとあらわれた。男の子が銛(もり)でその頭を 着くと、地面から出てきたケレは銛を皮ひもごと引っ張って、(男の子を)地下にひきずっていった。地下をどんどんいくと、小さな顎骨の家がもう一軒、向こう側に立って いた。そこで男の子はケレを放してやった。ケレは前を通って、顎骨の家の中にはいっ た。

 目のないばあさんがふたりそこに座っていた。男の子はじぶんのちんぽこを引っ張り出して、ひとりのばあさんの鼻の方に向けて、ぶらぶら振った。

(イ ヤン(*ノдノ))

 するとばあさんが、

「こんにちは!」

 といった。

「 やあ!」
「なんだか、亭主もちだったころのことを思い出すよ
「そうかい?」

(……えっちなのはいけないと思います!(*ノд ノ))


 男の子はそういってばあさんを殺すと、 皮を尻の穴から剥いだ。それから体は糞の山に放り投げ、皮はそこに置いた 。


 そこへみんながシャーマンを捜して、やってきた。(彼らは男の子をシャーマン(=さっき殺したばあさん?) と勘違いしたらしい)

「どうしてほしいんだい?」
「よくきいてくれた! 頭が痛む男がいるのさ……ところで、おまえの顎はどうしてそんなに長くなったん だい?」

(男の子の顎はばあさんより長かった、っていう設定なのかな?)

「えっ、ほんとうにそんなに長くなったかい?  それじゃあ、おまえたちは家にかえってな。おいらがすぐいってやるから」


 それからじき男の子はでかけた。

「頭が痛む男を座らせなよ。おう、 こいつか」

 男の子はそういうと、銛の先でいきなり男の頭を突いて、殺してしまった。それで男は死んでしまったのさ。男の子はたくさんのケレを殺し、家の中をめちゃくちゃにこわすと、外に出て、 はるかかなたに旅立った。家へ帰っていったのさ。


 家につくと、親が喜んだ。

「そうとも、おいらは人殺しどもをやっつけたんだよ!」

 と男の子がいった。


 おしまい。 私は風を殺した。(※チュクチャの昔話にしばしば登場する、語りおさめの慣用句)



 -総評-

 エロスと狂気に満ちたスプラッター!
 残虐非道な化け物たちにそれ以上の残虐さを持って立ち向かうアンチヒーロー的な主人公!


 どことなく三浦健太郎の「ベルセルク」を思い起こさせはしないだろうか?

 ちなみにこの物語が採録されたのは1900年……。う〜む、恐るべし、チュクチャ族!!























/\ /\ /ヽ ヽ
/\ / \ /ヾ、 ヽ         子
            ,.ヽ こ
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