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怪しい話−929

「ヤコブ病」

 狂牛病とは何か?というと、これは今のところ封印してある”狂牛病の蘊蓄”の回に詳しい。

 まあ、かいつまんで言えば、わかっていないこともかなり多い病気であるとだけ書いておこう。

 で、なにゆえに狂牛病が枕に登場したかというと、1988〜1992年の5年間だけでも米北東部ニュージャージー州のチェリーヒル地区にある競馬場の従業員や客、少なくとも13人がCJDで死亡していることから、同州選出の上院議員2人(民主党)が米疾病対策センター(CDC)に詳しい調査を始めるように求めたという報道(2004/04/07)を目にしたからに過ぎない。

 CJDというのは、クロイツフェルト・ヤコブ病の略号で、上院議員達の調査を求めるCDCへ(6日に)送った書簡には、「BSE(牛海綿状脳症)の牛を食べて感染した疑いがある」と明記してある。

 ちなみに、これを書いている時点では、CDCは対応を明らかにしていないが、これは迂闊に調査するとパンドラの箱を自ら開きかねない案件だからかもしれない。

 現時点でも、米国は2002年に、英国で生まれ育ったフロリダ州在住の女性が変異型CJDと分かったのが唯一の発症例であり、他に国内でかかった例は確認されていないとしている。

 それはともかく、従来のCJDの発生率は100万人に1人ほどの確率であることから、人口約1万3000人のチェリー・ヒルの中の、さらに限定された職場周辺で自然発生したにしては、発生率がかなり高い事は素人が見る限りにおいて確かである ・・・ プロはまた別の見方をするかもしれないが。

* 公開されている資料では、13人が同じ町内に住んでいたかどうかは不明。

 通常のCJDは潜伏期間(20〜30年に及ぶと考えられている)が長いことから老年期に発病することが多く、惚けと混同されるケースも多々ある症状が多い事も知られているが、指摘された13人の死者には20代の人も含まれており、「チェリー・ヒルの競馬場に付属していたレストランで食べた牛肉が原因で、変異型CJDを発症したのでは」という地元住民の不安の声が背景にあるわけだ。

 同書簡によれば、死亡した13人はチェリーヒルのガーデンステート競馬場(現在は閉鎖)で働いていたり、出入りしていた共通点があるという状況証拠としてはすでに黒と言ってもいいような事例らしい。

 書簡を送りつけられる以前にCDCでも調査をしているともいわれているのですが、”CJDによる集団死亡例”という異様事態でありながら、一部の死者の脳の組織しか検査していないなど対応そのものに問題があるという指摘も既にあるようです。

 米国内では2003年12月に初めてのBSE感染牛が確認され、このあおりを受けて日本では牛丼が販売停止に追い込まれた店が出たりしたのですが、それ以前からBSEに起因するヤコブ病が発生していた可能性について改めて徹底的な調査をするように両議員は要請しています。

 米国内では、1例目のBSE感染牛が発見される前から、新型ヤコブ病の感染が起きていた疑いが指摘されるようになってきたが、CDCは今のところ、新型ヤコブ病の患者は1例だけで「患者は英国に在住していたため、そこで感染した」と国内感染の可能性を否定し続けている。

 学術的に、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt‐Jakob disease:CJD)といえば、Creutzfeldt(1920)およびJakob(1921)によって記載された疾患のこと。

 これまでは、中年以上に多く見られ、100万人に1人の発症率で家族発症としても知られている。

 亜急性(急速に症状が進む)の経過をとる痴呆、錐体路・錐体外路症状、ミオクローヌスが主な徴候で、時に視覚失認、小脳症状、筋萎縮も起こることがあるが、いずれにしても発症すると通常1年以内で死亡するケースが多い。

 歴史的には、1968年に発症に何らかの感染因子が存在することが明らかとなり、1982年にS.B.Prusinerがプリオンタンパク(prion protein)を発見し、遅延性感染と神経変性に重要な役割を果たしているようになった。

 それ故に、プリオン病(prion disease)の一つとされる事もあるが、発症には宿主側の素因も関連するとされ、研究が続いている。

 プリオン(prion)そのものは、DNAもRNAも検出できず、タンパク(プリオンタンパクprion protein;PrP)が感染因子である事がわかるまでが長かったと言われている。

 狂牛病関連の報道でおなじみになった、ヒツジやヤギのスクレイピー(scrapie)、伝染性ミンク脳症(transmissible mink encephalopathy)など家畜の病気の原因ともなっている。

 ややこしく書くと、病原体のPrPは正常型PrPの点変異型で、病原体型PrPが正常型PrPに接触すると、正常型PrPは病原体型PrPへと変化して増加していく。

 で、脳細胞内でそれらが一定以上蓄積されると脳細胞が破壊されて、外からは痴呆などの中枢神経症状が現れるわけだが、病原体型PrPの恐ろしいところは、種を超えて伝播するところにあるとされる。

 つまり、スクイレピーのヒツジの肉を餌にしたためにアリューシャンミンクや牛に病気が広がった歴史があるということで、プリオンが物理的または化学的な滅菌・消毒法にやたらと強い抵抗性をもっていることも影響している。

 で、日本への輸入を再開したいアメリカの肉屋の中には自主的に日本の基準で全頭検査をしたいと申請したところもあるのだが、なぜかアメリカ政府が許可していない。

 ちなみに、この状況で、米産牛肉輸入禁止は消費者の不利益であるとか、全頭検査に化学的な根拠はないと、マスコミで喋り続けているのが某大手牛丼チェーンの社長である。

 彼の主張を要約すると、アメリカの現行のチェック体制で十分安全な食肉が供給されているし、消費者は(CJDに感染する)リスク覚悟で牛肉を食べているといったことになるわけだが、少なくとも私はリスク承知で感染の可能性のある牛肉を食べる気は無い。

 まあ、なかなか興味深い話ではあるが、彼がTVで主張したことは記録に残っているわけで、どちらにころぶにしても、先行きが楽しみではある。

 ちなみに、アメリカ政府が何故に日本の主張する基準で輸出対象牛だけでも全頭検査をすることをかたくななまでに認めないのか?というと、実態がかなりやばいことを承知しているからではないかという声が、これはアメリカ国内の消費者団体から出てくるようになってきている。

(2004/05/20)


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