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「醤油の話」 醤油(しょうゆ)が何故に”紫”なのか?というと、別にお寿司屋さんが言い始めたわけではなく、古代紫の色をしている所からムラサキと(暇な通人達が)言うようになったそうな。 ちなみに紫色というのは、赤と青を交ぜて出来る色全般を指しますから、群青色(いわゆるナス皮色)から桔梗色の赤みを帯びた青色まで、かなり幅が広くなります。 日本では、千葉のキッコーマンが江戸時代に大量生産というか企業ベースでの生産を行うようになって同程度の品質の物がコンスタントに大量供給されるようになったとも言われていますが、各地方地方で酒蔵ならぬ醤油蔵があったそうで、現在でも小規模な醤油メーカーが各地に存在します。 醤油は御存知のように大豆と塩から造る黒茶色の調味料液体でして、極論すれば大豆味の濃い塩水を飲んでいるようなところがあります。 * ほぼ大豆と塩だけで造る醤油が溜(たまり)と呼ばれ、岐阜が主産地。蒸した大豆に煎って砕いた小麦を加え、種麹(たねこうじ)を混ぜて半年ほど発酵させてできるのが”もろみ”で、コレを絞ると出てくるのが生醤油(きじょうゆ)。 * 生醤油に火入れ(70〜80度くらいで加熱殺菌し、香りなどを付けると、いわゆる醤油ということになり、こうした過程を経ることから醸造醤油ということになるのだが、濃い口醤油は千葉の野田や銚子、薄口醤油は兵庫の竜野が知られる。 * なお、科学醤油(アミノ酸醤油)という代物があることは髪の毛の回で書いた。 江戸時代も元禄の頃になると、庶民の中にも金と暇とをもてあます者がぼちぼち出てきていたようで、さまざまな大食い競争が行われるようになっていたようです。 大食いというジャンルがあれば、大飲みというジャンルもあるわけで、わかりやすいところでは酒がどれくらい飲めるか?とかいった競争は21世紀になっても夜な夜な街の片隅で行われていたりします。 その手の記録を見ていると、酒の大飲みあたりは理解できるとして、各種の(食用)油をどれくらい飲めるかという競争もあったようです。 もちろん、醤油は名前に油と付いてはいても油脂の類では無いわけですが、比較的手に入れやすいことと、価格的に無理が無いことから大飲み比べのジャンルとして成立していたようです。 考えようによっては、食べ過ぎ飲み過ぎで人が死ぬという事は非常に贅沢な死に方なわけで、貨幣経済が発達した江戸中期以降だからこそ成立するようになったのかもしれません。 それはともかく、大食い競争は物理的な収納競争という事になりがちですが、大飲み競争の場合は、化学的な処理能力競争という事になりがちで、大飲みの方が死人がよく出ているようです。 もっとも、醤油にしたところで、死ぬほど飲むとなると一升を越えて飲む必要があったようですが、これは塩水でも二升も飲めば死ぬ人が出てくるので、昔の天然素材由来の醤油でも妥当なところでしょう。 逆に言えば、江戸時代の醤油飲み競争というのは、概ね一升より少ない量で飲み比べて急性腎不全などでぶっ倒れていた事になるようなのですが、中には二升近く飲んで連覇していた豪の者もいたようです。 これにはさすがに当時の人達も舌を巻いたようで、なんとかその秘密を探り出そうと後をつけ回すようになったりもしました。 もちろん、種も仕掛けもあって、この醤油飲みの達人は、醤油飲み競争が終わったら大量の水を飲んで風呂に入って一気に醤油を抜く事で無事(かどうかは疑問ですが)に生き残っていたみたいです。 ところが、彼があまりに勝ちすぎたことで、つけ回す方が数も増えれば意地にもなったようで、それこそ一晩中追い回したため、いつもの風呂での醤油抜きができず翌日の明け方近くに死に至ったという事になっています。 醤油飲みの達人が死んだ事件の真偽は別として、醤油を大量に飲めば体調を崩したり死に至るということが実証されたのは、おそらく江戸時代のこうした食べ比べや飲み比べだったのではないかと私は思います。 少なくとも、明治の頃には、徴兵検査を逃れるために醤油を一升近く飲むというのが一つの裏技として流通したようで、実際に、この方法で徴兵を逃れた人も少なからずいたそうです。 ただ、こうした徴兵逃れが通用したのも日露戦争の頃あたりまでで、その後の神国日本という精神教育が徹底してくるにしたがって、徴兵を通過できない方が恥ずかしいという社会になっていきます。 いわゆる甲種合格でお国のために死んでなんぼという時代が到来するわけですが、強制徴兵ではなく志願制という建前が次第に強制力を持つようになっていった時代でもあります。 さて、その徴兵逃れの醤油の一気飲みですが、これが原因で体を壊したり死亡したりする自損事故が発生したようで、どうせ死んだり慢性病を抱え込むのなら戦場へ素直に行ったらどうだったんだろうと私なんぞは思うんですが? まあ、私は醤油を飲んで徴兵を逃れる細工をする歳では既にないわけですが、若い世代、あるいは若い世代を抱えている人達には、その内にどこかで必要になるノウハウかもしれません ・・・ お薦めはしませんが(笑)。 (2005/10/01) |