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「金属バット」 金属バットといえば、金属バット殺人事件を連想するのですが、あの人は今ということで、現在の少年犯罪の原型の一つになったあの事件を少し考える。
日本で話題になった金属バット殺人事件は、予備校生金属バット殺人事件として報道されたようで、舞台は1980年11月29日早朝の川崎市高津区宮前平の(当時)新興住宅街でした。 殺人犯は、当時20歳の予備校生ということなので、最低でも2浪していることになり、かなりプレッシャーにさらされていたことが想像できますが、この事件は親殺しの側面もあり、学歴社会の歪みとか動機を簡単に解説するはどんなもんかと思います。 殺された父親は当時46歳ですが、加害者の息子は次男で三歳年上の長男がいるあたりから計算すると、学生結婚か卒業してすぐに結婚した計算になり、意外と若いときに結婚しているなと。 ちなみに、父親の学歴は東京大学経済学部で、46歳にして某大手ガラス会社の東京支店長をやっていますから、まあ順調なエリート街道を歩んでいたと言っていいのではないかと ・・・ 子供に撲殺された事を除けばですが。 兄の方は早稲田大学理工学部を卒業して既に某大手電機メーカーに勤めていた(事件当時は会社の研修で不在)そうで、在宅していれば一緒に殺されていたかもしれませんが、考えようによってはこの兄貴が一番の被害者かもしれません。 なにしろ、それなりに勉強して早大を卒業し、順調に会社に就職し、さあこれから受験戦争を勝ち抜いた恩恵にあずかろうという時に、”金属バットで両親を撲殺した弟を持つ兄”という肩書きを付けられたわけですから ・・・。 事件前日ということになる23日の深夜、父親が酒を飲んで帰宅し、息子がキャッシュカードを無断で使って1万円ほど金を引き出したことなどを叱責し、蹴り飛ばすなど暴行も加えた上で”明日、出ていけ”と怒鳴ったようで、まあ、これが直接の殺人の動機のようです。 供述によれば、引き出した1万円は酒代だったようなんですが、この時期に酒を飲んでいるような予備校生なら来春の合格も怪しいものではあっただろうなと思わないでもありません。 両親や兄からしてみれば、なんで1年やそこいら色々な誘惑を辛抱して勉強に集中し、さっさとどこかへ入学してから遊ばないのかと少なからず思っていたでしょうし、そうしたことを何度か口にしていたかもしれません。 この段階でまずいなあと思うのは、酒を飲んだ上で(体力的に下り坂の)父親が手を挙げていることで、おそらく人生で一番総合的な体力のピークを迎えている息子をそういった状態で追いつめれば逆襲がありうる事を計算していないこと。 直接のきっかけが、たかだか1万円程の金を自分の息子がくすねたことであり、既に長男に学資が必要な時期は過ぎているわけですから、東京支店長の給料というのはその程度のスネを囓らせられない程に安かったのか?という気がしてくる事件です。 どのみち、遺産の半分はこの弟にも相続権があったわけですから、その程度の金をくすねられるのは、育て方が悪かったとあきらめるのが筋のような気がしないでもありません。 ただ、20歳といえば、普通に大学に合格していれば、2年か3年生になっているわけで、同世代の多くは、酒もタバコも、SEXも自分の甲斐性でなんとかしているわけですし、バイトなどでわずかながらでも金を稼いでいい年齢ではあります。 ・・・ というか、色々なバイトで食いつないで何とか卒業した大学生活を思い出す私としては、金持ちのボンボンの逆切れ殺人事件のような気がしないでもありません。 また、父親が平均より早く結婚していた事も、無意識のうちに、”俺がこいつくらいの年には・・・”と思って親身になれなかった可能性があります。 計算上、父親は遅くても22歳になる前に結婚を決断しているわけですから、自分が結婚した年齢になろうとしているのに、こいつは何をしているんだ!と思っていても不思議ではないということ。 若くして結婚して、自分の甲斐性だけかどうかは別として、一家を養ってきたという自負は当然あったでしょうから、先の見えない浪人生でヘラヘラしている次男の人生が我慢できなかった可能性は高いんじゃないかと。 もちろん、だからといって次男のその後の人生がどうなっていくかなんてことはわからないわけで、時期的に考えれば、それこそIT化の波にちょろちょろっと乗って、若くして大富豪になった可能性もあったわけです。 両親の希望ではなく、自分の頭と相談すれば入学できる大学なんてものは絞り込めるわけですから、何浪もするというのは、実力以上の高望みをしているとしか言えないんじゃないのと野次馬としては思います。 実際、浪人して希望校に合格できる人には、現役の時に病気や何らかの事情でまともに受験ができなかった人が多く、それ以外の人でも、自分の希望校と自分の学力の間にどのくらいのギャップがあるかがわかって軌道修正した人に多いのではないかと思います。 ・・・ まあ、現在のように専門学校とか語学遊学という選択肢が無いに等しい時代ではありますが、その後の歴史の変化を考えると、今年で45歳くらいになっている次男は共通一次テストのど真ん中受験戦争最盛期のしっぽの方にいたことになります。 この手の事件でしばしば指摘される、親が思い描いたように成長しない息子へのいらだち、親の期待を満たすことを事実上強要される甲斐性なしの息子という典型的な構図が見られるあたりが、予備校生金属バット殺人事件がその後の類似犯罪の始まりとされる由縁かなと。 なお、両親を次々に金属バットで撲殺した後、この次男は風呂場で金属バットと体を洗い、強盗に入られたように偽装工作をした上で、第一発見者として隣の家へ駆け込んでいます。 当然のように、まもなく警察で犯行を自供することになるのですが、単純に衝動的な殺人というよりは幼い頭で考えた計画犯罪のはしりになるのではないかと。 ちなみに、両親の頭蓋骨は割れて叩き潰されていて、脳漿や血が部屋中へ飛び散っていたそうですから、現場を警察官が見れば、プロの強盗ではなく怨恨の線が濃いと判断しただろうなと私は思います。 その後、この惨劇が起きた家は取り壊され、現在は新しく建てられた家へ新しい住人が住んでいるそうなんですが、怪奇スポットになってもよさそうな話ではあります。 当時、特に受験生を抱えた家庭の多くで、この事件は”ああ、やっぱり発生したか・・・”と受け止めたようで、双方にとって洒落にならないというか、子が親を殺し、親が子を殺す事件が日常的になっていく先駆けだったなと。 あれこれ事件の分析じみたことを書いてはみたものの、親の職業や学歴に関係なく、この事件はいずれどこかで起きただろうし、起きなかった家庭は単にラッキーだっただけという話ではないかと。 金属バットで親を殴り殺す子の行為も異常ですが、高等教育を受けた父親が次男をわずかな金を無断で引き下ろしたという理由で(酒を飲んだ状態で)蹴り飛ばして家を出ていけと怒鳴る異常さもかなりのもので、会社などでの日頃の鬱憤を殴り返してこない(と考えていた)相手に一方的に叩き付けたと言えなくもありません。 母親も撲殺したということから、息子の側のトリガーは、両親に見捨てられたということだったのかなとも思うのですが、20歳になってまだ親に依存してオトナになれないでいたということにもなります。 親を殺すくらいなら、20歳になっているわけですから、なんでさっさと家を出て、どこぞに住み込みで働くという道を選ばなかったのか?と考えるとき、その後のパラサイト世代の先駆者という側面もあったのだなと。 何とかして親元から離れたいという人が多かった時代から、親元にいた方が(経済的に)楽で良いという人が多くなっていく時代への転換点でもあったのかなと。 現在、日常的に発生するようになった青少年の凶悪犯罪の多くは、1980年代くらいに端を発するモノが多く、そのルーツは1945年の敗戦直後くらに辿ることができます。 その意味で、青少年の犯罪が凶悪化したのではなく、青少年犯罪の凶悪化に歯止めがかからないで21世紀に突入している日本ということになるのかなと。 いずれにしても、精神的に幼いままの世代が親世代となり、その子供達が思春期を迎えた頃から、本格的にこの国はおかしくなってきたなと振り返ってみれば思うわけですよハイ。 (2005/10/27) |