連載第三話 屠殺場

昔から屠殺場(とさつじょう)の写真を撮りたくて港区芝にある屠殺場にお願いして いたのだが、再三の申し立ても迷惑そうに色々な理由から断られて半ばあきらめてい た。それから何年かして、身内の紹介によってそれは実現した。茨城は取手にある屠 殺場でなら撮影してもいいということになり、早速行ってみた。屠殺は早朝から行わ れるらしく時間も早かった、取手駅の始発のバスにのるとそこには、なんともいえな いオーラのでている50代のおじさんが乗ってきた、いつも乗っているらしく運転手と も挨拶を交わしていた。どうなんともいえないかというと、目線があうとすぐに下を むき、見られることに抵抗があるかのようで、身なりも決してキレイとはいえない服 装だった。その男は同じ停留所でおり僕と同じ方向に歩いていった。屠殺場の職員だっ た。屠殺場といところは、食肉メーカーの集合体のようなところで屠殺場本体の職員 とメーカーの職員とで成り立っている。メーカー順に仕入れた豚を屠殺して獣医によ る検査をして部位に解体され出荷される。時間が来て白衣、長靴姿に着替えて現場に 向かった。途中、職員の人に挨拶をしたりしたが、みな僕のことを警戒しているとい うか怯えているようにも見えた。中ははっきりいって壮絶だった。豚は最初にまず、 電流により屠殺される。お尻をたたかれゲートに追いやられた豚は暴れていたりする が、押さえつけられ、頭部に電流を流された瞬間、「硬くなった物」と化す。ゴロン と置物のように倒れ、後足をフックにかけられて上からシャワーが流れているエリア を吊るされて消毒されながら流れていく。このとき絶命していない豚もいてユラユラ と痙攣するようなうごきで揺れていることも多々あった。次に手足を切られ、頭をと り内臓をとり、やっとテレビなんかでも見覚えのある吊るされた豚肉といった感じに なりのである。ここまで7,8分といったところだろうか。その一連の写真を撮って いたのだが、初めて来た人間にしてみれば非常に耐え難い雰囲気と大音量の鳴き声だっ た。担当者の方がしきりにそういった事は大丈夫ですか?と言っていたのが分かる気 がする。気を失って倒れてしまう人もいるらしい。僕も写真を撮っていなかったらキ ツかったかもしれない。大量の命が絶叫と血の匂いと共に消えて場所なのだから。む かしとある小学校で命の尊さを教えようと、先生が子供たちに豚の飼育をさせ、ある 程度豚がそだったら手放すなんてことをやろうとしたところ、もちろん愛情から豚は 手放せなくなり、挙句の果てに子供たちが豚肉を食べれなくなってしまって親から苦 情が出て問題になるという出来事があったが、やはり人間は他の生命を奪うことで生 きていかなければならないということを認識しなければそれこそ罪だと思う。野菜で あろうと生命には変わりないと僕は思っている。知力が生命ではないからだ。別 に宗 教をやっている訳ではなく、その現場ではそう感じた。その日僕はあえて昼ごはんに とんかつを食べた、それは一生忘れられない味になった。そんな中それとは別 の気に なることに気が付いた、それは前半の作業をしている方ほど若くだんだん年齢が上がっ ていくことと、みな、今朝バスであったおじさんと同じオーラが出ていたように感じ た。その後、屠殺に関して書物をあさっていて驚いたのだが、もちろん全員ではない のだろうけど部落出身者や犯罪者が多いということでした。そこで僕は後悔すること になったのです。無知でいた事への後悔です。世の中、僕の知らないことがまだまだ 多そうです。

 

連載第一話 歌舞伎町その1「死」
連載第二話 歌舞伎町 その2