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2004年国産作品レビュー

 更新が遅れましたが、本年もよろしくぅ! ボチボチ感想アップのペースを上げて行きたいと思っております。まずは国産レビューから。

題名:火の粉 著者:雫井脩介
出版:幻冬舎文庫 平成16年10月30日9版発行  
価格:本体762円+税 極私的評価:★★★★

 本年度『このミス』国産ベスト10入り確実(であろう)『犯人に告ぐ』であれよあれよと引き摺り込まれて、ドップリと雫井ワールドに浸りきった今日この頃、お寒くなりましたが皆様におかれましては如何お過ごしでありましょうや。と言ってもデビュー作パス&スルー主義者の小生(青臭くて練れていない文章が苦手なのだ(^_^;)、『栄光一途』は予定通りスルーして『虚貌』『火の粉』と売れ筋の文庫本から攻め始めた中途参戦者ゆえ、ミステリ系テイスト・オブ・ハニーなキャラの膨らませ方を存分に味わい尽くす域には達していないのであります。それでも、雫井が描くところの日常のリアリティのさりげなさの中の迫真性が、血肉を纏った登場人物とともに、喉元に突き付けられたナイフのようにぐいぐいと肉に食い込む痛みとなって読者を襲う疑似体験と化すのだなあ。この人は化けたと思うのだ>『犯人に告ぐ』で一度目。二度目のメタモルフォーゼも近いんじゃないかと個人的には思っておるのだが…さて。

 時折茶番にも思える裁判をコントロールすべき現行司法制度とここ数十年来の実社会異常心理犯罪者事情との乖離が一部(どころかかなりかも)問題視されておりますが、本作品において司法界では頭でっかち判例死守の裁判官が旧態依然で鎮座する法廷の時代錯誤ぶりにに作家側からアプローチ=問題提起したのだと見てもいいのではないか。新聞では紹介されない矛盾点&不条理にメスを入れたのです、ざっくりと。疑わしきは罰せず。裁判官はそのリスクも負え、と。刑事訴訟法の機能不全ぶりを噛み砕いて小説世界に還元した作家の企ては成功したのか。徐々に壊れてゆく一般家庭の怖さが十二分に活写され、司法上無罪になった男の真の姿が玉葱の皮を剥く様に明らかになる過程が戦慄とともに半ば過ぎから一気にホラー要素も加わって加速度的にカタストロフへ一直線。おお怖っ。五年後までにスタートすることが決まった裁判員制度のこともあって、今後この分野の法律関係ミステリが雨後の筍のようにホイホイ産み出されることは、間違いないっ!(ホントか、それ)。

 近々TVドラマ化されることが決まったそうですが、火曜サスペンス劇場あたりにピッタリの題材だったりして(^_^;)。冤罪問題から介護、公園デビュー等々我々市井の人々に身近な題材を掬い上げて人間ドラマを組み立てる雫井脩介のリーダビリティはもっと売れてる作家のステイタスを確実に脅かすであろう出来なのです。2005年は雫井にとって飛躍の年となるか、否か。次回作に全てが懸かってるよねえ、やっぱし。期待してます。(2004年11月読了)

題名:陽気なギャングが地球を回す 著者:伊坂幸太郎
出版:祥伝社ノン・ノベル 平成15年12月30日第7刷発行  
価格:本体838円+税 極私的評価:★★★1/2

 都会派ギャングってこんなにクール? 生活感が希薄だなんて今更死語に近い的外れな指摘なんだろうなあと熱き血潮の地方出身ギラギラ迸りまくりギャングの方がしっくり来る読み手には、物足りないんだよ〜と、読んだ後も読後感が希薄でもある。キャラは練り上げられているのだけれど、作者のクールな筆致が、もしくは生来の淡泊さがキャラにも反映されているようでもあり軽妙洒脱が良いのか悪いのか。今時の若手の読者にはこういう風な作品がウケるのだろうなあとオジさんは長嘆息(^_^;)。やれやれ。この人、もともとライトな文体ゆえ、重厚に書こうとして始めてややシリアス程度に収まりが良くなるのではないか。ま、こういう作品にシリアスさは必要ないけれど、締めるところは締めておかないと緩いばっかりの勘違いコメディになっちゃう危険性をはらんでおりますので、悪ノリは厳禁なのですが、ドライブ感に欠けるのがこの人の弱みかと。育ちの良さがピカレスク小説をお上品に回すってか(^_^;)。

 天才スリ&演説の達人やら嘘を見抜く名人やら一芸に秀た登場人物のバックグラウンドの書き込みがやや薄め。体内時計持ってる女ドライバーなんてここまで訳分からんキャラ立てるのはそうそういないぞ(^_^;)。ノベルス仕立てだからと言ってしまえばそれまでだけれど、そこら辺が惜しい。彼女の元旦那の出来の悪さがイマイチなのが足を引っ張るのだなあ。立ってないキャラとの落差。でも面白い。読み手を選ばない素直な透明感が読後感を爽やかにしてくれる良さ。暗黒ドップリな方々にはかなり物足りなくてこってり濃厚豚骨スープが恋しくなるでしょうが、このライトさがミステリ系もしくは読書系に未体験患者を引きずり込むきっかけにして頂ければ、それはそれであんたは偉いっ!とミステリ本読みの会住人としては、拍手を送りたいと思うのだ。

 でもね、和製ウェストレイクとか言われると、う〜むと考え込んでしまうよなあ。ギャグの濃度がまだまだウスターソース程度じゃ、ね(^_^;)。中濃ソース=ケンリック程度に暴走することを望みます。惜しいんだよなあ、もっと踏み込めば…あと一歩。そうすれば、ぐっと作品世界が広がるのに…と思いつつ、ブレイクした『重力ピエロ』で開花の予感を感じたので『アヒルと鴨のコインロッカー』でその後の伊坂幸太郎の出来上がり具合を試してみます。今日あたり届くはずなんだ。書けば書くほど、この人上手くなる(と思う)。『ラッシュライフ』は取り寄せで1〜2週間掛かるんだそうだ。新潮社もとっとと重版してもっと商売っ気出した方がよろしいかと思うぞ。そういえば、芥川賞取って綿矢りさが50万部、金原ひとみが35万部も売れてるらしい。ミステリ界にも若いギャル系(ぴちぴちを希望)の書き手がど〜んと現れないかねえ。オジさん期待してます(^_^;)。(2004年2月読了)

題名:熾火 著者:東直己
出版:角川春樹事務所 2004年6月28日第1刷  
価格:本体1800円+税 極私的評価:★★★1/2

 書店買い取りらしく、相変わらずなかなか手に入らない角川春樹事務所本(^_^;)。何とかゲットしたら読み出したら止まらない相変わらずのリーダビリティをきっちり証明してくれました。『便利屋』シリーズよりシリアス系正統派ハードボイルドの流れを汲む面白さでありますが、シリーズ読者以外には登場人物の把握がやや難あり(^_^;)なので敢えてお勧めはしません。が、しかし。姉川女史がああしてこうして…ああ、どうなる!どうなる?で最後まで引っ張る本作品のスリリングさが些細な瑕疵を吹き飛ばす仕上がり。東直己フリークは飯代二食分(1890円也)抜いても書店へ急げ!と言っておこう(^_^;)。

 アルコールに冒された肝細胞とともに灰色の脳細胞もまた、加齢とともに溶け出していくそうな。酔っ払いの八つ当たりのように、物語の肝心な部分部分に埋め込まれたバックグラウンドにある道警の腐敗描写が、どこまで本当で虚実ないまぜのフィクション部分とどの辺で境界線を引いているのか。う〜む、作家本人も止めようとも思わないのであろうが、ここまで道警を悪役にするほど、現地札幌他道民の皆様方におかれましては、道警=『悪』を認知されているのでありましょうや。樹郎社サイトの連載もかなりエキセントリックではありますが、冒頭突っ走る道警批判のオンパレードは、東本人が畝原に無理矢理言わせているように思えるのよね(^_^;)。ほぼ同時刊行された『駆けてきた少女』の俺もそうだったなあ。畝原=俺=東直己がさらに限りなく近づいてきた印象。世の中への怒りをストレートに表に出せちゃう作家の幼児性を少々垣間見せて頂いたって感じが、ちょっとなあ…(^_^;)。

 本作品の核心部分でもある『虐待の疵を残す少女』の謎もA・ヴァクスの『バーク』シリーズっぽいノリで、こういう戦慄の展開って、日本の土壌ではかなり無理があると思えるのだけれど、まあ、『俺』より社会派探偵たる畝原が暴き出す真相が、『駆けてきた少女』のある部分とシンクロしていてより立体的に浮かび上がってくる北海道社会の裏構造が底なしの闇を広げているようで、どうにもやりきれない道経済の緩やかな死を見送る挽歌のようでもある。 結末へ導く過程がどうにも行き当たりばったりで、ご都合主義的場面継ぎ部分が今の東直己なのかなと不満半分、本当に書きたかったであろう家族の絆的な部分が感動的でもあり、『俺』よりもストレートに感情を表した『畝原』に託した作者の明日への希望もまた善き哉。などと、つらつら想った東直己最新作読後感でありました。それにつけても、もっとちゃんと本屋に本を置いてくれよな>角川春樹事務所殿(-_-メ)。(2004年6月読了)

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