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北の国から2000リベンジ編
北の国から98食欲編
ちょっと気になるあの…
2003年度海外作品レビュー

 海外作品の方がメインになると思いますが、国産レビューの方もよろしく。更新スピードは加齢に反比例してゆったりペースで行きますがよろしくご了解下さいませ。

題名:シャッター・アイランド Shutter Island 著者:デニス・ルヘイン
出版:早川書房 2003年12月15日初版発行 訳者:加賀山卓朗
価格:本体1900円+税 極私的評価:★★★1/2

 閉ざされた島って意味? 雷鳴の中、一瞬のシャッター・チャンスで撮った一枚の写真。浮かび上がる不気味な精神病患者収容病棟。そこから脱出する幽閉された患者が主人公?って読む前から勝手にストーリー予想してましたが、良い意味で裏切られました(^_^;)。袋綴じ到達前にさんざん伏線ばらまいてくれたおかげで、一気に物語をひっくり返す算段をルヘインが企てていることは誰にでも分かる仕組みになってますが、ワシの推理ってば…保安官一人がノーマルで彼以外の登場人物がすべて入院患者と入れ替わって彼を迎え入れたシャッター・アイランドはサイコ野郎の巣窟だった…てなこと考えて、一気に袋綴じ破ったのよね〜(^_^;)。早川書房がここまで遊び心を出してくれたことは素直に評価致しましょう。そうそう『孤島、密室、暗号』出てきますねえ。言ってみれば本格物なんでしょうが、ま、あんまりジャンル分けは気にしないで、すれっからしのミステリマニアも一緒に推理する楽しみを思い出して欲しい。

 破ってみて分かる驚天動地の真相…ってホントに驚天動地ですかぁ。サイコ系ミステリにありがちなパターンであれれのれ。そこからもう一回ひっくり返してくれるのかと期待して読み続けていたら、池上冬樹の解説にぶち当たっちまったぜぃ(^_^;)。気が付きゃミスリードのオンパレードに「てやんでぇ、べらぼうめぇ」って後になってブーイングの嵐小説なわけだ。ま、それを面白がれるかどうか。読者の度量が試されるルヘインの悪戯もしくは茶目っ気な部分もあるんだろうなあ。描いてみたかったんでしょ>こういう小説。『ミスティック・リバー』を期待して読むと火傷しちゃうかもしれませんぜ、お嬢さん(^_^;)。

 男女の屈折した愛の物語を書き綴ってきたルヘインだけに、きっちりこんなパズラー小説にも最後に浮かび上がらせてくれましたが、読者はそこまで求めてはいないと思うよ(^_^;)。ここまで騙ったお話の中で『やるせない哀しみとそこはかとない孤独感』なんてやっぱし刺身のつまだと思うのよね〜。騙りで引っ張るより袋綴じの中だけの物語をしっかり語った方が、一層心に深く食い込む感動作品に仕上がるとは思うのだけど…。新機軸を狙ったルヘインの実験は成功したかどうか。それは読み終わった方だけが知っている。(2003年12月読了)

題名:死のように静かな冬 DEAD OF WINTER 著者:P・J・パリッシュ
出版:ハヤカワ文庫 2003年11月15日発行 訳者:長島水際
価格:本体1000円+税 極私的評価:★★★1/2

 最近の版権の高騰で、早川書房みたいに新人作家やら売れ筋から少々脱線している中堅どころの作家の作品を、丹念にピックアップしていることは決して悪いことではないけれど、売れ線作家のシリーズが頻繁に出版社替えて出されるのには『もういい加減にして』と思っているファンも多いことでしょう。翻訳者が変わっちゃうと作品の味わい自体が微妙に変化しちゃうのが一番に大きな問題。あまりに酷かった翻訳を改訳して別の出版社で出してくれるのなら何ら問題はないのだけれど、翻訳家同士、文体を微妙に変えてみたり『バ』を『ヴァ』と表記し直したり…些細な変化で結構読み辛くなるものなのですよ。読書もリズムですから。

 んで、拾い上げられた方のクチであろう本作品。シリーズ初邦訳作品である。流浪の警官ルイス・キンケイドが主人公。黒人と白人の混血という生い立ちからして波乱含み。しかも白人ばかりの警官社会にポツンと一人のカラード。存在自体が宙ぶらりんで不安定さの象徴としてこの作品に見事に陰影を刻み込んでくれた。黒い肌の警官と雪化粧した死のように静かな冬の世界。誰が『クロ』で誰が『シロ』か。警官殺しの真相を追って深層に肉薄するキンケイド。暴き出された真相は、まあ、ありがち(^_^;)ではありますが、設定の緊張感とは裏腹に、主人公キンケイドの優柔不断さや未熟さが些か興趣を削ぐ部分がなきにしもあらず。作者はシリーズとしてキンケイドの成長譜を描きたいというロングスパンでこの作品を構成しているのであれば、揺れ動く不安定さは致し方ないところか。ハードボイルドしてない部分に物足りなさを大いに感じる600頁を超える分厚さも、この作者のハードなハーレクインっぽい雰囲気で読ませる魅力が引っ張る。こなれた文章力が二人の女性ライターの合筆だってのに驚く。読んでて感じるある種の緩さも作者が女性だと聞いて納得しちゃった部分でもありますが…(^_^;)。

 ハッキリ言ってタイトルにやられました(^_^;)。琴線に触れるええ邦題やねん。タイトルと違って湖畔のリゾート地はさほど死のように静かではないけれど、市民たちは『警官殺し』には無関心。『市民殺し』じゃなければどうでもいい上流階級の別荘族と労働階級の市民同士の血の通い合わないミシガン州ルーンレイクの静かさが、ミシシッピの熱い血が半分は流れているであろうキンケイドとの対比が掘り起こす真相。チェスマニアで引用好きの署長が支配するルーンレイク警察。警官たち。伴う不安感=正義の者が果たして本当の正義を行使する者たりえているのかという足元がぐらつくような根元的な不安。犯人側の不安と絡み合って縺れ込む哀しき結末に訪れる死のように静かな冬。次の職場へ旅立つキンケイドの続きは果たしてハヤカワ文庫で読むことが出来るかは、この本の売れ行きに懸かってる。(2003年11月読了)

題名:コウノトリの道 LE VOL DES CIGOGNES 著者:ジャン=クリストフ・グランジェ
出版:創元推理文庫 2003年7月18日 初版 訳者:平岡 敦
価格:本体1000円+税 極私的評価:★★★★

 『クリムゾン・リバー』で日本のミステリ・シーンにも衝撃を与えた著者のデビュー作品がついに日の目を見ました。こういう作品を探し出してくる東京創元社の編集者の目利きには素直に評価致しましょう。ま、ホントのところ、『クリムゾン…』が映画化されたから「それっ」って出版権に飛びついたってところかも知れないけれど、途中はどうあれ、ちゃんと読者に提供されたのだから文句を言う筋合いもなく、ワシらは美味しい部分をただ黙々と味わうだけ(^O^)。ストーリーテリングの鬼才・グランジェの突出した才能の一端が、本作品でも十二分に味わえるゆえ、フランス・ミステリは生理的にダメって方(昔はワシもそうでした(^_^;)でも本書を手に取って欲しい。

 なんじゃ、これ。コウノトリ?自然保護小説?な〜んて感じで読み始めましたが、やっぱし凄いぞ、これ。一筋縄ではいかぬグランジェ節(^_^;)。すっとぼけた主人公の影の薄さが実はある伏線となり、撓めに撓めた後半戦弾け飛ぶ序破急の妙。悪夢のような地獄絵図が…うっひゃ〜(^_^;)。フランス人の描く小説やら映画って鋭利な刃物が肉に食い込んでくる感じで妙に生々しくてハマった時の快感って凄いもんね。好き嫌いは別にして。いやはや、コウノトリからここまでやるかの真相&深層。巧緻なまでの伏線の張り方から導き出されるびっくり箱はこの人の特徴とも言ってもいいか。次回作の『狼の帝国』もこのゾクゾク感は引き続き背中を這いずり回ってくれるらしいので、乞うご期待。

 『クリムゾン・リバー2』の映画化が進行中なのだそうであるが、こっちは原作は無くてリュック・ベッソンのオリジナル・シナリオらしいので、グランジェがそのうちノベライズしてくれるかもしれませんなあ。ジャン・レノのニエマンス警視はこれ以上ないといくらいのハマリ役だったので、公開されれば必ずや見ることになるでしょう。閑話休題。

 登場人物の誰もが皆ハードに生きてる様が、一歩前に出てくるキャラクター作り込み。グロック愛好家のサラなんてその典型。感心するほど血が濃い連中による呆れるほど血腥い愛憎劇を内包する物語を、処女作ゆえの生硬さで一直線に突き進むグランジェの力業には目も眩むほどである。同じフランス系。マンシェット系暗黒小説の血が少しばかり輸血されて出来上がってるような気がしなくもない。主人公のルイ・アンティオッシュにニエマンス警視ばりの破天荒なアクの強さがあったなら、と言うのは欲張りな感想でしょうか。(2003年8月読了)

題名:殺人者の陳列棚 上、下巻 THE CABINET OF CURIOSITIES 著者:ダグラス・プレストン&リンカーン・チャイルド
出版:二見文庫 2003年8月25日 初版発行 訳者:棚橋志行
価格:本体790円+税 極私的評価:★★★★

 アメリカ自然史博物館に勤務しているプレストンゆえに、舞台をニューヨーク市自然史博物館に置き換えたのね。登場人物も『レリック』あたりから引き続きペンダーガストFBI特別捜査官やらスミスバック記者ら馴染みの顔が、覚えていれば「おお」なんですが、個人的には見事に失念しておりまして他作品ではどんな役割だったかいなと書棚をひっくり返して旧作品を反芻しておりますが、印象度意外に薄かったなあ>ペンダーガスト捜査官(^_^;)。今回の主役は文句なしに彼なので、本作品では結構インパクトあるキャラとして我々読者の前に登場致します。華麗なるペンダーガスト一族の秘密が本作品の屋台骨ゆえ、奇想天外=センス・オブ・ワンダーをミステリ世界に注入してくれる希有の作家、プレストン&チャイルドが腕の冴えを存分に振るえるネタなんですよね、これ。

 十九世紀の猟奇殺人の犯行現場が現存していた! ってだけでも十二分にサスペンスフルなのに、時空を超えて甦った?殺人鬼が犯行を重ねる悪夢のごとき展開。あっと驚くどんでん返しもお約束(^_^;)。百年前と現代がクロスオーバーするNYの古さと新しさの匂いが鼻孔に漂ってくるようで…しっかも秘宝館! 舞台は縦横無尽に猟奇殺人鬼が暴れまくるのに最適設定。ツボを押さえたプロの手練れってヤツですよね。そういえば、ビルだらけの日本と違って、ちょっと掘り返すと遺構やら地下鉄廃駅やら色々出てくる土地柄がポイントになってるこの手の舞台設定の作品は散見しますよね。それぞれ結構面白いので興味のある方は探して読んでみて下され。

 本書は変種ミステリとして、難しいこと考えずに秋めいた夜長を過ごすには最適、かと。登場人物は何作か重複しておりますが、特に気にせず本作から読み始めても結構。そこから遡って『レリック』へ行くもよし。ま、本書で登場しない人物についても消息をチラッと書き込んでありますので、昔から読んでる読者ならニヤッとすること請け合い。プレストン&チャイルドの未訳出作品も結構イケそうなネタらしく、ちょっと期待。ま、売れ筋作家ゆえ(二見が横取りしたことからも分かりますわ)訳出もそう待たされないでしょうから、その点は心配無用か。それにつけても日本の秘宝館とはえらい違いだ>NY版秘宝館。個人的には熱海の某所ぐらいしか知らないのだけれど…(^_^;)。(2003年8月読了)

題名:反米同盟 上、下巻 MORTAL ALLIES 著者:ブライアン・ヘイグ
出版:新潮文庫 平成十五年六月一日発行 訳者:平賀秀明
価格:本体各705円+税 極私的評価:★★★★

 親の七光りなんて必要ない。この作家、誰より熟れて弾けて誠実そのものの作品をストレートに我々読者に届けるデリバリー意識の固まり。期待を裏切らないない第二作目。二作目がハズレでないってことは、そりゃあもう、売れ筋作家へ一直線だとワシは個人的には思ってますが、巷の評判はというと、これがまた、見事に沈静化しておるのだわ(^_^;)。今回は近未来設定ながら、韓国と北のお国の裏側を見事に掬い上げて料理し直す手腕と国際情勢観察眼はさすがと言っておきましょう。ま、読んでる途中でネタは割れちゃうんですがね(^_^;)。

 饒舌な主人公のどこが悪いっ! ショーン・ドラモンド。陸軍法務部法務官少佐。休暇中、不平タラタラでいきなり異国の地=韓国の糞溜めに放り込まれた絶体絶命破れかぶれの結界。呼び出したのは終生のライバルかぐや姫ことキャサリン・カールソン。一触即発の雰囲気横溢ながら、その実、密かに惹かれるものを感じるドラモンド(本人が分かってないから始末が悪いんだけど(^_^;)。キャラ立ちまくりの冒頭人物紹介編。しっかも、その中でゲイかゲイでないか。味方同士で対立してどうするのって突っ込みたくなるようなてんやわんや(^_^;)。いやはやドラモンドの未来や如何に! 後半戦の展開ってよ〜く考えると分かってくるはずなのに、気が付かずにダラダラ読んでて急に腑に落ちたッス(^_^;)。ホモ愛の煙幕に隠された裏側の真実をしっかり見極めよう。相変わらずこの人上手いです。そこから仄見える真相にドラモンドが肉薄する過程が冒険小説してるから、FADV関係者にはお勧め。ただし、口数だけは相変わらず減らないけど…(^_^;)。このキャラにウンザリして本書を投げ出したら、大いなる損失だと声を大にして叫びたい!最後まで読め!

 読めば読むほど、ドラモンドってば釈迦の手のひらで踊る孫悟空だわね(^_^;)。最後の最後で凄腕キャサリンのどんでん返し。おおっ、これは!ってな熱烈ディープキッスですらキャサリンの本心かどうかは分からず仕舞い。彼女の真の動機が明らかにされると腑に落ちるのだが、それでも結局彼女がゲイだったかどうかは読んでのお楽しみってことで、二人の関係の進展は次回作に持ち越しってことか。きっと、このキャラ、ヘイグのお気に入りキャラとなったゆえ、再度登場するのは確実と見ているのだが…さて。(2003年7月読了)

題名:甦る男 RESURRECTION MEN 著者:イアン・ランキン
出版:ハヤカワ・ミステリ 2003年4月15日発行 訳者:延原泰子
価格:本体1800円+税 極私的評価:★★★★

 若造には分かるまい。人生の黄昏期に差し掛かってるオジさんオバさんにこそお勧めしたい。人事異動の張り紙を人の背中越しに見る悲哀ってのを噛み締めてる中間管理職未満の窓際世代に共感の嵐を呼ぶ(^_^;)我らがヒーロー、ジョン・リーバスは相変わらずリーバスしてるし、シボーン・クラークがすっかり部長刑事らしく新人クンをしごきまくるのがよろしい。英国風オヤジギャルって雰囲気が妙にしっくり…なんせスコットランドのサッカーチームの立派なサポーターだもんね>シボーンってば。リーバスに薫陶され見事にミニ・リーバス化した刑事的手練の冴えは、今後、ランキンの頭の中のストーリーボードでさらに大きくなるのは確実。男女の関係ではなく確実に同士として機能してる二人の関係が実にデカしてるのよね〜(^_^;)。

 はみ出しオジさん刑事連中が施設に入れられて再教育されるなんてオモロ過ぎるじゃん。その裏に隠された混沌にリーバスを放り込むランキンの企み。その辺が仄見えてくる頃からヒートアップしてくるスコットランド犯罪ジグソーパズル。派手なアクションはないけれど、熾き火のようにじわじわと燃え上がり炙り出されるコアの部分が、英国風スルメ・ミステリって感じで(噛めば噛むほど味わい深い)、いつもながらランキン上手いよな〜と感心してしまう仕上がりのディープさ。英国では出版即ミステリ部門売り上げNO1だってのが素直に頷けてしまう。ヤンキーどもには分かって貰わなくてもOKさってスタンスが心地よい。

 早川書房もこの作家大事にしてるなあと思うのは、変に色気出してハードカバーで売り出そうとしたことが一度もない点かな。ポケミスがこの作家の日本での原点。早川の原点もポケミス。昔っからのミステリファンの原点もまたポケミス。1953年スタートで今年が50周年だそうですが、P・D・ジェイムスやらポーラ・ゴズリング、スティーブ・グリーンリーフらポケミス作家の中核を成すランキンには地味に売れ続けて欲しいものであるなあ。あくまで地味に=作風を変えることなしに、遠くスコットランドの地からリーバス・ストーリーを発信し続けて欲しいと願わずにはいられない。

 ところで、クエンティン・ジャーディーンの『スキナー』シリーズはその後、一体どうなっておるのか。同じモジュラー型警察ミステリの傑作シリーズを遺棄したまま放置プレーしてる創元推理文庫の編集者諸君。サボってないでなんとか4作目以降を出してくれたまえ。心ある読者は待ってるのだよ。(2003年6月読了)

題名:氷雪のサバイバル戦 NECESSARY EVIL 著者:ディヴィッド・ダン
出版:ハヤカワ文庫 2003年5月31日発行 訳者:佐和 誠
価格:本体940円+税 極私的評価:★★★1/2

 捻りがない。ないから悪いってことには直結しない。いいところはいい。素直に認めるべきである。トラッカーでもある獣医師インディアン青年と鼻っ柱の強いFBI女性捜査官にして白人女性のラブアフェアに、必然的にこの二人はこうなるだろうという予測の元、少数民族と白人っていう関係のあざとさに少々辟易しつつ、いつの間にやら他人行儀に感情移入しちゃったりして。山の中のサバイバル・ラブコメっちゅ〜感じもたまにはいいか(^_^;)。サラリーマン生活の権謀術数に明け暮れて疲れ果てたミステリファンには格好の贈り物になる可能性を私は否定いたしません。ま、肯定もしませんけど…。クライブ・カッスラー絶賛てとこから類推出来てしまうある種の限界ってのも確かにあります。作者本人も山の中に棲んでるだけあって、雪山でのサバイバル・アクションに関しては出色…って言うかそこが売りじゃん。節電が叫ばれるこの夏、汗ダラダラ流しながらクーラー替わりに読むってのは如何。

 瑕疵は確かにあります。ド田舎とはいえ、これだけド派手にドンパチやれば地元警察だってなんだかヤバそうだなってパトカー2〜3台、おっとこの雪山なら山岳警備隊みたいな連中がスノーモービルでパトロールぐらいするでしょ。しっかも傭兵弱すぎ。ストーキング・ベアがいい味出しまくり(^_^;)。ほとんど神格化しちゃってるんだもの。山の中の仙人だな、ありゃ。傭兵対仙人。読んでみなくちゃ訳分かんないでしょ(^_^;)。

 山岳冒険小説にスピリチュアルなインディアン風味の隠し味が加味されて不思議なムード横溢。完全にインディアン世界にしちゃうとエンタメ小説を超越しちゃうでしょうから(^_^;)、主人公のキアって白人とのハーフだからギリギリのところで踏みとどまってスピリチュアルなものに憧れる白人のための物質世界でのミステリに落ち着いたって寸法か。各章ごとのティロック族の格言が物語をそっち方面へ誘いそうな雰囲気で結構ポイント稼いでます。んで、ほんとにティロック族なるインディアンがいるのかはどうかは不明なんだけど、ね。(2003年6月読了)

題名:凶獣リヴァイアサン上、下巻 LEVIATHAN 著者:ジェイムズ・バイロン・ハギンズ
出版:創元SF文庫 2003年4月25日初版 訳者:中村融
価格:本体各800円+税 極私的評価:★★★1/2

 バイロン・ハギンズ節がたっぷり利いた洋もの版ゴジラ小説って感じか。結構宗教懸かった説教くさい部分が臆面もなく前面に出てくる作家ですので、そこんとこ押さえておいてヒロイックモンスター・パニック娯楽SF小説として純粋に楽しめればそれで良いのです。このご時世で、北欧の巨人がなんでドラゴンと戦わなきゃいけないんだぁ〜なんて考えてたら、頁を繰る手が止まっちゃうでしょ(^_^;)。しっかし、コモドドラゴンを遺伝子改造しただけで火を吐く大怪獣にしちゃいますか。この辺のトンデモ加減がゴジラなんだよな〜。昔は水爆の影響とか利用してましたが、今や遺伝子操作。時代は変わっても『善』に対する『悪』の物語的効能は一緒ってことか。

 怪獣版ターミネーター。何度倒されても生き返ってくる体長10.5bの口から火を吐く大怪獣。戦斧抱えた北欧の大巨人との一騎打ちだってぇ。戦車すら吹っ飛ばす怪獣が相手なんだぜぇ。そんなのどうやって倒すんだぁぁぁ(^_^;)。迷宮と化した地下研究所で繰り広げられる地獄絵巻がこれでもか攻撃でスケール倍増ど迫力!! 『殺戮者カイン』やら『極北のハンター』で冒険小説界の雄として日本で名乗りを上げたバイロン・ハギンズの本国でのブレイク作品。いわば彼の原点たる作品である。原点故にストレートに押しまくる暴走特急ぶりはいっそ痛快である。読まないヤツはリヴァイアサンに食われて死んじまえ!ってくらいお勧め(^_^;)。

 ここまで育て上げたバイロン・ハギンズ名義の作品群をあっさり放棄して、次回作品はなんと宗教的歴史小説なんだそうだ(^_^;)。逆説的に考えると、それを書きたいがために過去のSF小説群を書き上げたって解釈もあっていいかも。新人作家がいきなり宗教的歴史小説っていってもどこの出版社も取り上げてくれないでしょ、やっぱし。ところで、スタローン主演で映画化されるはずの『極北のハンター』は一体いつ公開されるのでしょうかねえ。洋ものゴジラがコケちゃったから、米国じゃ怪獣小説なんてなかなか映画化権売れないでしょうけど、この並みじゃない凶獣ぶりを映画館のワイドスクリーンで見てみたい気もしますなあ。(2003年5月読了)
題名:シティ・オブ・ボーンズ CITY OF BONES 著者:マイクル・コナリー
出版:早川書房 2002年12月31日 初版発行 訳者:古沢嘉通
価格:本体1900円+税 極私的評価:★★★1/2

 発掘された子供の骨。ボッシュが暴き出した天使の街の裏と表の素顔は、乾ききった骨の街。管理職として宙ぶらりんの地位にあるボッシュの抑圧された刑事としての情熱が解き放たれたとき、エレノア・ウィッシュもいない、キズミン・ライダーも別の分署行きで、孤高の刑事としての後ろ姿がさらに際立つスケッチとなって我々読者に提供されるのである。哀感漂う佳作である。新たな相棒に課せられた役割の非情さ。もしくはボッシュとの関係。驚きはあるけれど、ラストのボッシュの行動は必然である。シリーズは全12作ってことだから新生ボッシュが我々の前に現れるであろう。ボッシュを突き動かす行動律って何。刑事としての誇り? 本能? 職業的な惰性? 突き詰めて行けば、心の奥底に仕舞い込まれた傷なんだと思う。

 出版当時、原書で購入した本書もいつの間にやら訳者の古沢氏の精力的なお仕事に軽く追い抜かれ、な〜に、日本語訳読んでから原書でチェックだなんて畏れ多くも身の程知らず(^_^;)。書棚の奥に仕舞い込まれた原書を探す手間を惜しんで次の積ん読作品へひとっ飛び。こうしてちょっと手を付けただけの原書&ペーパーバックが山を成すって寸法だわね。

 ボッシュ・シリーズの転機。おっと、前の作品もその前の作品もやっぱし転機だったような気が…(^_^;)。絶えず転がり続ける転石苔生さず式の存在であり続けるボッシュって、マイクル・コナリーって作家にとって一本ピーンと筋の通った背骨みたいなシリーズ作品なのであろう。そうそう実生活での夫人の旧姓がマッケイレブっていうそうですが、これって『我が心臓の痛み』の主人公の名前と同姓なのね。んで、同書を調べてみたら扉に『ジェシー&マイラ・マッケイレブに』って出てましたので、夫人の両親なのであろうか。う〜む、今度コナリーのホームページで調べてみよう(^_^;)。(2003年3月読了)
題名:死への祈り HOPE TO DIE 著者:ローレンス・ブロック
出版:二見書房 2002年11月25日初版発行 訳者:田口俊樹
価格:本体2200円+税 極私的評価:★★★1/2

 言わずと知れたマット・スカダー・シリーズ最新刊。シリーズ読者しか読まないでしょうから未読の方には敢えてお勧め致しません。シリーズ物の宿命で、乗り遅れた方には最初からどうぞと言うほかないね。振り返ればアル中探偵が今や禁酒ウン十年選手の免許無し元探偵(^_^;)。分別盛りの六十代。スカダーがリアルタイムで老いて行くってことは前作でも触れられていましたが、最新作でこうも見せつけられてしまうと、ま、リアルタイムで付いて来ていた読者には、ある種ショックかも。老境の読者を道連れに同じく老境の主人公と作者が生を競い合う。ブロック本人は自然体で書き続けたいシリーズなんでしょうね。数年先には、スカダーの自然死って展開が読者には用意されているのかな(^_^;)。

 まったり前半戦。ノリが悪い? やっぱし登場人物が年寄りだからね(^_^;)。ま、TJやら『依頼人』が登場してやっとこ活気を帯びて来つつ、事件なのか事件じゃないのか(殺人事件ではあるのだけれど)物語はゆっくり転がり始める。張り巡らされた伏線がドミノ倒し的に昔のスカダーをゆっくりと確実に取り戻してくれるが、それでも老いの事実はそのままなのよね。TJとエレイン。安定期に入った人間関係も前妻の死やら二男のトラブルで確実に掻き回してくれるので、波風立たせるべく『起承転結』の『承』の部分はブロックが書かなければならなかった節目ってとこだな。犯人サイドは現在進行形でも年取ってないから、老境のスカダーとの対比がクッキリと浮かび上がってくるのは思わぬ副産物かも。静対動。次作以降もこの絡みで進展があれば大いに楽しみではあるぞ。

 そうそう、あとがきで訳者本人が一人称視点に三人称視点を織り込む新たな企みは成功してないと断言してますが、それほど気になる瑕疵でもなく、個人的には違和感なく読み込めたことを記しておきましょう。おまけに…TJの一日ってのをサイドストーリーで書いて貰っても結構面白い読み物になりそうで、ここは一つ、ブロックにおねだりしてみたいところでもありますねえ(^_^;)。(2003年3月読了)
題名:蛇神降臨記 DOMAIN 著者:スティーヴ・オルテン
出版:文春文庫 2003年2月10日 第1刷 訳者:野村芳夫
価格:本体952円+税 極私的評価:★★★1/2

 マヤ文明が残した古代暦は予言する…2012年12月21日、世界は滅亡する。それを阻止できる男はただひとり…お〜来てる来てる(^_^;)。こういうオーパーツものってのは結構ゾクゾク出来ちゃう体質なもんで、ピラミッド、ストーンヘンジ、ナスカの地上絵、チチェン・イツァやら写真入り世界遺跡の数々がリンクして物語の中核をなす構成に、何を隠そうワクワクして読んだ私であります。ハンコックの『神々の指紋』なんてのもしっかり新古書店で100円で上下巻購入済み(^_^;)。導入部の掴みはOKなんですが、終盤戦に『何や、これ』で目が点状態になっちゃう読者もいるでしょうなあ。SF系免疫の出来上がってる読者なら「お〜、どっからでもかかってらしゃい」的マインド横溢で許しちゃうようなトンデモ展開ゆえ、読者を選ぶとここでは敢えて言っておきましょうか。

 中盤過ぎまでは勢いで突っ走りますので、この分厚さも何のその。スケールの大きさに、今後どう収束して行くのだろうと逆に心配になっちゃう大風呂敷なのよね。なんせ作者はあの『MEG』を書いたスティーヴ・オルテンゆえこういう大法螺話は大得意であろうことは容易に想像できますな。考古学者だった父親の遺した備忘録の効果的な挿入で立体的に古代史の謎が浮き上がってきますが、そこにオルテンの暴走的とも言える新(珍)解釈が本作品のすべてなのよね〜(^_^;)。

 精神病院幽閉歴12年の主人公マイケルってインディ・ジョーンズみたいな冒険家でもありそこそこ見せ場もあるのですが、何たって凄いのは彼の受け継いでいた血の濃さでありますな(^_^;)。最後の落とし方も腰砕けで何だかなあってのもあって★★★1/2だけど、レイダースっぽく古代遺跡を辿ってゆく事実と奇想がクロスオーバーする面白さは無視するのは勿体ない。映像的には絶好の題材ゆえ映画化されたら『インデペンデンス・デイ』級の面白さになるはず。先行投資と思ってSF映画ファンは読んでおくと後々ためになったりするかも。映画化されなかったらごめんなさいだけど…(^_^;)。(2003年2月読了)

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