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2004年海外作品レビュー

 更新しないまま幾星霜(^_^;)。そろそろアリバイ証明ってことで何作品かのれびゅーをアップしておきませう。
題名:魔術師 イリュージョニスト The Vanished Man 著者:ジェフリー・ディーヴァー
出版:文藝春秋 2004年10月15日第1刷 訳者:池田真紀子
価格:本体2095円+税 極私的評価:★★★★

 ミステリ自体が、ミスディレクションで読者を欺くことを語り部たる作者の愉悦であることは論を待たないけれど、究極のエンタテイナー作家=ディーヴァーのサービス精神たるや唖然呆然…幾筋ものミスディレクションが、読み手の五感を刺激し続けて止まないミステリの迷宮へ誘うメインテイストなのである。主役であるはずのリンカーン・ライムですら脇役でしかない。どんでん返しなんて生やさしいモノではなく、彼もしくは彼女が追う側で追われる側でその実、全く別の人物だったり裏の裏の裏を読むに読めない驚天動地の展開に、読者はジェットコースターに乗った観客でしかない状態に長いこと晒されるのである(これが快感なのよね)。

 いやはや。ここまで頭脳の限りを尽くした作家魂に脱帽である。回を重ねるごとにブラッシュアップした作品に仕立て上げなくてはならない売れ線作家の限界を突き破った力業に、一種、肉食獣の獣の臭いすら嗅いでしまう雑食性日本人の諦めに似た境地とでも言いましょうか(^_^;)。これでもかこれでもかの先にあるサムシングがアメリカンなストロングテイストっちゅ〜やっちゃね。リーグ優勝決定戦で言う3連敗の後の強烈な粘り腰で一気に4連勝でヤンキースを打ち破ったレッドソックスって感じ。ま、こっちの舞台はニューヨークなんですけど、ね(いや〜、ボストン凄かったね〜)。

 むろん細部の味付けだって忘れちゃいない。脇役から主役へ。カーラの存在がサックスを超えた!? vs魔術師にはカウンター戦術でってなわけで、魔術師見習いのカーラが登場するのですが、彼女の成長物語もなかなか読ませるサイドストーリーになっていて、昇格試験でトンデモ状態に陥るサックスと並んでライムの手となり足となり頭となる。怪人二十面相vs小林少年ってとこでしょうか(^_^;)。犯罪的微細証拠鑑定団たるライム一座が初期の面白さに回帰した本作のナイスなところは、サイコな魔術師の造形の巧みさに尽きる。微細証拠の積み上げから徐々に見え出すイリュージョニストの本当の容貌とは…二十面相だってそのぐらいはやってたぞと思いきや…次から次へと暴き暴かれついに顔を出したタマネギの芯(^_^;)。料理の仕方はライム流にカーラのスパイスが少々。給仕はアメリアにお任せってね。

 世界の著名なイリュージョニストの一人にプリンセス・テンコーの名前が挙がってましたねえ。いまやディーヴァーに認知され金正日に北朝鮮にまで呼ばれる大御所なのですねえ(^_^;)。閑話休題。いじくりすぎてストーリーがやや破綻してしまう傾向があった最近の作品から一皮剥けたかというと、相変わらずいじくり回してひっくり返すプロ意識が、今回は仇とならず奏効したしたのは、一にも二にもイリュージョンの世界を選択した舞台設定なのでありますな。終盤戦、次回作のさわりをちゃっかり載せておりますので、ファンのお楽しみはこれからも続くのであります。(2004年10月読了)

題名:血に問えば A Question of Blood 著者:イアン・ランキン
出版:早川書房 2004年10月31日初版発行 訳者:延原泰子
価格:本体2000円+税 極私的評価:★★★1/2

 おいおい。ランキンがハードカバーかよ>早川書房。そりゃあ値段的には分厚いポケミスよりたった200円程度お高めってとこだけど、お馴染みさんを見捨てて新装開店したどっかのバーみたいだぜ。いやはやカバーのイラストがまたそぐわないったらありゃしない(^_^;)。オヤジ系読者層と完全に乖離した新路線を敷こうとした編集者を偏執者とでも呼んでやろうか。返せ戻せ俺らのポケミスってね。帯の惹句も奇を衒いすぎ。ファンなら誰でも知ってるランキン節を、渋い抽象画の表紙でちょっと分厚めのポケミスで茶店で濃いめの珈琲(リーバスならパブでラフロイグってか)啜りながら、少々年取ってがたが来つつあるオフビートなリーバスの破天荒さを存分に味わう楽しみを奪うのは、欲に眩んだ出版社の罪である。

 二人が微妙に接近!? 本作でも即かず離れずのシボーンとリーバスの関係が夫婦漫才でも見ているようでシリーズ読者なら微苦笑が溢れ出る最新作に仕上がっているけれど、一見さんならどう思う? 助走期間が短い分、リーバスを巡る人間模様を背景に馴染ませる努力をしなければいけない分、取っ付きの悪い主人公に感情移入出来ないまま地味なスコットランドの灰色の風景に染まった読書に冬を感じてしまう陰鬱さなのでしょうか。固定読者層にしか訴えないであろうランキン作品をお初の読者になんとか手に取って貰おうという算段も奏効するかどうか。本屋の書棚で埋没するポケミスか。もしかして一瞬でも平積みされて一見さんが手に取って見る可能性が残る単行本か。早川書房、究極の選択ってか(^_^;)。

 果たしてリーバスの両手の火傷ってのは本人の供述通りだったのか。ふむふむ。リストラ寸前…毎度お馴染み警察内部の暗闘ともいうべき、すべてに楯突くリーバスの面目躍如な部分が読ませどころであり、お約束のロック談義やらを織り交ぜて事件未満だったはずの事件を深層=真相まで掘り当てて白日の下に晒し出す大仕事だったわけですが…影の薄いリーバスが少々気懸かりでもあるなあ。ま、五十代後半の円熟味っていうか、その実円熟しきってないから衝突を繰り返してる大たわけ者リーバスの社会性に富んだエジンバラ犯罪模様を重層的に描き切った問題作=地味だけど滋味に溢れた作品と申し上げておきましょう。(2004年10月読了)

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