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北の国から98食欲編

 空身で1キロはあろうかというリュックをわざわざ好き好んで背負うというのはそれなりに利点があるからであって、両サイドの収容用ネットが飲兵衛には素晴らしくよく出来ていて、720_リットルの酒瓶ならすっぽり入ってしまうからなのだ。表向きはペットボトル用なのであるが、密かに両サイドに大吟醸瓶を突っ込んでふらふらと見渡す限りの平原を歩くのが夢であったりする中年に差し掛かったオジさん旅行者の、酔眼フラフラ晩秋真っ盛り北の美味味わいまっしぐらの四日間にわたるあれこれ雑記を、ここにお届けしようと思う。

第1日目 釧路湿原は秋から冬へ


 10月21日(水)

 平原ならぬ湿原を歩くため、一路釧路空港へ。そう、釧路湿原である。ただ湿原を歩くだけでなく付加価値付けるべく、空港ご近所の丹頂鶴が飼育されている自然公園に寄るべしと同行者の了解を得て、抜けるように青い北の大空に促され、当然のようにタクシー代をケチって徒歩で公園へ向かう二人であった。だって、空港前駐車場のオヤジが「ああ、それなら歩いていけるよ。下りだけど2キロぐらいよ」って安請け合いしてくれたために、んじゃ、晩の炉端焼き分ここで浮かそうかって旅行初日の元気ぶりぶり自分の健脚を信じて歩き出したのに、空港を出てすぐ後悔に変わるとはお釈迦様でも分かるまい。

 とにかく歩道がない。車のことしか行政は考えてないのである。しかも車は容赦なく制限速度を軽々無視して、トラックからダンプまで猛スピードで傍らをスレスレ通り過ぎて行く。丸太を積んだトラックがやたら多くて、こいつら幅寄せしとんのかい!って腹立たしいほどの歩行者無視運転である。おまけに蛇までニョロニョロ、そのうち熊でも出て来るんじゃないかとおっかなびっくりで国道とは名ばかりの九十九折りの下り坂をとトボトボと…。ああ、トレッキング・シューズ履いてきて良かったぁ。いや、待てよ。トレッキング・シューズ履いてなきゃ、こんなとこ歩こうなんて思わなかったかも(~_~;)。う〜む、モノは考えようであるが早くもマイナス思考である。これでは先が思いやられるかと思いきや、いやはやそこまで考え及ばず、その時点で疲れ切ってただもう鶴公園を目指すだけのウオーキングマシンと化していたのである。

 地図で見ればほんの数センチ。歩けばほんの数時間。ちょっと疲れたなと思ったら、ほんの数時間待ってバスを捕まえればいいじゃない。こんな簡単なことはない(~_~;)。東京とこっちでは時間の流れ方が違うのである。数時間経ってもこっちでは牛さんが草をはみながら数歩移動する程度である。東京じゃ山手線一周しちゃっても、こっちじゃ風景は微動だにしないのだ! まるで絵の中に迷い込んじゃった黒沢映画の『夢』のようではあるな。でも、それが現実。これが北海道。釧路からちょいと奥に入るとここまで体内時計に狂いが生じるのである。都会人には毒。もうちょっとで廃人になるとこだったぞ(~_~;)。

 丹頂鶴の禿げ上がった頭が実は赤みがかっていたなんて、こっちに来なきゃ分からぬまま人生終わっちゃったかもしれないのに、最近、抜け毛が気になる秋の寒空につれづれ思うのであった。ルーズソックスの茨城から来た女子高生どもの喧噪に紛れながら、台湾人旅行者の甲高い叫び声に辟易しつつも、孤高の丹頂鶴の高貴さに気持ちが洗われるようではあったぞ。のんきに上空を旋回する鳶との対比がサラリーマン社会の縮図を見ているようで身につまされる部分もあるのである。もっとワイルドに行こうよ>丹頂鶴の諸君! こう叫びたくなっちゃうのだ。大きなお世話だって言われそうだけど…(~_~;)。

 なんとか路線バスを捕まえて、呆れるほど長い距離を走って釧路駅前に到着。途中、大楽毛(おたのしけ)なんていう地名を聞いてもちっとも楽しくないほどバス旅にうんざりし、ほとんど護岸されてないナチュラルな釧路川に荒んだ気分をちょっぴり挽回しつつ、道東最大都市と言われる釧路駅前のスケールに言いようのない不安を感じるのであった。う〜む、地味だぞ>この街。駅前にチャペルがあろうとも和商市場にいかに活気があろうとも不良どもがいないのである。茶髪でピアスして腰骨ズルズル下げズボンの煙草ふかし高校生がいないのである。ご愛敬のルーズソックスの太足女高生は何人か見かけるのだけれど、ワルは見当たらないのだ。ひょっとしてワルどもは札幌あたりに家出して釧路じゃ絶滅種族と化してるんじゃないでしょうねえ(~_~;)。石田壱成タイプの兄ちゃんは結構いたけど、ね。ま、昼時に高校生のワルどもが町中を歩いてるわけないか。でも夜も寒くて見当たらなかったし…。本当に健全な街なのかもしれないぞ。

 和商市場入り口のT寿司は聞いていたほど流行ってはいなかった。食ってみて分かるネタの貧困さとオヤジの握り技術のいい加減さ。しゃりにテメエの指の握り痕をくっきり残しちゃいけませんぜ。ぼたんエビも貧弱だったし、しゃりが暖かいのもマイナス。釧路来てまでマグロの握りなんぞ食いたくねえぞってのがあるでしょ。もうちっとネタを吟味してくれってんだ! 東京であんな商売してたら誰も客なんて来ませんぜ。

 つーことで裏切りの昼食に半分腹立てながら、路線バスで釧路湿原展望台へ向かう。迷路のようにバスは釧路市内を縫って行く。レンタカー借りてもこの道絶対分からないだろうから、こっちのルートを採用して正解でした。凄い狭い道入っていくのよ、このバス。同乗のオバさんたちにちょっかい出すオヤジ。どうやら出張してきて暇が出来て湿原を散策しようと出てきたらしい。単なる話好きというよりも実は女好きってとこだね。その証拠に、帰りのバスもあまりに本数が少なくて当然のごとく皆同乗して帰ったのですが、そのオヤジ今度は、もっと若いOLらしき二人組に鞍替えしてせっせと話し掛けてます。年相応のオバさんで我慢してなさいよ。

 で、その湿原。あっけらか〜んと広がる大平原ってな感じなんだけど、湿り気がここからでは感じられず、う〜む。次のバスの時間もあって湿原散策コースは途中まででパスして戻ろうとしたら、ガサガサと草むらを揺らす物音が…。そう言えば入り口に『熊出没注意』なんて出てたのを思い出す。9月に遊歩道を歩いていたお散歩クマさんが目撃されたらしいのだ。ひえ〜、こんな日に出ないでよね。ガサガサ。ゴソゴソ。ポンって感じで飛び出してきたのが、リス君なのでありました。両のほっぺに一杯食べ物を頬張った縞リスだ。もう夢中になって餌を採ってるのですが、筆者の姿を見ても驚かないし逃げないのだ。枝から枝へ。逆立ちしながらパクパク。モグモグ。最後は飛ぶように尻尾立ててぴょんぴょんと木陰へ消えていきました。いや〜、北のリス君は神経図太いのでしょうか。人見知りをしないまさに自然児なのでした。

  和商市場のM商店で格安で仕入れたタラバガニの足は太くて身がみっしり詰まっていてはさみの部分はこれまたデカい。空港で散々チェックされながらも諦めずに持っていったアーミーナイフがこの時とばかり威力を存分に発揮してくれました。カニにはハサミ。これですね。バキバキ。ジョキジョキ。パカッ。ズルズル。ハグハグ。ムシャムシャ。ふーっとため息。まさに生きてる実感。このために人生ひーひー言いながら馬車馬のように働き詰めているわけだから、誰に遠慮することなく素手でむしゃぶりつくのである。手を使う料理はうまい! 気取ってナイフやらフォークなんてちゃんちゃら可笑しいぜってんだぁ! 日本人なら箸使え手を使え(手だけだと印度かな^^;)!うおお〜、カニ食ってナチュラルハイ状態(~_~;) それもまた良し。ここで一句。カニ食えば 野生に戻る かにみそちゅーちゅー(字余り)。

 夜の釧路はやはり寒い。幣舞橋はライトアップされていてキレイなのですが、人気がまばらで薄ら寒い光景ではあります。そりゃまあ、用もないのに幣舞橋をうろつく地元民もいる訳ないかな(~_~;)釧路と言えば炉端焼き。有名どころを回ってみたのですが、う〜む、いずれも店構えがちょっと入りづらい汚れっぷりなのですな、これが。着衣が油っぽく魚臭くなっちゃうのは確実で、同行者が「もっと小綺麗なところがいい」と筆者に再考を促したので、運河沿いのライトアップされた居酒屋っぽい店に突撃して、ほっけやらホタテやら焼き上げたモノを美味しく頂き釧路の夜は静かに更けていったのでした。夕方に仕入れたタラバガニが結構腹にたまっててそんなに食えませんでしたけど、お茶漬け代わりに最後の締めに頼んだイクラ丼が結構なお味でした。北の味はやっぱりこれっ!って言っても誰も文句言わないでしょ。ホテルでまたまたビールで締めて、がぼがぼになりつつ就寝。明日は朝イチで網走に移動するのだ。えっ、何しに行くかって? 当然カニ食いに行きます(^^)。

第2日 移動距離こそがその旅の濃さの証明になりうるか?

10月22日(木)

 釧路Pホテルの朝食に舌鼓を打ちつつ、今日一日のスケジュールを確認。午前中に網走に着くには九時過ぎの釧網本線に乗らなくてはならないのであります。一応、快速なのですが、駅に着いてみると見事な一両編成の単線ゴトゴト列車が私たちを出迎えてくれました。結構、乗る人も多くて座席はほぼ満杯。んで、驚いたことに、昨日の展望台に行くバスで一緒になったオバちゃんたちが同じ列車にまたまた同乗。乗り場も皆が並んでる改札ではなく裏口みたいなところから堂々の入場。さっさと座席を確保する手際の良さ。地元・釧路のオバちゃんグループじゃないかと同行者と考えたんだけど、釧路湿原駅で降りてまた別の展望台へと向かう姿に、湿原巡りが趣味のトレッキング同好会メンバーではないかという結論に達したのでした。じゃなきゃ、あんなに歩き回るかってえの!

 道東の列車は異常に暖房効きすぎ。半袖でもいられるほど暖かくする必要あるのでしょうか。フリースなんか着てたら数分で汗だくでっせ。だけど、水分補給しようにもトイレがこんな単線列車に付いてるのだろうかという心配が先に立って、飲もうにも飲めないジレンマ(~_~;)。前のオバちゃん連中がぐいぐいお茶飲んでるので、トイレの心配なさそうなんだけど、このオバちゃん、膀胱がかなりデカいのか全然トイレに向かわないのである。困ったもんだ。ま、網走到着30分前までは我慢しましょって、ヒーヒーハーハー喉乾かせてひたすら読書でその乾きを癒すのであった(~_~;)

 定刻通り昼前に網走到着。こっちの列車のダイヤは正確だなと感心する。駅舎を出た途端、オホーツクの荒海が旅情を刺激するのだな、これが。カニが手招きする7〜8年ぶりの網走ではある。毛ガニよりタラバではあるが、みそを食すなら毛ガニか。しっかし、『カニ本陣 友愛荘』で予約した昼定食はずわいである。ずわいといえば、これまた数年前に訪れた新潟・寺泊で、ずわい食べ放題の久保田の萬寿&越乃寒梅飲み放題という荒ワザ(~_~;)を繰り広げた饗宴を思い出す。ああ、この世の天国であった麗しき思い出。さて、今回の網走はどこまで極楽に近付けるか。その距離を測る旅でもある。

 予定では駅前からバスに乗って行くはずでした。が、同行者にいきなり却下を申し渡す。前回、『友愛荘』から早朝散歩で駅まで歩いた記憶が残ってるので、今回もひたすら歩き回る方針を身を持って示したのである。カニ道を極めるにはひたすら精進あるのみ!
 「こっちが刑務所だから、当然こっち」
 「歩道が付いてるから、釧路空港と比べると極楽だね」
 気分はすっかり歩きモードである。見慣れた景色であるはずが、実はそうではない。そりゃそうだ、7,8年もすれば町並みはガラッと変わるもんでしょ。こんな店無かったよ〜と言い合いつつ、合同庁舎の建物を発見してホッと一息。これは前にもありました。ここだけは変わってないぞ。さらに歩けば、『カニ本陣 友愛荘こちら』の看板を発見。うん、こっちでいいのね。何となくうれしい。日頃から「方向音痴」と馬鹿にされ続けている方向感覚がこの日に限って極めて正確に働いたわけである。ただね、友愛荘までかなりな上り坂なのでありまして、
 「まだ〜?」
 「ま〜だだよ」
 って、上ばかり見続けてさらに2,3キロばかり。イタチだかミンクだかの轢死体を横目に見ながらさらに坂のてっぺんを目指す二人であった。この辺の森に棲んでるんですね。ちょっと可哀想でもありますが、これも自然界の厳しさ(って自動車に轢かれたんですけど(~_~;)なのだ。ほとんど山の中腹にそびえ立つ白亜の建物。やっとこ到着。あれれ。向こうから犬がやって来るではありませんか。おお、ウェルカムドッグ!? 「いらっしゃいませ」って言ってるみたいな素振りがいかにもそれっぽくて感心しちゃったのですが、その後、その犬は姿を見かけなくなってしまったのは、単なる野良犬で愛想良くして餌でも貰おうと我々に寄ってきたのか、とちょっっぴりガッカリではあったぞ。
 「前に来たときもこんなんだったっけ」
 「いや、前回は夜のコースだからお値段違います。3500円ならこんなもんかいな」
 釧路であんだけ立派なタラバ食っちゃうとどうしてもズワイは貧弱に感じちゃうのよね。カニの炊き込みご飯と味噌汁はさすがにいい味出してましたけど…。今回の旅のハイライトと勝手に思い込んでいた期待感が一気にしぼんだ二日目の昼ではあります。友愛荘はやっぱ泊まって夜のコースを味わわなくちゃ、どうしても中途半端になるのはやむを得ない。

 帰りの列車の時刻を気に掛けつつ、同行人のたっての希望により『監獄博物館』へ天都山経由テクで食後の運動としゃれ込む。タクシー呼びゃ早いんだろうけど、軍資金にも底があるのだから二日目にして使い込む訳にも行くまい。だから当然の歩き。だからこそのトレッキングシューズなのである。行けども坂道が数キロ。やがてそれらしき建造物。物見櫓は当時のモノをそのまま移築したものなのでしょう。塀やら壁やら門がそのままの形で保存されているのであります。昔はこれが網走番外地のトレードマークだった訳ですが、今や博物館の客寄せ。時代は移り変わる。

 団体客の隙間を縫うようにして見学するが、連中のガイドさんの話を近くで聞いてる方がウロウロ見て回るよりためになると小判鮫見学法で要所をチェック。昔読んだ吉村昭の『破獄』を思い出す。各所に登場する蝋人形がナイスでキッチュであるぞ。天都山のオホーツク流氷館よりよっぽど資料価値のある見学対象ではある。ここまで見たら次は本物の網走刑務所だな。いざ行かん。網走の気候は変わりやすい。とにかく寒い。日が落ちかけたら途端にこれだもの。歩くと骨身にしみる寒さを体感出来るのが、北海道に来てるんだよという実感を思い出させてくれる。だけど、鼻水ズビズビの巻。こんなんだったら夜は鍋だよな〜(願望だけっす(~_~;)。

 前回来たときは早朝の出所シーンに出くわしたのですが、今回は夕方近くの正門前ですから人影もまばら。刑務官が近くの売店で雑貨品買って門をくぐるシーンを目撃しましたが、そんなもの見てもだからどうだって言うので終わっちゃうのであります。いまやライトな刑務所に様変わりしてしまった当地では、今時脱獄しようなんてガッツのある死刑囚はおりません。橋のたもとの酒店で日本酒720_リットル瓶(男山純米大辛口。なんと日本酒度10)を散々迷った末購入。オバちゃんにはオホーツクの氷で作ったスペシャル酒を勧められるのだが、よ〜く話を聞いてみると製造してるのは茨城なのだそうで、そんなんじゃこっちで買う意味無いじゃんと、明日訪れる予定の北海男山に敬意を表すことにする。男山って新潟にも根知男山って銘柄があって、他にも数件この名称が採用されているようですが、前回の北海道旅行では千歳鶴にこだわって飲みましたので、今回は同じ旭川の国士無双より蔵元に資料館があるこっちを選択した次第。ただで試飲出来るコーナーに惹かれたことは言うまでもない(~_~;)

 寒さと疲労と迫る夕闇が背中を押してくれましたので、ここからあっさり乗り合いバスを使うことに意見が一致。もう駅までは数キロなのですが、歩く気力が失せた二人組です。フリースを透して刺すような寒風が体温を奪い、鍋への欲求がさらに高まる冬の網走。でも実際は列車の中で駅弁なのだけれど(~_~;)。待つこと数分。やあ来ましたね。2時間に一本みたいな釧路と違ってあなうれしや。しかもバスはガラガラ。貸し切りみたいやんけ。
 「このバス、ターミナル行きだよね?」
 「ああ、行くよ」
 この言葉に安心して景色に見とれて駅まで一気。えっ、通り過ぎちゃったよ。あれって駅じゃない? あうあう、ちょっと待って。網走駅とバスのターミナルは離ればなれのそっぽ向き合ってる関係な訳? これじゃ聖子と神田正輝みたいじゃねえの。慌てて押しましたよ、ピンポンピンポン。
 運転手曰く「ここまだターミナルじゃないよ。お宅らターミナルまで行くんでしょ」
 「ええ、まあ。ごにょごにょ」
 ま、いいか。まだ時間も余ってるし、網走市内を散策するにはいいチャンスとプラス思考で失策を挽回する。これだからフリーの旅は面白い。行き当たりばったりこそが醍醐味などと強がったりする二人であった。

 網走の市街地は駅から結構離れたところにあるんですねえ。一応、ここが網走銀座なんだろうなという場所を冷やかす。しっかし、お土産物屋の商品のネーミング何とかならならないものかねえ。全部刑務所がらみのそのものズバリ銘菓がそこここに。五寸クギの寅吉饅頭なんてそのままやないかい! こないなもん誰がうれしがって買うんでしょうか? 逆にキッチュでよろしいわぁなんてギャグセンスの濃いお客さんが好んで買う? そこまで見越してあのネーミング? だとしたら、鋭い網走のお土産物屋さんではある(~_~;)

 特急オホーツクはそれほど混雑もせず、駅で買ったかにめしとホタテ弁当に舌鼓を打ちつつ、サッポロクラシックと男山で喉を潤す。極楽気分。ただ、夕方のゴールデンタイムをゴトゴト揺れる列車の中で過ごすこと以外は…。とにかく、この旅のハイライトは移動する列車の中にあると言っても過言ではあるまい。普通なら温泉入ってうまい物食って晩酌してのはずなのにぃ。計画立案は我が同行人ではあるが、私もふんふんとうわの空で同意したのだから同罪ではある(~_~;)よって多くは語るまい。列車はひたすら旭川を目指す。心地よい揺れとボトル半分の酔いがいつしか旅人を夢の中へと連れて行ってくれる。 

 旭川着は夜の九時過ぎ。おお都会ではないですかぁ。この寒空の下、キャバクラ系のお姉さんたちがミニスカートで客引きしてるし、サラリーマンはスーツ姿で酔っぱらいながら飲屋街をうろつく様は、すすきのそのままですね。繁華街を貫くメインストリートをそのままこの日の宿へ。古〜いホテルであります。これって外れかも(~_~;) ここまでの移動距離は釧路〜網走(釧網本線169.1キロ)、網走〜旭川(石北本線=特急オホーツク237.7キロ)。計406.8キロは本州で換算すると東京から四日市までの距離に相当します。う〜む、一日でこれだけ移動したのか。尻を落ち着ける暇もないとはこのことですね(~_~;)。ホテルのクソ高い缶ビールくわっと飲んで水の出の悪すぎるトイレにブツブツ言いながら即寝る。明日、旭川探検隊は市街へ繰り出し、旭川のラーメンを味わい尽くすことになる。

第3日 旭川のラーメンにも当たり外れはある。だけどねえ…。

10月23日(金)

 旭川の朝は寒かった。吐く息が白いのはまさしく冬。でもこっちの人たちは結構軽装で、フリースで完全武装しているわれわれ二人はまるっきり異邦人でありますな。同行人のリクエストでもある『雪の美術館』のオープン時間までまだ間があるので、それではと地図を片手に開店前の有名ラーメン店を探す。予行演習は念入りにちゅーことやね。チェック入れたのは『B光軒』と『T金』と『H屋』。ついでに横浜ラーメン博物館に期間限定で入っていた『A葉』も駅まで戻る途中で発見。さてさてどれだけの店を訪れることが出来るのでありましょうや。私にとっては今回の旅のハイライトでありまして、当然の如く力が入るのだ。同行人は迷惑そうな顔だけど、これでいいのです!

 親切な個人タクシーの運転手さんに当たったのも天のお導き。最初は歩こうかなどと話していたのですが、地図で見ればとんでもない。聞いてみれば『優佳良織工芸館』と『国際染物…』と『雪の…』は三館セットのお徳用博物館であったことが判明。こんなこと、こっちに来なくちゃ分からないよね。予定ではその後、神居古たんもコースにセッティングされていたのですが、思いのほか三館セットで時間を取られ今回は断念。運転手さんが気を利かせてくれて特別サービス料金で入場できたせいか、同行人は『優佳良織』をえらく気に入ったようで、お土産は買うわ、「ここはいいわよ〜」と周囲の人間に勧めまわるわで、旅の思い出ベストテンでも上位にランクインさせるほど惚れ込んだようです。えっ、私ですか? ま、それなりに。こういう体験もなかなかよろしいんじゃないでしょうか。雪の結晶もキラキラきれいでしたし、高そうなペルシャじゅうたんもたとえ買えなくても思う存分見て回れましたので、十二分に満足であると言っておきませう。

 ふたたびタクって『三浦綾子記念文学館』へと足を伸ばす。同行人が彼女の二十年来のファンということもあって、ここに行かなきゃひっぱたかれるんじゃないかと思われるほど入れ込んでましたので、休まずオープンしていてくれてホッと一息なのである。今年5月頃オープンしたばかりなのですが、三浦綾子女史の作家としての歴史があますところなく資料として残されておりますので、ファンならずとも旭川に寄った際は覗いてみてはいかがでしょう。インターネットでもHP開設してまして、検索エンジンで即ヒットするはずですので、お暇ならどうぞ。というわけで、全然熱心な読者ではない私がそろそろ見学に飽きて人間観察に矛先を変えたとき、中年の女性が涙ぐみながら病床の三浦綾子ビデオを見ているので吃驚しちゃったのであります。そこまで入り込めるのは、敬虔なクリスチャンの読者に違いないと勝手に結論着けながら館外の外国樹種見本林へ。そのまま、満足そうにしている同行人をせっつきながらバスが通る国道へと急ぎます。そうです。お昼の時間。旭川のしょうゆラーメンが我らを呼んでいるのです。

 う〜む、予定ではもう少し早めに出てラーメン屋二軒ははしごしようと密かに案を練っていたのですが、昼過ぎちゃうとさすがに名店ともなると、座席が満杯でずらりと並ぶ羽目になるのであります。『B光軒』こそはガイドブックの先頭を切って旭川の有名ラーメンであると書かれていたことを盲信して、並んだ人の数だけ味の数値もアップするに違いないと思い込んでしまう我々であった。ああ、単細胞二人組(~_~;)。壁に貼り付けられた色紙の数々。椎名誠やら中島誠之助やら知った名前が「いい仕事してますね」なんて書かれているのを見ちゃうと期待しないわけにはいかないでしょう、やっぱし。てきぱき兄チャンが客さばきでも冴えを見せると(単に声が大きいだけという噂有り)、そりゃあもう、客が毎日わんさか押し寄せてこれだけ客扱いも上達しましたよって、我々に教えてくれているようでますます期待はヒートアップ(~_~;)。

 「そこのお二人さん。奥の席行って。はい、相席よろしくぅ〜」つーわけで、私はしょうゆ。同行人はみそ。次を考えて大盛りは避けて普通のラーメンでここは勝負。そうこうしてる間にも色紙チェックで意外なタレントの名前を発見して、「おお、そうかそうか。そんなにここのラーメンが気に入ったのか」と食べる前から悦に入る二人。向かいに座った親子連れの素性なんか想像しちゃう余裕ぶっこき状態。まあ、多分、東京へ出掛けていた母親と旭川の駅で待ち合わせをしていた高校生の息子が、「ちょっとお腹空いたね。そこで食べていこうか」なんて言いだして、今ここにいるに違いないと読んだのは我が同行人である(~_~;)。

 「お待たせしましたぁ。はい、しょうゆとみそラーメン」どんと目の前に置かれた丼には黄色く縮れた麺と薄濁りのしょうゆのスープがまったりと絡み合い、絶妙のハーモニーを奏でているのだ。さあて、お味の方は…いかが相成りましょうか。レンゲに香る魚系の出汁。こいつがしょうゆに合うんだよなあ!麺にたっぷりスープを絡ませてズズズーっと喉の奥で味わうようにスルスルと麺は胃の中に収まっていく。

 麺は黄色く縮れていて北海道の麺である。ふむふむ。これが旭川のしょうゆか。チャーシューもそこそこの大きさでスープは感心するほどのコクはないけれど、東京にはないワイルドさがほの見える。ところがである…。むむむのむ、メンマに味がないぞ。これでいいの?>B光軒 同行人の方をチラッと見やる。どうやら同じことを考えているらしい。無味無臭の繊維だけのメンマと言い切ってしまおう。こんなのが旭川の住民に受けているわけ? そう考えるとしょうゆだって普通すぎるのではないか。チャーシューもこれと言って特徴はないし、喜多方『B内』の肉そばのボリュームにはとても太刀打ち出来る出来ではないぞ。んな訳で次から次と文句が浮かんでくるのは、期待度大きすぎたからなのは分かっちゃいるけど止められないのだな、これが。仮にもラーメンで売ってる町がこれでは沽券に拘わるであろう。そこを問題にしてるのだ。ラーメン道を究める男たちが鎬を削る東京環7の店を知れ!と言いたいね。色紙を書いた馬鹿モノどもに物申すだよな〜。はっきり言います。B光軒のラーメンは普通のラーメンです。わざわざ旭川に来てまで食いに行く必要はありません。他の店を探しましょう(~_~;)

 腹ごなしの旭川のデパート巡り。食品街にも特に用のない我々の足が向かう場所と言えば、書店以外にないでしょう。知らない町での書店巡りほど、ローカル色の出て面白いところはない。旅先では記念に何か文庫本(軽いから荷物にならない)を買って持って帰るのだけれど、今回は読む本東京から持って来たしこれ以上荷物は持ちたくないバックパック旅行ゆえ新刊に手を出すのは控えました。ハードカバーなどもってのほか。こちらに来て思うのは、旭川の人たちは地元出身の三浦綾子をとても大切にしていることですね。どの書店に行っても彼女のコーナーが目立つところにちゃんと設置してあるところですね。こういうローカル色なら大歓迎なのだ。しかも早川ポケミスがずらりと目立つところに並べられていたりすると、東京の紀伊国屋でもここまで理解はないぞって感心しちゃうのだ。

 さてお次は、我がリクエストにより旭川いや北海道を代表する酒造メーカー『北海男山』の蔵元へ。左党にはここは外せないでしょ、やっぱり。こういうローカルな旅に欠かせないのが、市内を走るバスの時刻表確認なのであります。なんせ1時間に一本なんてのはざらで、へたすりゃ2時間待ちの世界が旅人の自由を束縛するのですよ。これが困る。本数の少なさに帰りに寄る予定だった旭川ラーメン村は断念したのだから、麺食い党には断腸の思いであったことが察せられるでしょ。

 『男山資料館』で男山の歴史を知る。元は灘の酒造メーカーだったそうなのだ。しかも、あの赤穂浪士が本懐を遂げた後に祝杯を挙げたのが、何を隠そう『男山』だそうで、江戸時代から綿々と続く酒蔵が、代を替えて灘から旭川へ経営者が映り替わり現在へ至るそうです。知らなかったぞ、元は灘の酒だったなんて。あの大石内蔵助も飲んだかもしれない復刻酒も美味だし、今回、ここでしか買えない『大吟醸 木綿屋七つ梅』も、しっかり保冷材入りで買い込んで次の目的地・帯広まで持って歩きましたよ。玄関前の不老長寿の湧き水とやらも試飲して、またまたバスで旭川市街を遊覧しつつ駅前着。これでそのまま帯広へ行けると思ってたら大甘ちゃんだよ〜ん。
 「まだ、お腹空いてない」
 「それでも行くの!」
 嫌がる同行者を引きずるようにして旭川ラーメンの老舗『H屋』へいざ行かん。今度こその思い入れも強く当然足取りも力強く、クセの強さで賛否が分かれるというその味を味わい尽くすべく、一条二条三条(番地名)とガシガシ歩いて目的地へ。

 以外と分かりづらい場所に『H屋』はある。時間はもうすぐ2時過ぎで昼休みの客はいなくなって、オバちゃん連中も暇を持て余して煙草なんぞを吸ってるのには閉口したけれど、ここも失敗かぁと思う間もなくしょうゆラーメンを注文。旭川でみそは考慮の外である。すぐ後に来た若いのがラーメン・ガイドブックを見ながら同じしょうゆを注文。やっぱしこの店もしょうゆだよね〜と同行者と方向性の正しさを再確認。これでまずかったら我々には旭川のしょうゆは合わないと結論付けて、さっさと次の目的地に向かうところであった。ところが、である。

 見た目シンプルなラーメンがほの香る。この出汁はなんだ? スープが香ばしい。これが鰺の干物で出汁を取ったという旭川のしょうゆスープなのか。焦がしたラードの風味がとてつもなく食欲をそそる。麺は太めで黄色く縮れ具はシンプル。都会の洗練されたラーメンとはひと味もふた味も違うワイルドさにノックアウトされました。ここに旭川ラーメンの神髄があるのかぁ。定休日の『T金』や恵比寿の支店でも有名な『S頭火』にも行けませんでしたが、札幌とはまた違ったネイティブな北の味に納得の午後でありました。この濃さが北海道なのだなぁ。3年前、札幌郊外で味わったみその『J連』も濃いみそだったことを思い出す。

 帯広に移動するにはまだ2時間近く余裕があるのだが、観光に出掛けるには中途半端な時間。さて、どうする? 早めに行って、乗り換え駅でもある富良野で降りて晩飯にするってのはどう? それ採用。んじゃ、即行きましょ。てな訳で、富良野線でとりあえず富良野に出て、根室本線で帯広行きの快速に乗るまでの空き時間に駅前を物色する。これで決まり。『北の国から』の舞台にもなって観光客もわんさか押し寄せて駅前もいろんな店ができて賑わってるに違いないと踏んでの予定繰り上げなのでありますが、これが大誤算で繰り上げた時間が学生の帰宅時間とバッチリ重なって、一両編成のガタガタ列車は超満員。北海道のこの辺でも通勤通学ラッシュってあったんですね。ただ、読み通り通学の中高生は一駅毎に櫛から抜け落ちた毛のように(例えが変か(^^;)ゴッソリ列車から消えていなくなり、3駅目ぐらいで席も空いて座れるようになったので、腰を落ち着けて用意してあったサッポロクラシックをグビリ。ビール確保はまず第一の確認事項で、これを失念すれば喉の渇きにもだえ苦しむ列車旅地獄編と化す訳で、荷物忘れてもビールだけは忘れないのです(~_~;)

 そんなこんなで、夕闇迫る富良野へ続く単線列車の旅は、すぐ隣に陣取ったガキンチョの電子ゲームピコピコ攻撃に晒されながらも、とりあえず順調に第3日目を消化して行く。快速とはいえ、東京者の我らには凄〜くノロノロ走ってるように感じちゃうのは致し方あるまい。だって本当に遅いんだもん。単線だから向かいの上り列車が遅れるとそこの駅で延々と待ってなきゃいけないのである!
 「え〜と中富良野って駅通過したよ。もうすぐじゃない?」
 「あと少しで着くから、駅前でレストラン見つけてそこ入っちゃおうよ」「おお、いいじゃん、それ」
 腹空かせた二人組は、和食だろうがイアタリアンだろうがフレンチだろうが見境なく席が空いていればどこでもOK気分で荷物の支度に入る。「次は富良野〜です」ワンマンバスみたいに運転士が切符の回収もする超ローカルな列車におさらばして、いざ『北の国から』の舞台に到着。ところが、である。ホームを降りて駅舎を出ると、駅前はすでに街の灯が消えかかった状態。午後6時前なのにである。アンビリーバボー。早くも夕食レストラン計画は破綻を来す予感がヒシヒシと…(~_~;)

 富良野駅に隣接する土産物屋も午後6時に閉まっちゃうのである。これには同行者と二人で絶句。何のために帯広行く前にわざわざ時間早めてこの町寄ったと思ってんだぁ! ま、いっか。今さら次の列車待って帯広へ出ても店なんて空いてないだろうし…。気を取り直して、富良野駅前調査団はフラフラと微かな明かりを求めて商店街らしき人気の絶えた通りへと足を運ぶ。ああ、食堂が開いてるけど客らしき影は見当たらず、メニューもそこらの大衆食堂と同じで富良野に来てまで炒飯食べようとは思わないのだ。ロウで出来た見本は埃まみれでとてもじゃないが食欲わかないよ〜(~_~;) そう、富良野は車でちょっと郊外まで出なくてはそれらしい店がない。ガイドブック熟読していれば、もう少し洒落た店に遭遇できたかもしれないけれど、突発的富良野駅前調査団はただただ明るい方に引き寄せられてゆく夜の蛾みたいなもので、さらに富良野の闇の奥へ。

 闇の奥は商店街がありました。ホッと一息。でもねえ、ここも半分以上閉まってる。土産物屋と本屋と携帯電話ショップしか目立たないぞ。半径100bにレストランらしき影は見当たらず。あっちウロウロこっちウロウロ。何気に本屋なんか入っちゃったりなんかして(~_~;)。
 「お腹空いたね」
 「富良野じゃそれらしい駅弁なかったね」
 「帯広まで3時間掛かるんだから、それまで待てないってば」
 「だよねえ」
 んじゃ、とばかり入った店は全国でもお馴染みのセブンイレブン富良野駅前店でありました。品揃えは東京と全く同じ。う〜む、私は助六寿司で同行者はおにぎり。な〜んて貧相な晩餐でありましょう(~_~;) これで繋いで夜の帯広に期待するしか手はないのだ。たはは。

 さらば富良野よ。前回来たときは観光バスからワイン工場に寄っただけだから、本当の富良野は今回初めて知ったといっても過言ではない。過疎の町とはこういうことを言うのだなと地方都市の現状をチラリと垣間見ました。でもねえ、次に来るとしたら多分21世紀になっちゃうでしょうね。根室本線はまたしても一両編成の快速列車。やれやれ気分でガタゴト揺れながら文庫本を延々と3時間読む。おかげでハイペースで読書の捗ること。3日目の移動距離は旭川〜富良野(富良野線54.8キロ)、富良野〜帯広(根室本線快速125.5キロ)で合計180.3キロ。2日間合計では587.1キロ。ほぼ東京〜神戸間に相当します。新幹線ならあっという間なのに…。特急じゃないので乗車時間は昨日と同じぐらいですが、移動距離は思いの外少ない。蓄積疲労度は昨日の3割増しってとこでしょうか。

 またまた単線すれ違い待ちで20分近く待たされて、帯広着は予定より遅れて、
 「もうレストラン忘れて、ホテル行こうよ」
 「異議なし」
 ただっ広い駅前に「おお、十勝平野かぁ」と感慨深く、真っ暗な駅前道路を住宅地へ向かい、ひたすらHホテル目指して歩く。多分こっちという方向へグルグル回って小高い丘に出てしまい、そこを滑り降りるように駐車場から裏口経由ホテルフロントへ。何だか凄い遠回り。温泉温泉温泉だぁ! Hホテル最高! 缶ビールぐびっと飲み干し薄い壁も何のその。お疲れさま〜のバタンキューで第3日目は夢の中。

最終日 帯広でお茶して札幌でランチ。晩酌は新千歳空港で〜さらば北海道


 10月24日(土)

 朝から温泉三昧。ここ帯広のHホテルは今回の旅行で唯一の温泉付きホテルなのだ。ナトリウム泉のヌルヌルがやがてお肌ツルツルに変わるとき、空っぽの胃袋が何か食わしてくれ〜と催促の合図。すなわちお腹がグーグー泣いてるのさ。ここの朝食はバイキングではなく和定食なのだ。よって満腹度は前のホテルよりかなり下がり目。だけど腹八分目でいいのである。なんたって、十勝名物・十勝牛のステーキを昼に頂く予定なのだ! 分厚く切ったサーロインをジュジュッと焦げ目を付ける程度に鉄板の上で踊らす。こんがりガーリックの香ばしさが否が応でも食欲を誘う。粗挽きの黒胡椒がさらに肉の味を引き立て、サクッと肉に分け入るナイフ。ああ、想像しただけで涎が出ちゃうぞ(~_~;)

 午前九時チェックアウト。このホテルだったらリピーターはかなりの数いるでしょう。同行人も、ここがこうと知っていれば連泊したのにぃと口惜しがっていましたもの。陽光を浴びてホテルをぐるりと見回すと、あれれのれ。あれだけ遠回りしたのに、逆に回れば目と鼻の先。あ痛っ、暗くて見えなかったよ〜、あそこをこうしてああして歩けば良かったのにぃ! こういうのを後悔先に立たずという。

 帯広駅前はとにかく広々。広がる帯のように開放感のある晴れ渡る大空。帯広って地名はここから来てるのかな。雨男雨女の今回の旅行中降られたのは只の一度もなく、ありがたくない名称をこれで返上できるかなと二人とも悦に入る。さてさて同行人、第2のハイライトがここ帯広にある。3年前の札幌のリベンジ。『円山公園の屈辱』を今ここで晴らさんと、心に決めたリターンマッチ。R花亭帯広本店で喫茶して、前回注文してタッチの差で食べ損なったホットケーキを今度こそ心ゆくまで味わいたい。この話を何度同行人に聞かされたことか。旅行計画立案中からR花亭は中央にド〜ンとそびえる大目標だった訳である。
 3年前のR花亭円山公園店を思い出す。
 「ホットケーキお願いします」
 「すいません。さっきの方で終わっちゃったんですよ」
 「ガ〜ン」目の目真っ暗、同行人。R花亭行くならホットケーキよって、帯広出身者にレクチャーされてわざわざ市営地下鉄でここまで来てこれである。何で? 何で札幌までわざわざ食べに来たのに、私だけ食べられないの〜? ほとんど彼女のトラウマと化した心の傷(~_~;) だからこそ今回の帯広本店喫茶部のホットケーキである。午前中に来店すればまさか売り切ることもあるまい。もの凄い執念ではある。同行人にとって、たかがホットケーキ。されどホットケーキなのである。

 土産物の発送を喫茶部オープンまでにすべて済ませ、時間に余裕が出来たので、十勝牛のステーキハウスを街に出て探すことにする。ところが、である。どこにもステーキハウスはない。電話帳&地元タウン誌を見る限り、焼き肉屋なら結構あるのだがステーキハウスは帯広には存在しない。なぜならば、後で帯広出身者に聞いたところ、ステーキ食べたくなったら池田町まで車飛ばして行くのだそうで、帯広は豚よ豚!と後知恵を授かったのである。んなもん、もっと早く教えてよ〜。

 近くのアーケードで旭川ラーメンの名店『S頭火』の支店を発見。ここでもいいじゃんと方向転換。ステーキがダメならラーメンがあるさ。んじゃ、お昼ご飯の保険掛けたし、もうそろそろ『R花亭』に戻りましょ。販売店の二階部分が喫茶部で、メニューもかなり限定されているけれど、同行人は当然のごとく、
 「ホットケーキ下さい」ミルクティー付きで注文。私はデュエットというアイスクリーム系抹茶ソース添えお菓子を正体も知らずに注文。何でもいいのである。私ゃお菓子には拘りません。ファミレスじゃないのにコーヒーのお代わりサービスに感動し、最後に出された日本茶にまたまた感動。どうしてこここまでサービスよろしいの? お客さんを大事にするR花亭の姿勢に私は花マルを進呈したい。

 満足頂けましたでしょうか>トラウマ・ホットケーキ(~_~;)。見た目は普通のホットケーキなんですけど、味は素朴で昔ながらの粉を練り上げましたぁって感じ。どこか懐かしい味だ。子供の頃が甦る舌触り。でもねえ、私は帝国ホテルのホットケーキの方が好みではあるけど、ね。「美味しい」を連発する同行人の満足げな表情に、わざわざ帯広に寄った甲斐があったねとホッと一息。ここが外れだったら、最後に悲しい印象を持って北海道を後にすることになってしまう…。北の良心とも言うべきR花亭本店がある限り我々は再びこの地をを訪れるだろう(ちょっと持ち上げすぎ(~_~;)。お値段もリーズナブルなのよ。その後寄ったN崎屋帯広店にテナントで入っていたR花亭支店もショートケーキ類が150円程度で売ってるのだ。東京だと280〜350円見当ではないか。同行人は今度来たらこっちでショートケーキ買いまくりでホテルで食べまくりの甘味天国で昇天したいらしい(~_~;)。

 さて、お昼である。同行人はホットケーキでかなり満腹感を得たらしく「ステーキに拘らない」宣言。だけど同時に「豚丼はイヤ」宣言。私もコーヒーお代わりしてお茶飲んでお腹ガボガボだったので、とりあえずこの時間帯のランチはパスということに落ち着いた。残念ながら『S頭火』は恵比寿店でも食えるからと断念したのである。代替案として帯広で腹ごなしの散策後、札幌で札幌ラーメンを食すというまことに魅力的なプランが浮上して来ました。当初の予定では寄るつもりのなかった札幌に、運命に導かれるようにして再訪するのは偶然の神のいたずらか。ま、潜在意識の中には「札幌ラーメン!札幌ラーメン!黄色く縮れた極太麺!」という叫びが絶えず渦巻いてましたので、必然と言えば必然と言えなくもないのですが…(~_~;)。

 本当なら『植村直巳記念館』を回るアカデミックな行程を大幅に改定を余儀なくされ、時刻表で札幌行きの特急の時間をチェック。釧路で購入した道東周遊フリー切符を最大限に活用する旅となった訳ですが、たとえゴールデンタイムやお昼時に延々と列車に乗っていようとも後悔はしない。ただ前進あるのみ。そう思ってなきゃやってられませんぜ、旦那方。とほほ。土曜日の午後でもあるのに人混みはほとんどありません。街中は人口密度スカスカって感じ。帯広はとにかくスケールでかい。だけど人は少ない。いい街です。

 時刻表で確認した列車時間までまだ1時間ある。んじゃ、駅の向こう側を探検するべし。前記のN崎屋巨大駅前店へ足を伸ばす。とにかくデカい。町田のN崎屋の3倍はあるだろう。でも中にはいるとスカいのである。無駄に設置面積広々〜でお客さんも土曜の午後にしてはまばらと言ってもいいでしょう。駐車場がまたデカいのだ。外に出て見上げればそのスケールに唖然としてしまう。隣の物産センターも、ただもうデカい。こんな街に育った子供たちの将来は前途洋々だぁね。スケールでっかい大人に育って下さい。

 特急おおぞらは、さすがに1両編成ではありませんでしたぁ。指定席は押さえられませんでしたので自由席は満杯かの危惧も、乗ってみればエブリシングOK。車内販売のお姉さんから缶ビールを買い込んで早くも極楽モードに入る態勢であるぞ。7,8年前の北海道行で知ったサッポロクラシックこそ我が究極のビールであると腹が下るまで飲みまくった『ジス イズ 北海道』から幾星霜(大袈裟(~_~;)、今回の旅でさらに各メーカーからの北海道ブランドが増えたことに快哉を叫んだのは何を隠そう、この私です(~_~;)V。これまで北海道と言えばサッポロだったけど、今やキリンもアサヒもビアファクトリーが札幌にデ〜ンと並んで、北海道のビールも戦国時代を迎えているのだなぁ。ビール党でもある私には目出度い出来事ではある。北海道来たら朝から『んぐんぐ、ぷふぁー』の世界でしょ。ビール飲みは美味いビールを直感的に知る。だからして私がお姉さんに頼んだ銘柄はやっぱりXXXXビールでありました。この苦みがコクとなって東京にはない味わいに二重丸なのだな。う〜む、ビール道も奥が深い(~_~;)。

 倒産騒ぎのアルファトマムではある。あのタワーに泊まって心地よさを味わっている者にとって、今回の騒動は青天の霹靂である。冬は目の前がゲレンデ、夏は…え〜、夏は何が売りだっけ(~_~;)。単なる山の中の自然を味わうだけのリゾートは、このどん底不景気下では生き残るすべはないのか? 列車から見えるツインタワーは生きながら朽ちて行くのだろうか。トマムの町も深く沈み込んだ沈滞ムードのまま、いつ好転するかも分からない不況風の直撃を受けているようではある。重そうなバッグを担いだカメラ小僧が惜しみつつシャッターを押して印画紙に焼き付いた景色が、崩壊後もセピア色になるまで残る白日夢。ビール飲んで夢うつつのまま、現実のトマムが遠ざかる北海道の車窓からの景色ではある。資本主義の残滓。盛者必滅。ああ無情。列車は札幌へ。見慣れた景色が記憶を呼び起こす。そう、3年前の札幌もとりあえずラーメンだった(~_~;)。

 降り立った札幌の駅舎は取り壊し中だった。これって駅ビルが出来ちゃうってこと? 北の王国の玄関口なのだから、コンクリで固めちゃいましたって感じの旅情の欠片もない無機質なビルにだけはしないで欲しいね。北海道でここだけは喧噪の中だった。舞い散る枯れ葉をガヤガヤと市民と旅行者が交互に踏みしめてゆく。そうか、今日は土曜日だったな。緩やかな時の流れがねじで巻き戻されたように、我々北の旅人は徐々に都会の流れに体内時計を戻しつつ、目的地の京王プラザ前へ一直線。隣接するビルの地下にある『I』というラーメン屋がお目当てなのですが、ここの真っ黒スープのスペシャル・ラーメンこそが前回の札幌で舌が記憶している味なのだ。

 おお、着いた着いた。
 「このビルの地下だったよな」
 足取りも軽くトントン階段を下りて行くと、オーマイガー! スープ終了のため本日閉店の看板が…。夕方前の午後3時。もう終わっちゃったの? そりゃないよ〜。札幌には1時間ほどしか滞在できないため、腰砕けの二人は気を取り直して、マイブーム的な存在でもある『味のT台』へ方向転換。ここのみそをチャーシューは、ほとんど丼を覆い尽くすほどの大きさで初めてカウンターに座った客の度肝を抜くのだが、駅のすぐ前で支店も結構多いしちょっと俗っぽいけど、その割に味も悪くない。ほとんど雑誌でも紹介されたりしないが、私は好きです>この味。

 ところが、である。あれれ、確か地下に入っていたはずの店舗が地上に。しかも吹き抜けで素通しの客席。チャーシューも小振りなものが3〜4枚に様変わり。変わってないのは味だけでした(^^)。同行人は「旭川より札幌の方が好き」なのだそうで、スープを全部飲み干しちゃうほど気に入ったらしい。そういえば前回来たときは、しょうゆ頼んで美味しくな〜いってブツブツ言っておりましたっけ。だから札幌はみそだって言ったでしょ。コーンとモヤシとタマネギのトッピングも悪くないっす。これにバター落とすと最高なんですけど、成人病予備軍としてはこれ以上地雷を踏むようなまねはしたくない訳で、大人しく七味をバラバラと振りかけるだけ(~_~;)。

 う〜む、満足満腹。んじゃ、レッツゴー。帯広でお茶して札幌でランチ取って新千歳空港で晩酌コースなのである。こんなのどこのツアー探してもある訳ないよな〜と自らの強行軍ぶりを笑い飛ばす二人であった。駅前の書店で宮部みゆきの新刊チェックして札幌滞在1時間強で、快速エアポートの車窓からさらば札幌。陽は落ちて暮れなずむ北の王国には、冬の気配が枯れ葉に乗って町のそこここに舞い降りている。あと一か月もしたらこの街もシバレるんだろうなあ。冬の札幌もいいなあ。石狩鍋もよろしいんじゃないでしょうか>思考回路はいまだ食物連鎖中(~_~;)。

 昼を遅い時間に取ったので、晩は売店でうに、いくら、かにが乗った北海弁当を買い込んで家で食うことにして、何はともあれビールである。地ビールレストランでツブ貝のつまみに生ジョッキ。リフトアップする飛行機のお尻を眺めながら、ここだけは変わってないなあと長嘆息。ここから先、一歩踏み出せばもう東京。あっという間の3泊4日ではあった。味わった北の味覚がほとんどラーメンであったというのも、とほほな旅ではあったけれど、過去数回の北海道行に比べそれなりに充実度は上がっていたように思う。最終日の帯広〜札幌間(220.2キロ)、札幌〜新千歳空港間(46.6キロ)を加算すると、今回の総移動距離数は853.9キロでだいたい東京から山陽新幹線の東広島までに相当するみたいです。これだけ乗ってもJRの道東フリー周遊券だから1万3千円ちょっとで回れちゃうのだ。お得ですよね〜。特急も乗れて指定も取れるし…。

 帰路は闇の中、気流の乱れで大揺れになり、飛び交う悲鳴を子守歌にウトウトと気が付けば羽田空港である。懐かしき東京の匂い。ふと我に返る。馬車馬のように働くモードに切り替わってる自分に驚く。体内時計を元に戻すことから始めよう。(完)

 【追記】 北海道から帰って2週間。我が同行人はすでに冬の北海道の旅行計画モードに入っております(~_~;) さてさて、雪祭りを見に行こうか、流氷はどうかと、すでに資金繰りまで計算始めた様子。この冬の一時金次第ですが、懐暖かなら来年には再び札幌襲来計画が発動しているやもしれませぬ。再見! 北海道!

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