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国産レビュー2003

 2003年も遅々として進まないであろう我が読書生活。ソロリソロリと感想アップしていきますので、見捨てず巡回して下さいますよう切にお願い申し上げます(^_^;)。でも国産はなかなか読めないッス。

題名:十兵衛両断 著者:荒山徹
出版:新潮社 2003年6月20日発行  
価格:本体1800円+税 極私的評価:★★★1/2

 キーワードは柳生と韓人妖術。韓国ネタでいつも引っ張るっていうか、それしかない荒山徹ではありますが、たまには違うジャンルで勝負してもそろそろいい頃合いじゃんと思うのはワシだけではあるまいて(^_^;)。本書では、過去の妖術合戦的な作品群とは一線を画すべく小説新潮に発表した柳生十兵衛と一族郎党の物語が、脇役としての妖術使いの韓人を配置して今までのテイストを残しつつ、剣豪小説としても読者層を確実に広げてくれたのではないか。奇想を排除すれば、真っ当な時代小説としても一ランク上の格を得たと云っても過言ではない仕上がりだとワシは思うぞ。

 とはいえ、韓人妖術。山田風太郎をルーツとする荒唐無稽さであっと云わせる大胆過激な新発想。これがまた奇想天を動かす裏日本史なのだなあ。風太郎忍法帖より硬派な作風が心地よい。どっちも荒唐無稽なんですけど…でも凄い(^_^;)。闇に包まれた柳生新陰流の裏の裏。最近週刊ポストで連載が始まった『新・子連れ狼』にも登場する若き日の柳生烈堂。韓人柳生新陰流…奇想ここまで。う〜む、天晴れ(^_^;)。

 読み始めた当初は連作短編集かと思いきや、最後の短編では柳生十兵衛の××が登場=おお、円環は閉じていた! 刃が鞘走る前に勝敗は決する研ぎ澄まされた使い手たちの紙一重の世界。凄まじいまでの剣戟シーンに瞠目してほしい。剣聖・神泉伊勢守まで繰り出してエンタメ指数をメーター振り切るまで引っ張り上げた荒山徹の作家的豪腕さに脱帽じゃ。久々時代小説の精髄を満喫させて頂きました。佳き哉。(2003年11月読了)

題名:ワイルド・ソウル 著者:垣根涼介
出版:幻冬舎 2003年8月25日 第1刷発行  
価格:本体1900円+税 極私的評価:★★★1/2

 プロローグで書き込まれた主人公らの辿る転落への道標が墓標となった南米日系移民の果てしない日本国への恨み辛みが怒濤のように押し寄せる復讐譚かと思いきや、底抜けの明るさが行動律となって展開する破天荒アクションに仕上がってました。登場人物の造型がまあ型破り。誰にも一線を超えさせない筆裁きの妙。いわゆる人殺しってのは一人も出て来ないミステリ的には少々マイルドかなっていう緩さが、逆にノワール流行の昨今のクライム・ノベル界に爽やかな新風を吹き込む快作になっているとワシは思う。

 サンバのリズムであれよあれよと進行する物語。悪党どもが実に生き生きと法治国家の裏側を疾駆する様がいい。負けず劣らず巻き込まれ型のヒロインの女性キャスターのぶっ飛び加減もまた絶妙(^_^;)。次第にどこからどこまでが悪党かっていう線引きも分からなくなってくるキャラの厚みが、まさしく垣根涼介ワールドなのだろうなあ。文中目から鱗な部分。Nシステムの存在自体は知っておりましたが、自分でも何度も往復している中央道界隈にそんなに何箇所も設置されていたとは呆れ返るやらで、「ああ、そういえばあったなあ」と今頃腑に落ちたりして。そう言うわけで、この本読んで気を付けるようになりました(って何に気を付けるか分からないけれど(^_^;)。侮れないぞ>Nシステム。皆さんもカメラの下を通過する際は必ずあっかんべ〜で行きませう。

 閑話休題。後半戦の腰砕けぶりが★半個マイナスなのだけれど、主人公の下半身は決して憎めないラテンのノリでいつでもどこでもエレクチオンなのよね〜(^_^;)。ワイルド・ソウルの源泉はこいつの下半身にありと読んだが如何。いやはや、ブラジリアンがあそこの毛をああしてこういてそうしちゃうのは本当なのですかぁ。

 大昔の新聞の数行の消息記事から浮かび上がる移民から棄民への軌跡を本書で再確認しつつ、今また北朝鮮拉致問題を掛け声だけで忘却の彼方へ置き去りにしつつある某総理大臣殿の口先だけ外交政策を監視する目を国民皆持つべきであると、外務省共々遠回しに告発する本書をオバちゃん連中にも読ませたくなっちゃう昨今だよなあ(^_^;)。(2003年10月読了)

題名:ダーク 著者:桐野夏生
出版:講談社 2002年10月28日 第一刷発行  
価格:本体2000円+税 極私的評価:★★★

 40歳になったら死のうと思っている…だったら死ねや。なまじ直木賞なんざ取っちゃったもんで、従来自分になかったモノを無理矢理再構築しようだなんて不遜すぎるとワシは思うぞ。120万読者(ホントかそれ(^_^;)を待たせていた(らしい)けど、そんなもん無視して自分勝手に遊んだ桐野夏生のお遊戯かって、昔からの読者は文句を言っていいと思う。個人的には桐野夏生って『OUT』以降壊れちゃったと思っているので、『錆びる心』からは読もうとすら思いませんでしたが、仮にもその昔支持してしまったミロ・シリーズがこんなにもぶっ壊れたシリーズ決着作品として読者の前に給仕されたのに読まない手はないとネット上でお勧めを受けたゆえ手に取ったこの重さ。

 これだけ自由奔放にぶっ飛んでいいなら誰が何書いてもOKじゃん。プロットなんて無きが如し。いやはや唐突に出てくる光州事件のくだりは歯に挟まった異物感が最後まで取れませんでしたなあ(^_^;)。壊れた作者の頭の中で増殖したミロという存在を徹底的にひっくり返す。『ローズガーデン』で実験的に書いてみたミロと村善の空想的関係の発展系がここにはある。人物造型も、これまでの桐野夏生なら鄭止まりでしょうが、久恵こそが、直木賞作家・桐野夏生が新たに獲得したキャラクタ・メーカーとしてこの世に問うリトマス試験紙ではあるまいか。これほどまでに桐野夏生に毒をもたらした直木賞こそ誉められるべきかも(^_^;)。ミロを壊したついでに友部を道連れにした破れかぶれさを…逆に個人的には評価したりなんかしてるのですが、開き直ったホモは怖いってか。

 その後の桐野夏生には何の期待もしてません。続巻が出ても読まないでしょう。ダースベイダーみたいに人生のダークサイドを覗いてしまったキャラを操る作者には、敢えて新シリーズを産み落として貰いたい。これ以上以前のシリーズ作品を貶めて貰いたくないないわけで、もう昔には戻れないのだから今以上にダークでノワールな破壊的作品群に期待したい。喉に突き刺さった棘みたいな直木賞をどう活かすかはあなたの腕次第ですぞ>桐野夏生殿。(2003年1月読了)

題名:終戦のローレライ 上、下巻 著者:福井 晴敏
出版:講談社 2002年12月10日 第1刷 福井晴敏公式サイト
価格:本体1700円(上巻)1900円(下巻)+税 極私的評価:★★★★1/2

 圧倒的な物語の終焉に場違いなまでの『終章』。敢えて世に問う作者の世界観には戦後世代の『IF』が隠されているのだと思う。もしも、あの時点で敗けていなければ…日本のターニングポイントを温子の目を通して『敗けねばならなかった物語』を語り継がせる。終わり無き結末を見届けさせるべく用意したシナリオの薄っぺらさは、現実の持つ重みを支えきれずに腰砕けの部分がなきにしもあらずだけれど、高度経済成長が破綻した今になって見るとその薄っぺらさこそが現代であり、その対極にある太平洋戦争当時へ…読者は『序章』へと回帰する。終戦で終わらなかった物語。踏み込んでいく作者の視点は、そのまま戦争観を読者に押しつけはしないが、ある種強要する部分も…要らないよと言ったのに、テーブルに給仕されるデザートって感じか(^_^;)。ラストは寸止めがよろしいかと…。

 ガンダム世代。『シャアとララァではないか、これ』。かわぐちかいじの作品群。『死の泉』『ひかりごけ』やら。美味しいとこ取り。付き纏う既視感とある意味稚拙な設定も、それだけじゃ終わらないのが福井晴敏の作家的成熟度なんだな。組み合わせの妙。作者が昇華させたローレライの紡ぎ出す戦争と生のタペストリーの織りなす人間模様が胸を打つ。重厚長大な上下巻の重みそのままに軍部からはみ出した存在の伊507とはみ出し者が集まった乗組員たちの取るに足らないちっぽけな者たちが、戦争という時代の潮流の中でどう関わってどう責任を果たしたのか…帝都に原爆は落ちなかった歴史の重みがシンクロするのだ。1945年8月。片道だけの決死行。上巻の書き込みに裏打ちされた登場人物たちの人物造型の厚みが下巻に生きてくるのだな。椰子の実に託した日本再生への希望と、テニアン沖海戦に見た詩的なまでの滅びの美学がクロスオーバーする。豊穣な、見事に生き切って見せた男たちの生き様と死に様と。だからこそ『終章』とのアンバランスさが際立つのだが…。

 『Twelve Y.O.』から積み重ねた筆力の凄み。日本を代表する冒険小説作家として遙かなる地平に到達した著者に快哉を叫びたい。装幀装画ともにパーフェクト。折笠征人が、清永喜久雄が、パウラが、絹見艦長が、田口兵曹長までが、この海のこの空の下で…生きそして死んで行く。見守るのはただただ青い海と空だけ(読後に装画の素晴らしさとともに余韻に浸りませう)。国産海洋冒険小説の金字塔。敗け方を知らなかった日本が辿った道のり。ガンダムを知らない世代の読者ならストレートな感動があなたを包むであろう。折笠征人とともにテニアン沖の大海戦を追体験するもよし。ローレライの哀しみと流れ着いた椰子の実が象徴する戦争の重さと軽さをずっしりと体で受け止めて読んで欲しい作品である。(2002年12月読了)

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