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2001年度国産作品レビュー

 そういうわけで、国産作品も面白ければせっせと読みますよ〜ん。ま、外れも多いけれど当たれば大きいしねえ。海外3国産1の割合で今年も攻めていきたいと思うのであります。

題名:上と外@素晴らしき休日 著者:恩田 陸
出版:幻冬舎文庫平成12年8月25日 初版発行  
価格:本体419円+税 極私的評価:★★★
題名:上と外A緑の底 著者:恩田 陸
出版:幻冬舎文庫平成12年10月25日 初版発行  
価格:本体419円+税 極私的評価:★★★
題名:上と外B神々と死者の迷宮(上) 著者:恩田 陸
出版:幻冬舎文庫平成12年12月25日 初版発行  
価格:本体419円+税 極私的評価:★★★1/2
題名:上と外C神々と死者の迷宮(下) 著者:恩田 陸
出版:幻冬舎文庫平成13年2月25日 初版発行  
価格:本体419円+税 極私的評価:★★★1/2
題名:上と外D楔が抜ける時 著者:恩田 陸
出版:幻冬舎文庫平成13年6月25日 初版発行  
価格:本体457円+税 極私的評価:★★★1/2
題名:上と外Eみんなの国 著者:恩田 陸
出版:幻冬舎文庫平成13年8月25日 初版発行  
価格:本体457円+税 極私的評価:★★★★

 読者も作者も最初に意識していたのは言わずもがなのキング『グリーン・マイル』ですね。編集者なのか恩田陸本人が企んだのかは分からないけれど、どっちかの頭の中にこの企画本のイメージが沸々と湧いてきたのでしょうが、出来上がってみたら別物だったってな感じかも(^_^;)。隔月刊行で読者の興味を繋ぐ小さなクライマックスが雪だるま式に膨れ上がって、知らず知らず頁を繰る手が止まらない状態に陥っている自分にハッと気が付くって寸法だ。恩田陸って個人的には初体験なんだけれど、序破急の呼吸が冒険小説派にもアピール度大。その昔、一世を風靡したポプラ社(だっけ(^_^;)の少年少女冒険小説=ホームズやらルパンやら怪人二十面相=の味わいが現代に甦った、そのノスタルジックな由緒正しき冒険行(ホント血が流れるシーンが少ないのよね)を存分に楽しむ6巻本なのであるな。毒虫も毒蛇も出て来ないジャングルなんてご都合主義も良いところだけれど、単なるジュブナイル作品で終わらなかったのは、恩田流テイストの匙加減によるところ大なのである。具体的にはキャラの立て方ですかね。

 現代風のドライな主人公達が今を感じさせる『旬』。とんでもない母親像の千鶴子。模範的すぎる父親像の賢。そこから始まる大レース♪じゃないけれど、ひっくり返され翻弄される親と子の絆…これぞ恩田ワールド。今風の飛んでる母親から真の母親像を引っ張り出す過程こそが、女流作家ならではの巧さ。柔らかなタッチでグサリと心臓を射抜く描写ってんでしょうか(^_^;)。恩田流諧謔的な捻くり方が、解れて絡まった糸を真っ直ぐに…いやいや、そう一筋縄ではいかない主人公たちもまた魅力。着地点も見事にツボにはまったなあ。その実、恩田陸の手のひらの上で踊らされる感じが、主人公だけではなく読者にまで及ぶ気がしちゃう部分がマイナス要素かも。巻が進むにつれ、予定調和的ストーリー展開が見えて来ちゃうんだよなあ。でもこれだけ蔓延ってる恩田信仰って、それを許した上での納得ジュブナイルってこと? 癒しを求めて読まれる作家? 殺伐たる洋もの血塗れホラーなんか読んだあとにお勧めかもね(^_^;)。

 2年間に渡って刊行された出版形態ゆえ2000年度版『このミス』からは弾かれちゃったためさほどこっち方面では話題に上らなかったけれど、完結した2001年度版では上位を賑わす作品になることはほぼ間違いないでしょう。オンタイムに出版順にまだかまだかとジリジリしながら読むのも一興ですが、今となっては6巻一気読みが未読読者に残された唯一取りうる道(^_^;)。一冊ずつ買って来てわざと飢餓感煽って読むも良し。これぞ大団円を思う存分味わって感動して下さいませ。(2001年11月読了)

題名:DOOMSDAY−審判の夜− 著者:津村 巧
出版:講談社ノベルス 2001年9月5日 第1刷発行  
価格:本体1250円+税 極私的評価:★★★1/2

 第22回メフィスト賞受賞作なんだそうである。新本格SF誕生の狼煙的作品なんだそうである。SF小説ってここまでネタをパクっていいのかってミステリ畑の読者である私には不思議に思えてしまうのであるが、そういう作品に賞を与えてしまうのだから『そういうものなのだ』と思えばそれでいいのである。潔いぞ>メフィスト賞。面白ければ良し。確かにパクったネタのごった煮から抽出された作者のSFマインドは買いである。えげつないまでにアメリカナイズされた登場人物の剥き出しの個性が…『殺して殺して、殺しまくります』。清々しいまでの全編殺戮巨編。お馬鹿だけど凄いぞ、これ(^_^;)。

 モビルスーツ。マーズアタック。小松左京。とどめはシュワちゃんのプレデター。パロディからギャグへと思えてしまうほどの材料をシリアスな筆致で、バカはバカとして利口は利口なやつとして正しく殺戮されていく様を『歴史的事件』の目撃証言として淡々と進行する。途中貪るようにして読んだのは、死ぬべくして現れた登場人物の死に様へのプロセスの厚み。アメリカ=人類代表の愚かさを思いっ切り戯画化してるシニカルさが、今まさに愚行へと邁進しつつある肥大しすぎた殺戮国家アメリカの本質を捉えている部分もあったりなんかして…(-_-)。

 オチが気に入らねえ。画竜点睛を欠くラストの仕掛けで星一個マイナス。そのままシュールに殺戮巨編として完結していれば歴史に残るSF怪作として広く語り継がれたに違いないぞ。実に惜しいっ。ワンアイデアでここまで引っ張った作者のイマジネーションに拍手。ちなみに、表紙絵の異星人のロボットスーツって、一歩間違うと『先行者』みたいに見えなくもない(^_^;)。(2001年9月読了)

題名:墓標の森 著者:樋口明雄
出版:双葉社 2001年5月25日 第1刷発行  
価格:本体1900円+税 極私的評価:★★★1/2

 日本の冒険小説に新境地を切り開いた樋口明雄という作家は確実に進歩していると思う。よりハードボイルド的作風に移行するのは致し方ない部分もあったりして、個人的には納得できない部分も、メジャー作家への産みの苦しみとして素直に評価しなくちゃいけない物語の作家的深度の物差しとなるのでありますな。主人公が『私』ってことからも、作者が目指すハードボイルド的指向が見え見えなのでありますが、舞台設定を戦時から現代へと移行してきたことが作者の自信の現れなんだろうと容易に推測できる。入魂の一作。ただ方向性がミスディレクションなのよね。ジュブナイル系作品で食ってきた作者だけにそこから這い上がる作風を模索したはずの樋口明雄が、実はその呪縛から逃れていなかったってところが何だか皮肉っぽくて、トホホな部分でもある。ま、本作では迷い込んだ森から抜け出せなかったまま、樋口明雄の墓標にならなかったことだけは良しとしようか(^_^;)。

 評論家・香山二三郎氏が帯で『樋口明雄は冒険小説の王道を往く』と高らかに宣言していますなあ。この惹句に騙されて(^_^;)購入したのは事実。確かに冒険小説の部分では一等抜きんでた冒険小説マインドの具現者として王道を歩もうとしておりますが、その実、歩む妨げになる部分が舞台設定違和感なんですよん。環境破壊と人間荒廃とくれば、B級映画的勘違い環境保護アクション映画系の舞台設定そのものではないですか(^_^;)。キャラクターの造形が実にしっくりと来て、冒険小説とハードボイルドとの融合が継ぎ目無くスムーズに流れるはずが、微かな綻びが物語の展開に伴って大きな裂け目となって読者は皆蹴躓くのであるよ。王道こそは対自然サバイバルなのであろうが、人間対人間。悪役キャラの作り込み=背景の確かさに直結するのは自明の理。なんせネイチャー小説なんてワシらには用無しなんだし…(^_^;)。

 散々貶してるように思えるレビューになっちゃってますが、前半戦の謎から畳み掛けるアクションシーンの確かさは、さすが樋口明雄である。『狼は瞑らない』の主人公のストイックさをさらに透徹したキャラへと昇華させたログビルダー=私の仕上がりは一種、ディック・フランシスのキャラを連想させる出来である。フライフィッシング・シーンの描写の確かさは作者の得意分野を描いたわけだから当然か。これからも凄者の悪役探しに作者樋口明雄の苦闘は続くであろうが、ツボにはまった舞台設定こそが冒険小説の命でもある。メジャーデビュー『頭弾』を超える作品にまだ会えぬもどかしさを感じつつ、樋口明雄の次回作もきっと読まずにはいられない期待感が、この作者には存在するとここに記しておこう。(2001年6月読了)

題名:雄呂血 著者:富樫倫太郎
出版:光文社カッパノベルス 2000年4月25日初版1刷  
価格:本体1429円+税 極私的評価:★★★1/2

 伝奇小説に新たなる鬼才が登場したぞ(今頃読んでますが(^_^;)。こっち方面を渇望していたファンは快哉を叫ぶであろう。しかも新分野である。時は平安末期。う〜む、日本史の授業でも苦手な分野であった平安、鎌倉期をこうも臨場感たっぷりに教科書の裏側を血腥くおどろおどろしく描き出す富樫倫太郎のイマジネーション! 高校生の頃こういう作品を読んでいたら…日本史の壮大なロマンに染まって、自堕落な洋画三昧な高校生活は送らなかったに違いない(^_^;)。ま、この作品よりも『陰陽寮』の方が呪術系の伝奇度数は高いんだけど、『雄呂血』も負けず劣らず分厚さも並みじゃないぞ。

 絵巻物やら草紙絵の世界が現実に起き上がって、天皇やら法皇やら摂関やら生臭い陰謀を巡らす朝廷の権力闘争が面白い。人間味あふれる実在の人物像と作者の創造したキャラクターの融合が、繋ぎ目が目立たないようにスムーズな物語の作り込みは作者のお手柄である。だけど、ね。主人公がタイトル通りではないんだよなあ。視点あちこち飛び回って、やっと落ち着いたかと思えば、呆気ない退場劇。感情移入出来ないままにこの分厚さを読み終わってしまうのは如何にも惜しい。もしかして本当に描きたかったのは、渡辺綱と坂田金時だったのではないか。

 この作者今が発展途上なのであろう。この物語もスターウォーズ・サーガのようにデビュー作『修羅の跫』から『陰陽寮』へと壮大な作者の歴史観に乗って平安から鎌倉へと幻妖日本史を編纂する作業と言い換えてもいいかもしれない。今後の続刊をワクワクして待つ読者的な楽しみを提供してくれる久々の国産作家なのよね。日本史が苦手な方もこれを機に見直してみては如何かな?(2001年5月読了)

題名:模倣犯 The COPY CAT 上下巻 著者:宮部みゆき
出版:小学館 2001年4月20日初版第1刷発行 オフィス大極宮はこちら
価格:上下各1900円+税 極私的評価:★★★1/2

 品行方正な宮部みゆきという作家の限界が見えてしまった作品かもしれない。筆力による圧倒的物量作戦で犯罪という現象面のコアな部分に肉薄しようという試みは、一部成功もしくは判断保留というのが個人的な見方だけれど、血腥さがないバラバラ殺人等ジュブナイル的な宮部みゆきの指向に踊らされる主人公たちの閉塞感が苛立ちとともに語られる3500枚には、犯罪者と被害者と傍観者と…立脚点を明らかにしつつ交錯し乖離する個が、一方向へベクトルを一つにしながら収斂しきれない構造。社会派に傾きつつも宮部みゆきに立ち戻ってしまうジレンマ(^_^;)。最後まで被害者側と犯罪者側が平行線を辿ることになるのであるが、主人公はいないと言っていいかもしれない。主な登場人物がいるだけだ。それぞれが犯罪を犯し被害者となり傍観者である社会構造そのもの。個の視点をバラ撒きすぎたゆえ、全体を俯瞰する構成に食い足りなさを感じる部分もなきにしもあらず。現実が小説を超える時代性が連載開始時の小説的企みを飲み込んでしまったがゆえに、有機的にストーリーが絡み合って来ないもどかしさも感じるけれど、確かに宮部みゆきだという手応えはファンなら感じ取れるはず。

 社会的弱者=高井和明というキャラクター。なぜ彼を創造したのだろう。劇場型犯罪を演出過多にする必要があったのか。物語を劇的に演出する『あざとさ』の裏返し。大人になった高井和明に病理学的回答を付与して社会復帰させたのは宮部自身の免罪符。彼にさえイニシアティブを採らせようとする作者の優しさが中途半端なのである。突き放してしまえば、作家の手を離れてもキャラクターが勝手に動き出す躍動感が無いのである。宮部みゆきの手のひらで踊るキャラクターたちは予定調和で収斂する。作り込み過ぎた物語なのに、取って付けたような結末のお粗末さ。見つかった携帯電話はどうやって捜査に活かされたのか。これだけ場数を踏んだ真犯人にその程度のブラフで落とせるのか。アンバランスな書き込み不足がここに来て足を引っ張る。確かに魂を抉る部分はあるけれど、それが素直に感動に繋がるかというと、『あざとさ』に個人的には忌避してしまう部分が残ってしまうのだ。ミステリとしては違和感ありあり。だから最近の宮部みゆきは留保付きでしか読まない私(^_^;)。

 人物像に厚みはあっても遅々として進まない展開におけるスピード感の欠如は、刈り込めなかった編集者の弱腰にある。売れ線作家の玉稿には恐れ多くて手も入れられないってか。それでも、劇場型犯罪の黎明期とも言える21世紀初頭に、これからの犯罪者像を活写した先見性は宮部みゆきのお手柄である。目の付け所が売れ線作家とそうでない作家との分かれ道であるよなあ。そう言えば、彼女、大沢オフィスに入ったようで、オフィス大極宮でネット展開しておりますぞ。作家の日常も切り売りしようという大沢在昌の提唱で、京極夏彦も加わって、新時代の作家像を模索しているようでもあり、次世代の小説の在り方を極めてくれるかもしれない彼らに期待してみようか。週単位で更新してるようですので、興味のある方は訪問してみては如何かな。(2001年4月読了)

題名:黒祠の島 著者:小野不由美
出版:祥伝社ノン・ノベル 平成13年3月1日 第3刷  
価格:本体886円+税 極私的評価:★★★

 志保の存在をもっと生身で見せて欲しかった。『生前』の彼女を読者は追体験出来ないのだから、せめてプロローグにでも登場させて感情移入させやすく仕掛けるべきである。小野不由美ともあろうものが不覚である。物語に厚みがない。だから、こういう薄っぺらい感想しか書けないという言い訳でもあるんですけど(^_^;)。ま、ノベルスだからこんなもんなんだろうなあというのが率直な感想であるな。『黒祠』という面白い題材を引っ張り出したからには、もっと素材を活かすべく時代設定を変えるなりして、『犬神家の一族』に負けず劣らず横溝正史的世界を小野不由美的伝奇風味をミックスしておどろどろしくやろうと思えば出来るのに、そうしなかったのは『屍鬼』でほとほと疲れたからかしらん。まさかね。

 編集者の要請なのか、最初から意図して本格モノを書こうとしたのでしょうねえ。ラストで垣間見せたホラーテイストを期待する読者層の方が小野不由美の場合多いように思うのだけれど、動機も結末もそうなるだろうという予想を裏切ることもなく、まさしく本格モノの道をしっかり歩んでくれました(-_-メ)。本格ミステリとしては端正な出来と申しておきましょうか。ゆえに求めるモノが違う我々クセ者系読者には中途半端にしか思えないことをお許し下さいませ(^_^;)。しっかし、まあ多芸な作家よのう>小野不由美。初の試みとしては成功したと言えるのか。パズラーとしてはもう少し虚仮威しがないと弱いかも。ストレートに攻め過ぎて遊びが少ないのは、本格モノを書こうと構えてしまった弊害? 肩の力抜けてないよね〜。

 登場人物の整理が付いてない分かり辛さ。主要登場人物である女性二人の肉声には全く触れられなかったから、パズルの中核を為すトリックも生きて来ないもどかしさ。もしくは、牛頭馬頭の周辺知識をもう少し蘊蓄満載で読者を衒学趣味で煙に巻いてもよかったのではと思わせる。この辺は経験が物を言う世界ゆえ、こっち方面の作品が続けば解消されるでしょうが、そうそう続くとも思えないし…難しいところでもある(^_^;)。こういう分野のミステリって横溝正史の独壇場だもの。文体に舞台設定の同時代性をしっかり残せる作家の年輪と『おどろどろテイスト』全開で本格モノする作家的資質に関しては、小野不由美にはまだ距離があるように感じたけれど、ファンはそれでも付いてくるのであろうなあ。すでに3刷。十二国記からの根強いファンの方々には敵いませんよ、まったく。(2001年3月読了)

題名:脳男 著者:首藤瓜於
出版:講談社 2000年9月11日 第1刷発行  
価格:本体1600円(税別) 極私的評価:★★★

 脳男ってタイトル付けた作者の勝利かもしれません。帯で大袈裟に未知なる怪人が誕生したって言っても、知る人ぞ知るサム・ライミの怪作=映画『ダークマン』ってのを見た方はご存じでしょうが、全身やけどで瀕死の重傷を負いアドレナリン分泌異常を起こして尋常ではない怪力ぶりを発揮する怪人が、あちこちに類似点をばらまきつつ登場してましたよねえ。ここでいう心を持たない男を、作者の首藤氏はこの辺から着想したのではないかって思うのですけれど、あながち気のせいでもあるまい。パクリとは言いませんが、これだけ特異な主人公にオリジナリティを求めるのはなかなか難しいよね〜。特にB級映画ではありとあらゆる怪人超人が日夜創造されているからして(^_^;)、ああ、どこかで見たなって既視感が支配するのも宜なるかな。首藤氏のオリジナリティは、怪人を医学的オブラートにくるんで探偵側にうまいこと置いたってことですな。ありがちだけど、怪人と女医さんの組み合わせの妙も加点対象かな。

 警部さん役の茶屋ってのがアウトサイダー的な警官の典型みたいな描写で、これが乱歩賞の限界なのねって鼻白む部分もなきにしもあらずって気分であったけれど、コンプレックスを抱いた女医さんキャラと彼女が暴き出す鈴木一郎ってキャラの発掘作業で、その辺を補って余りあるリーダビリティで読者に『売り』の部分を見せてくれましたねえ。プロの作家の入り口にある首藤瓜於という存在を見事にアピールした部分を選考委員の連中は『買い』に走ったのであろうなと思いを巡らすのである。でもさあ、乱歩賞ってこの程度のレベルでいいのかって、ここ数年の大命題だとワシは思ってるのだけれど、受賞しちゃったからにはこの程度でいいのであろうなあ。大化けしなくてはメジャーな売れ線作家にはなれないことは本人も重々承知しているはずですので、次回作にこの人の方向性が決まるであろうことは、編集者ほか読者ですら皆知ってるはず。と、首藤瓜於氏にはプレッシャーを掛けておきたいっすね。

 超人である脳男がダイハードな大活劇を繰り広げるエンタメ度を突き詰めていれば乱歩賞を突き抜けて大ブレイクする予感も秘めつつも、大人しめの終息が乱歩賞の縛りを免れ得なかったかなあと長嘆息するラストではあったなあ。臨界一歩手前。寸止め。不完全燃焼のまま消えた脳男の続編を視野に残しつつ、新機軸を構想する作家的企みなら、さすが首藤瓜於…あの風貌怪異さは並みではなかったわけだわいと膝を叩いて首肯するのであるが、さて如何に。(2001年3月読了)

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