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99年度国産作品感想

 国産作品も嫌いじゃないんです。ただ、海外作品の方が粒ぞろいの昨今。面白ければ、ガンガン読みまっせ。

題名:スリー・アゲーツ 三つの瑪瑙 著者:五條瑛
出版:集英社 1999年12月10日 第1刷発行  
価格:本体1800円+税 極私的評価:★★★

 一部(~_~;)評判になった前作『プラチナ・ビーズ』に次ぐ期待の新人・五條瑛の書き下ろし最新刊である。年内2冊刊行とは新人にしてはハイペース、かな。まあ、新人さんはそれぐらいビシバシ働かなくては名を残せないぞって、ここでは叱咤激励しておきましょうか。絶賛とまではいかないけれど、個人的にはそれなりに面白く読みましたぞ(不満も多々ありますが…)。リーダビリティの良さってのは作家本人の持って生まれた資質もかなりなウエートを占めるからして、その点からしても『スリゲ』は及第点であるな。エンタメ作品としては地味ながらそこそこ売れる予感もするのだが、今回、浅田次郎の帯の言葉抜きでどこまで善戦するか。出版社もその辺シビアに見極めようとするでしょうから、勝負と言えば勝負と言えるかも(~_~;)。3刷ぐらいまで行けば、水準を落とさずに書き続けなければ生き残れないプロの作家としての第一関門をくぐり抜けたことになる、よね>五條瑛。

 北の工作員を葉山以下『会社』の面々に絡めてアップトゥーデートに作り上げた物語は、スパイ物の壁を乗り越えて人情紙風船的なウエットな世界を構築して、「そうか、こっちへ攻めてきたかあ。う〜む」とハードでドライな世界しかミステリ作品には求めない我が灰色の脳細胞はページを繰る手に拒絶信号を送る一歩手前まで行きましたが、そこはそれ、葉山、坂下の迷?コンビとメタモルフォーゼ吾郎(~_~;)の部分が読ませるのは、作者の筆裁きにいい意味での遊びが出来たことによる。ディテールの書き込みにも作者のこだわりが見え隠れしていて好感度大なのだが…。

 そこから先が、個人的にはしっくり来ませんでしたな。チョンが優柔不断な軟弱工作員にしか読めなかったし、テメエの下半身のせいで家族を二つ作っておきながら、どっちも選ぶなんてのは男の風上にも置けないヤツだぜって。究極の選択をさせなきゃ、納得しない読者も結構いるんじゃないかしらん(~_~;)。「お父さんは、必ず来ちゃいけない」のである。どっちかにしか来ない方がいいのである。捨てられた家族が路頭に迷わなくてはいけないのである。何度か出てくる葉山の調書部分は物語に乗りかけたかなあってところでリズムを寸断するのだな。もっと畳みかけてくれ。一気呵成で読ませろ。坂下をもっと暴走させてくれ〜い!

 まあ、いろいろ注文付けましたが、個人的には物語的温度のぬるさが前作より1/2マイナスってとこでしょうか。その分、ハートウォーミングなサブストーリーで葉山やら勇気の人物像が掘り下げられたプラス部分も評価しなくちゃいけないし…ねえ。三作目はこの路線を踏襲も出来ないだろうし、新機軸であっと驚く剛速球を投げ込んで下さいませ。遊びの部分は吾郎クンで思いっきり羽目外してもOKだと思うぞ(~_~;)。新たな角度での葉山という宙ぶらりん人間の肖像を掘り下げてくれることを期待しつつ…。(99年12月読了)

題名:青の炎 著者:貴志祐介
出版:角川書店 1999年10月30日 初版発行  
価格:本体1400円+税 極私的評価:★★★

 予告していた11月初旬発売の『ハートブレイカー』が、タイトル変更して繰り上げ発売されたのが本書なのであろうか。『このミス』の締め切りを意識してのもの? まさかね(~_~;)。閑話休題。さてさて脱ホラーを志した意欲作ではある。『黒い家』はサイコミステリだとの声もあるが、まあ、日本ホラー小説大賞に応募したぐらいだから、ホラー・プロパー(もしくはサイコ・プロパー(~_~;)な作家として読者の認識度はあるはず。なんせブレイク前の刊行当時はホラーとして結構静かにマニアックな売れ方をしていたはずだもの。『十三番目の人格』もそうでしょ。マキャモンがそうであったように、貴志祐介は意図的に一皮剥けたのだろうか。ただ、サイコ畑ばかり耕すにしてもネタを掘り尽くしちゃった感があって、必然的にこっち方面へ来ざるを得ない作家的状況ではあるのかも知れない(~_~;)。

 青春の殺人者は切なくやるせなく閉塞感に満ちた青き肖像画。ブルーを基調にした装丁との一体感が、エルトン・ジョンの『青い肖像』を連想させるのだな。帯にある『人間の尊厳とは何か』という大上段な切り口ではなく、愛とか正義とか放っておいて、主人公の17歳の少年が辿る青臭い『罪と罰』にほんの少し貴志流スパイスを利かせて仕上げた佳作という評価ですね、個人的には。ホラーやらミステリにどっぷり浸かった読書子には物足りなさが最後まで付き纏うでありましょうが、トリックやら動機やらは主題から逆算されたように青臭くなるのは当たり前で、計算されて作り上げられた作品であることは、貴志祐介の過去の作品群からして一目瞭然なのであるな。

 まあ、賛否両論侃々諤々ある作品になるでありましょう。私的には貴志祐介には安易にこっち方面へ流れないで、ホラー畑の土台をキッチリ残しつつ、いろいろ冒険して欲しいのであるが、本人のメジャー指向の強さの度合いが分かれ目となって、次回作以降、今後の作家活動の指針が見えてくるのではないでしょうか。まだ、身捨てはしませんぜ>貴志の旦那(~_~;)。『天使の囀り』を超える超絶ホラーを書きまくって欲しいことあるよ。(99年11月読了)

題名:カムナビ 上、下巻 著者:梅原克文
出版:角川書店 平成十一年九月三十日 初版発行  
価格:上巻本体1600円+税、下巻本体1900円+税 極私的評価:★★★

 待ちに待った梅原克文がこれでは困るのである。サイファイ論争でSF文壇を賑わすのは結構ですが、自分の面倒ぐらい自分で見てくれぃ。手垢の付きすぎた邪馬台国論争を梅さんらしく奇想天外な『カムナビ』に結びつけた手腕はさすがである。しっかしねえ、史実という部分から引きずり出した美味しいところをその実、歴史の重みにセンス・オブ・ワンダーの部分で拡がりが自己抑制されてしまった気配がある。圧倒的飛躍部分が押さえ付けられてソノラマの『悪魔』シリーズに劣るとも勝らない中途半端な作品に終わってしまった感がある。まったくもって惜しいの一語である。

 解き放たれた神の業火が飛来するのが奈良の桜井市だけというのもスケール小さいし、オルバースのパラドックスから導き出されたカムナビの秘密も何やら荒唐無稽というよりも幼稚すぎてトホホな理屈なのである。とっておきは目覚めた『彼』の姿形である(~_~;)。青い遮光器土偶からして説得力無さ過ぎ。現存する過去の遺物を利用するのに史実と離れ過ぎちゃうと、こういう羽目に陥る見本みたいなもんだな。しかもそいつを邪馬台国までくっ付けちゃう訳だから、歴史に対して固定観念持ってる読者に挑戦状を叩き付けてる感じですが、そう簡単には読者も譲らないし、さりとて物語の展開上この辺は作者としては譲れないところだし…読み手としてはもっと工夫してとしか言えないのがもどかしい。こういう古代史に手を出した梅さんが認識不足なのさ(~_~;)。これじゃ高橋克彦読んでるみたいだもんな。飛躍度から言えば『竜の柩』の方がもっとトンデるよ、絶対。

 さすがと思わせたのは、カムナビ襲来と『彼』との攻防アクションシーンですね。草薙の剣にもう少し三種の神器らしく役割を与えて欲しかったけれど…おっと、こういう読者の歴史的認識が足を引っ張ってる訳だな。古代史に足を踏み入れるのはかほどに困難が付き纏うのであるぞ。次回作はまた4年後なんでしょうか>梅原克文。上巻の文章の下手さ加減に結構うんざりした部分もあるので、しっかり雑誌にでも連載して文章力磨いてくれても良いかも。ブランクありすぎると絶対筆先って鈍るものだから。誤解しないで欲しいのですが、なんだかんだ貶しても出たら即買い作家としての評価は揺るぎない梅原克文なのであります。(99年10月読了)

題名:ボーダーライン 著者:真保裕一
出版:集英社 1999年9月10日 第1刷発行  
価格:本体1700円+税 極私的評価:★★★

 真保裕一が書きたかったのは、日本国内ではフィットしなかった私立探偵小説ではないかと思うのだ。ロスの日本人社会っていかにも舞台はそれ向きでしょ。狙いは間違ってなかったけれど、メジャー作家になってから徐々に漏れだした脇の甘さが多少気に掛かる部分がチラチラと…。『奇跡の人』から引き摺るメンタリティ。拘ってるのであろういわゆる性悪説を無理矢理引っぱり出したのはいいけれど、説得力という点で「?」が付く。米国でもやはり宙ぶらりんな存在であるPIを、さらに中途半端に日本人に背負わせちゃったから印象的な主人公の創造という点ではかなり苦しかったのでは…。米国人私立探偵を引き合いに出して主人公のモチベーションに絡めるのはどうかな(~_~;)。

 日本人としてではなく日系人的視点から事件を引っ張ってる意図は、物語を日本人の日常から乖離させドライな米国社会と融合させる試みへと繋がってるのよね。日本人から離れ米国社会でも端っこに位置する主人公たちのいるボーダーラインが、日常を通してクッキリ浮かび上がるようにあれこれ手を尽くしているように見えますが、必ずしも成功していない。事件そのものの軽さが最後までつきまとった部分に違和感が残るのは私だけではあるまい。もう一歩深く登場人物を韜晦の海に投げ出して欲しかった気がするのさ。

 確かな水準は超えてはいるのだが、秋の新作、大作ラッシュの中で埋没しないことを祈るのみかも(~_~;)。あちらこちらと雑誌で連載したものに手を入れて出版する機会が増えるのは売れっ子作家なら致し方ないけれど、作品のスケールは落としていただきたくなかったっす。真保裕一なら、それが出来るはずなのだが…。スケールの大きい作品で大いに冒険してほしいぞ。書き下ろしに期待してます。はてさて、いつ出てくれることやら(~_~;)。(99年9月読了)

題名:亡国のイージス 著者:福井晴敏
出版:講談社 1999年8月25日 第1刷発行  
価格:本体2300円+税 極私的評価:★★★★★

 福井晴敏は大化けした。江戸川乱歩賞受賞作『Twelve.Y.O.』の破天荒さを受け継ぎつつも、圧倒的に作家的深度を深め、これでもかこれでもかと複数の登場人物のトラウマまでも渾身の力で描き切った分厚さが本作品のフレームを支えるイーゼルなのだ。ここまで書けるのかと驚くほどのマニアックな自衛隊関連の知識。丹念に取材した材料を自然に活かし込む作家的テクニックには脱帽である。人物像の分厚さ。最初は鬱陶しくもある掘り下げ方が、徐々にプロットの中に浸み出してくる枝葉がやがて幹へと成長するのだ。国家と戦争と組織としての人間、そして個人としての人間。その狭間で揺れる男たちの物語。国家とは何なのか。真摯な問いかけに答えるべく如月行と仙石海曹が死を、いや生を賭けて、集中砲火の甲板上を駆け抜ける。まさしく海のダイハード! 凄いぞ、これ。

 女性軍には不評を買うやも知れぬ海洋系軍事冒険小説ゆえ、声高にはお勧め致しかねるが、FADV冒険小説派なら読まねば一生の不覚であるとさえ言い切ってしまいましょうか(~_~;)。歪んだ現憲法から必然的に産み落とされた自衛隊の存在意義を真っ向から問う問題作でもある。誰もが避けて通る亡国の論理を大上段に振りかざせば、道は二つに一つ。行くも地獄、戻るも地獄。個人としての人間を国家に優先させた者たちの到達点。国家に埋没した人間との対決。行き着くところは人間賛歌にも似た殺戮の宴へ。生あるからこそ死がそこにある。よく見ろ、これが戦争だ。戦後揺れ動く民主主義の揺りかごで惰眠をむさぼってきた日本人の喉元に突きつけられたナイフ。戦後民主主義が血を流す時代に到達したのかも知れない。飛び切りの痛みを伴って…。そして、国家の最小構成単位が人間であることに思いを馳せるのである。

 前半戦のひっくり返し、お見事でした。マクリーンを彷彿とさせる謀略の伏線が縦横無尽に『いそかぜ』に仕掛けられており、物語的興奮度がアクション小説として読んでも一級品である証拠でもある。ちとエピローグとも言える終章が感傷的で長いのが玉に瑕かな。おっと、前作から引き摺ってる『GUSOH』の存在もリアリティ度マイナス点か(~_~;)。ま、そんな程度の瑕疵でダメになる小説ではないから、『Twelve.Y.O.』をすっ飛ばしてでも安心して読んで下さいませ。最近落ち目の日本映画関係者は制作費を山ほど抱えて、ぜひ『ホワイトアウト』よりこっちの方を先に映画化して欲しいものであるな。これだけ美味しい原作はこの先もそうないと思うのだけれど…。(99年9月読了)

題名:千里眼 著者:松岡圭祐
出版:小学館 1999年6月10日 初版第1刷発行  
価格:本体1700円+税 極私的評価:★★★1/2

 予測不能、解決困難、急転直下、待ったなし!って帯の惹句もさほど大袈裟とは思えないスケールの大きい作品であることは否定は致しませんが、元空自の女性パイロットがいきなり病院のカウンセラーで登場してきて、あれよあれよという間に米軍基地のミサイル発射装置のカウントダウンを阻止するスーパーな活躍って、あまりに荒唐無稽かなって思っちゃうのですわ。ちょっとやり過ぎじゃないかしらん(~_~;)。しっかも、もろオウムの恒星天球教の教祖が、なぜそこまで暴走するかは書き込まれてはいるけれど説得力薄いよね〜。漫画チック過ぎませんか。相変わらず著者お得意の『催眠』ワールドに無理矢理読者を引きずり込むパターンは健在のようだし、元民間機の機長にいきなり戦闘機操縦できるものなんでしょうか。しかもドッグファイト付きよ〜ん(~_~;)。って、まあ、瑕疵を色々あげつらいましたが、その辺を読者が個人的にクリアできればOKなのであって、いやはや『ダイ・ハード2』も真っ青の航空冒険サスペンス巨編ここに登場と言い切ってしまいましょうか。

 精密機械のような緻密さというのは言い得て妙だな。プロットの構築力は新人作家にはしては抜きん出ていますね。愉快痛快!主人公たちが絶体絶命の幽閉先から脱出しうる唯一のポイントがXX箱だなんて笑わせていただきました(~_~;)。編集者的にあと一つ注文を付けるとしたら、女性キャラの大人のラブアフェアでありましょうかね。濡れ場を効果的に挟んで、もう少し女主人公に艶を持たせる部分があっても良かったんじゃない? 生硬すぎるからこそ、ダイハード的に突っ走れた部分もあるかとは思うのだけれど、いつもそれでは大人のエンターテインメントとしてはちと弱いか、と。

 どうしても売りである『催眠』ネタの呪縛から逃れ得ないのであろうか。出版社からのリクエストもしくは強制なのかな。専門家ならではの同ネタの扱い方は圧巻であるが、そろそろ無理が来て物語的に破綻しかねない同系列作品3部作と言えないこともないか(~_~;)。ストーリーテラーとしては抜群な腕前を披露してくれた著者であるからして、無理なく新機軸の新作で我々の前に再登場してくれることを切に望む次第でありますな。おおっと、この終わり方は続編の匂いがぷんぷんしますが、もしかして『千里眼2』で恒星天球教との全面対決かぁ。(99年8月読了)

題名:異常快楽殺人 著者:平山夢明
出版:角川ホラー文庫 平成11年8月10日 初版発行  
価格:本体686円(税別) 極私的評価:★★★

 あまりに異世界的な話なのに、これらすべてがノンフィクションであるという凄まじい現実に打ちのめされる。まさしく現代の黙示録である。いみじくも作者自ら指摘する人類の負の遺産=皆殺しの遺伝子がここに暴き出され、悪夢が白日の下にさらされる。いや、夢じゃない。夢なら覚めないでほしい、まごうかたなき現実なのだ。斯界のスーパースター(-_-;)が超絶のパフォーマンスを繰り広げ、負のメーターがレッドゾーンを軽々振り切る。レクリエーションとしての殺人食人死姦強姦サイコキラーのデパートがここには紹介されているのだ。歪んだ形での究極の快楽。サルもしくは類人猿。決してに人間だけに起こりうる異常行動ではない。この悪夢のスケールの大きさに思いを馳せるのである。明るみに出たのは氷山の一角なのでは…潜在的予備軍を圧倒的多数抱える病んだ米国ほか先進国の覆い隠しようのない現実を見事にすくい上げたノンフィクションである。

 レクター博士にはモデルがいた。クラリス捜査官も然り。驚くなかれ、キング『IT』の殺人クラウンも実在の殺人鬼がモデルなんだそうである(~_~;)。単行本にあって文庫版では削除されちゃったゲーシーのピエロ姿は鬼気迫るものがあるぞ。米国闇社会の奥の深さに改めて瞠目するのである。国もデカけりゃ殺人鬼のスケールも規格外れの凄まじさ。列伝にまでなっちゃうところがアングロサクソンの病理の特異な点なのでしょうか。黄色人種の我々にはここまでアグレッシブに殺人耽溺症的側面は見せようにも実体がないので、女どころか男まで大人も子供も犯し殺し食べる彼らの飽くなき衝動に、生物学的殺戮本能を解き放つ現代社会の病理をどう解釈するのか。幼児虐待の本場、米国ならではの彼らの凄まじい幼児期が圧倒的なトラウマであることが統計学的には立証されよう。ただ、すべてが方程式のように割り切れるものではないことは自明の理である。性悪説+刷り込みの相乗効果。乳首の長い男に気を付けろ(~_~;)。

 宮崎勤やら少年Aの存在が日本のサイコ犯罪界もメジャーリーグへ駆け昇りつつある段階に来たかの印象を与えますが、ジェフリー・ダーマーの項を読めば黎明期に過ぎないことが明らかであるな。読み進むうちにショック症状が緩和して平気で読めるようになってしまう自分に驚くと同時に、ベトナム戦争当時の恐るべき狂気が米国社会のメジャー級殺戮フィールドを支えている部分に気が付くのである。アフガニスタン後のソ連。その後のロシア、ウクライナあたりのサイコ系犯罪の統計も気に掛かるところであるな。身近な大量殺戮の影響がある種の人々にとって易々とリミッターを外してしまう事態を招く。もしくは招く可能性があるってところか。最後は勝手に妄想的な推論を書きましたが、殺戮のスケールの違いはそうでもしないと説明のしようがない。単なる民族的差異では結論付けたくない読後感ではありますね(-_-;)。(99年8月読了)

題名:水の通う回路 著者:松岡圭祐
出版:幻冬舎 1998年11月15日 第1刷発行  
価格:本体1800円+税 極私的評価:★★1/2

 実は『催眠』も読んでなくて、何の先入観もなく読んだ本書で臨床心理士でもある著者に接したわけだ。どうやら洗脳系のオーソリティらしいので、実は個人的には構えて読もうとしてなかった範疇に入る作家の代表的な一人であったのさ。いるでしょう、よく自分の世界にどっぷり浸かって読者は二の次って人。エンタメ作家の風上にも置けないヤツ。ところがですねえ、松岡圭祐なかなか文章力が豊かでしっかりエンタメしてるんですよ。素材がゲームということで、今野敏の『蓬莱』を思い出した方もいるとは思いますが、こっちはゲームの謎にサイコ・サスペンス的味付けで、著者得意の分野へ読者を無理矢理引きずり込むのだな。

 人気ゲームソフトをプレイした日本中の子供たちが、全く同じ幻影を見て怯え魅入られたように自殺行為に走る! なぜ? 誰が仕組んだ? まあ、そういう謎の存在ってゲームを素材にしたらいかにもありがちってストーリー展開ですが、設定からして海千山千成り上がりのゲーム企業を人的要素も絡めて実に生き生きと描かれていることに驚いた。ここまで書けるのであれば『催眠』も読んでみようかな、と。惜しむらくは多少ステレオタイプなキャラと言えば言えなくもない点か。アクの強いシグマテックの神崎社長なんていい味出してるよねえ。ここまで嫌なヤツだと思わせちゃえば作者の勝ち。

 潜在意識下に持つ恐怖を人為的に表面化させること。本作品の狙いはこの点に集約されると思うのだけれど、作者が問いかける心理的あぶり出しはかなり無理があると思うのさ。ここまでひっくり返す必要もないんじゃないの。しかも『水の通う回路』の意味たるや、かなりな力技っすね(^^;)。何が何でも臨床心理学的な自分の専門分野に誘い込む姿勢はまだまだ若いぞ。続刊の数作品も読まねばという気にさせるブレイク前の雰囲気が買える作品という位置付けでいいのではないかな。今後に期待。(99年8月読了)

題名:OKAGE 著者:梶尾真治
出版:早川書房 1996年5月31日発行 文庫版もハヤカワから出てます
価格:本体2136円+税 極私的評価:★★★

 しばらく前に読了したカードの『消えた子供たち』を想像していたら、見事にハズされてのっけからいわゆる都市伝説へと引きずり込まれたのでありました。それだけではない。いかにもノンジャンル風の表紙絵に騙されることなく、やがて来る現状肯定をひっくり返すSFプロパーな作家が描き出す奇想天外人外魔境を期待しつつ読み進むと、そこには大風呂敷なSFマインド溢れる別世界への大ジャンプが仕掛けられておりましたねえ。そうこなくっちゃイケませんぜ。んじゃなきゃ梶尾真治なんて読みませんて。ノストラダムスの予言書が効力を失う1999年にこそ読むべきであり、カタストロフを指し示す黙示録にまで一気にすっ飛ぶさじ加減はミステリ・リーグの連中には描き切れない構成力であると言い切ってもよろしいか。

 SFプロパーならではの弱点と申しましょうか。日常からのメタモルフォーゼまではいいのだが、そこからの説得力がいささか弱い。独りよがりの人類学的分類は肯定できるレベルにはない訳で、例のハンコックの『神々の指紋』より荒唐無稽では如何にフィクションとはいえ、バックグラウンドが物語的興味から乖離してしまう。それでも★★★なのは追う者と追われる者の物語がはっきりと自己主張しているからに他ならない。マンハント劇にホラー色を加え、八犬伝ではないけれど、それぞれの役割を天から与えられた脇役陣がついには阿蘇山中での大活劇へと雪崩れ込むラストから、映画『ディープインパクト』もかくなるやというカタストロフの圧倒的迫真力が読む者を惹き付けて放さない。作者は九州在住に違いないと踏んだんだが…如何?

 エピローグのオチが哀切極まりなく『OKAGE』の子供たちの未来への明るいヴィジョンが仄見えて人類のプラス部分を謳い上げた国産作品ならではのごくごく部分的なハッピーエンドが心地よかったりする。現実問題として、2000年以降に果たして我々の世代のどのくらいが新人類と相対して来るべきカタストロフを超えて生き延びるとが出来るのだろうか。もしかして新人類より旧人類の方が逆に予知能力が上回ってると思うのはワシだけかな(~_~;)。ま、ありがちな終末ネタを都市伝説に結びつけた着想の妙で梶尾真治の勝ちってとこでしょうか、ね。(99年7月読了)

題名:ジャッカー 著者:黒岩研
出版:光文社 1999年4月30日 初版第1刷発行  
価格:本体1900円+税 極私的評価:★★1/2

 迸る熱気といかがわしさ。和製ディーン・クーンツというよりは、ディーン・R・クーンツと言った方がより近いかもしれない。いわゆる初期のクーンツね。ホラーとミステリとSFをジャンルミックスした荒唐無稽文化財級(~_~;)の大ボラ小説はノリで勝負って感じですかね。確かに着想の妙は認めますが、あまりにあんまりなので最初投げちゃおうかって思いつつ読み進んだのは事実。その割にノンストップなリーダビリティはこの作家の大いなる資質と誉めておこう。

 マッド・サイエンティストやら米軍秘密研究所やら、それらしき舞台装置をいかにもって感じで前面に出されても説得力薄いぜ、やっぱし。せっかく連続不条理殺人で前半ぶっ飛ばして来たのに、そういう落とし方をしちゃうのかぁ。こういう小説って無理矢理理屈付けるとそこから破綻するのは、リアリティの付加の料理具合がよろしくないことから始まるのであるが、登場人物も脇役連中をナチュラルに書き込めていないせいもあって、台詞&行動様式の上滑り加減が物語を陳腐に見せてしまうのは致し方あるまい。そんな簡単に身近に臨死体験マニアの女子高生なんていますか、普通。主人公に魅力がないのが致命的っすね。もっと人を書き込むべし。頭でっかちホラーは怖くないのよね〜(~_~;)。

 『ハイダウェイ』&『戦慄のシャドウファイア』を下敷きにしているであろう黒岩研テイストたるオリジナリティの混ざり具合はいささか不満。『ハイダウェイ』的あっちの世界への空想の膨らませ方が足りないのであるが、『シャドウファイア』的突進がクーンツに迫るパワー全開ド迫力大活劇であるところは買いです。ご都合主義を吹っ飛ばす破天荒な暴走ぶりは、若手作家ならではの読ませどころなのだ。この手の作品はハードカバーで出すよりも、光文社なんだからノベルスで世に問う方がしっくりきたのではないでしょうかねえ。そっち方面の読み手もハードカバーより手を出しやすいはずだよね〜。(99年6月読了)

題名:13 著者:古川日出男
出版:幻冬舎 1998年3月15日 第1刷発行  
価格:本体1900円+税 極私的評価:★★★★

 こぼれだした言葉のイメージの奔流が圧倒的である。言葉の限りを尽くして顕わした無限の色彩の画布こそが神へのパスポートであったのか。視覚異常者にして映像の天才・橋本響一の幼年譜。ザイールの森で得た神の記憶が彼を千年王国へと導く。すべては神の道標。キリスト教徒に忌み嫌われる『13』という数字こそが、森の奥の奥から信頼、裏切り、復讐、殺戮、再会を経て立ち上がってくる新たな神話の創造への鍵となって、濃密な読書空間に至福の時を与えうる。もしくは与えないかも(~_~;)。

 神はすべてを俯瞰するのか。天使は何故舞い降りる。黒いマリアと偽りの処女懐胎の意味するものは? 作者によって裏返された『新約聖書』なのであろうか。重すぎる主題に頭でっかちなサル学談義を膨らませ過ぎてザイールの森を迷走気味に突っ走った前半部分と、後半一気にハリウッドへ飛ぶ唐突さが新人作家のデビュー作らしく微笑ましくはあるのだが、ハリウッド部分が某映画の影響を引きずっている部分が見え隠れしてしまうのがいかにも惜しい。エンターテイメントとしての作品の読みどころではあるが、もう少し青年・橋本響一の天才映像作家ぶりを見せつけても作品のバランスを崩すまでには至らなかったと思うのだけれど…。

 キリスト者ならこの作品の奥底のコアな部分にも敏感に反応してしまうのだろうか。謎の認識票『13』と分身『13』。宗教としての輪廻を完結できたかどうかは、読者の読み方に掛かってきてしまうのでしょうが、作者としては言葉の奔流に飲み込まれてしまった悔恨が残るデビュー作になったのでは…とワシは勝手に想像したのでありました。ま、作家はイメージ勝負。こんなん理詰めで考えてどうするのって部分で★一個サービスかな。(99年5月読了)

題名:妖都 著者:津原泰水
出版:講談社 1997年10月30日 第1刷発行  
価格:本体1700円 極私的評価:★★1/2

 綾辻行人、井上雅彦、小野不由美、菊池秀行が絶大なる賛辞寄せてますけど、さほどのモノでしょうか。作家同士の互助組合じゃあるまいに、だいたい二割五分引きぐらいの感じで読むとよろしいかもしれません(~_~;)。確としたプロットがあるわけでもなし、主人公の辿る道筋がふわふわと場当たり的に寄り道してる感覚。登場人物らの巻き込まれ方も不自然極まりないし、いくらホラーだといっても、そう簡単に退場させないで下さいと作者に文句の一つも言いたくなっちゃう展開であるよなあ。感情移入できる登場人物がほとんどいないという弱点。それを補うホラー・テイストが横溢していれば、作品としてはOKと言える部分もあるわけですが…。

 両性具有。ここから物語は著者の脳内で発酵し始めたのでありましょう。幽霊でもゾンビでもない奴ら。津原泰水が産み出した新しき異形は、さほど新鮮な恐怖を運んではくれない。確かにホラーゆえの大ボラ吹いてくれてはいますが、そのジャンルを超える普遍的な小説としての面白さを産み出すに至っていない。ホラー・フリークにはウケが良くても一般ウケはしない小説っていうレッテルが貼られてしまう虞が無きにしもあらず。しっかし、両性具有者の性行為ってのが、具体的に想像するとギャグっぽく思えてしまうぞ。だってねえ、そそり立つ陽根は上を向き、受け入れるべき箇所はその下で…(~_~;)。どう交わるってえの?

 ラストがいかにも『エヴァ』。自己陶酔型エンディングってのは、もういいやってとこあるでしょ。イメージから入るタイプの作家なんでしょうねえ。もう少し密な描写力で恐怖感を増殖させてくれると乗れるんでしょうけど…少女小説の分野からこっち方面へ引っ越してきた作家としての成熟を期待して次作品を探してみようか、とも思わせる文章力は買いでもあります。感性がホラーそのものなので、その部分を生かすためにもジャンル外の読者を取り込めるような構成力が欲しいところですねえ。(99年5月読了)

題名:バトル・ロワイアル 著者:高見広春
出版:太田出版 一九九九年四月二十一日第一刷発行  
価格:本体1480円+税 極私的評価:★★★★

 管理国家と死のゲーム。呆れ返るほどの物語の背景は、後の超絶バトルアクションへの単なる繋ぎと考えればよりよろしい(~_~;)。某ホラー大賞に挑戦して見事に落選した問題作らしいのですが(紀伊国屋新宿店ではそう紹介されてました)、選者のM・H曰く「こういう作品は許されないのではないか」だそうで、んなら読まねばなるまいと速攻でゲットだぜ>出版した太田出版はえらいっ!

 グロだけどエロじゃない。グロの部分もちゃんと中学生たちが青春してていっそ清々しいと言い切ってしまいましょう(~_~;)。プラトニックなラブが硝煙の彼方に儚く消えてゆく。史上最悪の椅子取りゲームって状況をセッティングしてしまうと、あとはやり放題。作者のイマジネーションのまま物語は転がり落ちてゆくのであるが、ちゃんと一定方向にコントロールされているのがナイスであるな。ここまでドアホなプロットが破綻していない。その場しのぎのようで、最後の対決へ到達する前にターミネーターみたいな最強殺し屋との小クライマックスは篇中の白眉だし、こんな女子中学生いるかっていう悪女系副主人公の辿る末路もしみじみとよいのだ。登場人物がほとんど中学生ということもあって、ポジティブなサバイバル行動律が『皆殺し文学』を格調高いものにしている、気がしないでもない(~_~;)。清く正しく生きている方々には拒絶感以外の何物も感じないかもしれませんが、清濁併せのむ度量の広い方なら、このトンデモ本を味わい尽くせることでありましょう。

 作者の脳内を映像が駆けめぐったようなタッチは、昔のルトガー・ハウアー主演の近未来脱獄アクション映画にあった体に接続された無線爆弾を思い出させますし、中学生たちの対決は『もっとも危険なゲーム』を連想させちゃうし、最後の方は『そして誰もいなくなった』風に展開するし、そういえば貴志祐介の『クリムゾンの迷宮』もゼロサム・ゲームでしたな。数少ないパイを奪い合うこのご時世。こういう作風に違和感覚えなくなった世相が産み出した作品と言えなくもないか(~_~;)。ま、映画化されたら絶対、坂持金発先生は武田鉄矢に演じていただきたい。絶対聞きたいこの台詞「せんせー、うれしいぞー」むはははは。(99年5月読了)

題名:夏のロケット 著者:川端裕人
出版:文芸春秋 平成十年十月十日 第一刷  
価格:本体1762円+税 極私的評価:★★1/2

 元高校生ロケッティアたちの甘酸っぱい荒唐無稽青春ロケットローンチ・グラフィティなのであるな。夢見がちな少年たちが大人になっても捨てきれなかった夢を求めて背広を脱ぎ捨て現実と如何に戦うかを、ファンタジー世界の住人と現実社会に片足突っ込んだ主人公=表街道を外れちゃった科学部記者が汗かきながら突っ走る。こいつは記者社会の中では一種アウトローなはずなんだけど、連中の中では一番まともというのが何ともユニークなのである。

 残りの一癖どころか二癖以上ある登場人物たちが繰り広げる無理難題が、あまりに大風呂敷広げ過ぎているようにも思えるのだけれど、地に足付けた主人公が、読者をふっと現実に立ち戻らせてくれるのだ。裏付けがそのまま科学小説と言っていいほど、文系読者にはトホホな部分が見え隠れしていると思ったら、案の定、作者は東大卒なんだもん(~_~;)。

 惜しむらくはミステリっぽい設定を持ってきたら、それなりにディテイルをしっかりしなくてなならないのに、主人公がロシアに出国する際に成田で公安のマークに会わないなんてちょっと甘チャン過ぎると思いませんか(~_~;)。ロケッティアの仲間が資金調達しやすいようにしっかりロックスターになって億単位の金を簡単に都合したり、主人公の記者時代の知り合いから簡単に宇宙服調達しちゃったり…この辺のご都合主義が、実は結構心地よいのであるぞ(~_~;)。こういう小説は、こういう風がよろしいのである。目くじら立てちゃいけないのである。遅れて来た第二の青春してる彼らのグラフィティを純粋に楽しんじゃえばいいのである。そう考えれば、これほど楽しい小説はないぞ。

 昔の映画でジョー・ダンテ監督の『エクスプローラーズ』って佳作があったけど、年代はもっと下なんだけど、何か似たような雰囲気あった記憶があるのよね〜。そのものズバリの『ロケッティア』なんて映画もあったっけ。合い言葉は『火星へ』って臆面もなく言い切っちゃうロケッティア一行様をニヤニヤ笑いながら、自分の過去の甘酸っぱい青春譜にシンクロしちゃうのが正しい読み方なのではないのかな(~_~;)。(99年4月読了)

題名:クリムゾンの迷宮 著者:貴志祐介
出版:角川ホラー文庫 平成11年4月10日 初版発行  
価格:本体640円(税別) 極私的評価:★★1/2

 意欲的な問題作ではある。確かに面白い。ただねえ…という留保付きなところが問題でもある(~_~;)。何でかって言うとこれがRPGの皮を被ってるホラー作品であるという部分。昔流行ったRPGブックやらホラーっ気の強いゲームの設定そのままを現実の生身の人間にやらせちゃったのでありますな。食人鬼(グール)やら毒蛇から身を守りつつ、用意されたわずかなヒントを辿ってゴールする。ところがゼロサム・ゲームだってことが判明してから惨劇は静かに確実に一行に襲いかかってくるのであった…むふふふ、怖いでしょ。

 夢落ちかいなと思いつつ、しっかり某所でのサバイバル・ゲームで幕を開けるのがなかなか新鮮。この辺のトリックは伏線張ってあって、後々謎解きされると腑に落ちるのだが、こういうのってほとんど反則技って気がしないでもないぞ(~_~;)。あれだけの人数をサバイバルの地へ連れ出すのもそう簡単に行くとも思えないし、至近距離カメラがあそこに隠してあったなんて、ちょっと出来過ぎ。食人鬼へと導くドラッグすらも説得力あんまりないよね〜(~_~;)。そんなんで簡単に理性が禁忌を超越しちゃうとは思えないっす。まあ、ご都合主義と言えば言えなくもないオンパレードではあるな。

 RPGの固定された方向性を逆手にとって物語に柔軟性を与えたのは作者のお手柄である。RPGブックって大昔一冊購入した記憶があるのだけれど、これがまた面白くなかったんだ、ほんと(~_~;)。そんな題材でここまで面白がらせてくれるなんて、さすが貴志祐介ではあるな。こういう実験的な作品もいいけど、彼の場合やっぱり本道はサイコ系ホラーだと思うので、次回作は『黒い家』→『天使の囀り』路線を継ぐ超絶作品を期待したいのである。(99年4月読了)

題名:ハルモニア 著者:篠田節子
出版:マガジンハウス 一九九八年一月一日 第一刷発行  
価格:本体1800円(税別) 極私的評価:★★★1/2

 直木賞受賞第一作。物語的深化を筆の限りに尽くす篠田節子の実験的小説。ホラーとかのジャンル分けを飛び越えて普遍的な生の喜びを静かに、しかし劇的に歌い上げるのだ。神秘の能力を持つ『美少女』がたどる奇跡の物語。その先に待つのは再生か破滅か。それとも…。登場人物の造形はさすがである。安心して読める環境を即座に構築する作家的作業を確実に、しかもステレオタイプではない物語的な支柱たるわき役たちを的確に配置する。つまりは篠田節子というブランドを確立しちゃってるのね。

 完全なるハーモニー。由希の脳内でとらえられた感性の宇宙。究極の音楽を追い求めた不完全なる演奏者と完全なる絶対音感の持ち主が互いを補って到達した地点。しかし絶対音感の持ち主は精神に重度の障害を持つ喋れぬ『美少女』であることから巻き起こる混迷から抜け出すまでの前半部分から、今日的な精神障害者施設の現状を抉り出す社会派的側面も見せながら、それでもなお、篠田節子的小説の辿り着く先を頑なに守り通す頑固さへ。この小説の着地点はこうなるほか無いというところで、結末を迎えるのである。それでいいのである。ミステリでもホラーでもない。書きたかったことを書いたに過ぎない作家の自動書記にも似た創作作業なのかもしれない。作者の自信が顔を出す。

 音楽家の苦悩を抉った部分が読ませます。主人公の劣等感と、教え子が易々と彼を超えてゆく瞬間を切り取って読者に見せつける作者の筆力。ノンジャンルとはいえ、そこかしこにホラー作品で培ったテイストが見え隠れしているのに、古くからの読者はホッとしている部分もなきにしもあらず、かも(~_~;)。潔癖な主人公が、いかにも篠田女史の作り出したキャラクターっぽくて好感が持てるのだが、もう少しドロドロしたセクシャルな感情の渦を前面に持ってきても、また違った小説的面白さを増したのに…と考えちゃうのはワシだけかな(~_~;)。ブレイクしちゃった桐野夏生女史を鑑みるに、何となく作家それぞれの方向性を眺めるのもそれなりに興味深いものがありますなぁ。(99年4月読了)

題名:妖臣蔵 著者:朝松健
出版:光文社文庫 1998年11月20日 5刷発行  
価格:本体1000円+税 極私的評価:★★★

 いわゆる忠臣蔵である。ただし、とびっきりホラー色の濃いストーリーを纏って魔人・大石内蔵助配下四十六士が、吉良上野介を討つついでに江戸の街を火の海にしてしまおうという破天荒さは、ホラー街道一直線の朝松健ならではの超面白伝奇小説ということが出来よう。五代将軍綱吉の代。ここに悪霊祓い師・祐天上人vs老中柳沢吉保&護持院隆光の血腥い魔道デスマッチが繰り広げられる。女人救済、四谷怪談、忠臣蔵をモチーフに存分に想像力の翼を広げた壮大なるストーリーをしばし味わうがよい。久々、風太郎忍法帖の頃の奇想天外魔界転生のワクワク感が心地よいのだ。

 作者の資質なのであろうが、あと一歩踏み込んだ描写が欲しい剣戟場面であるし、妖術の妖しさもその奇想が天を動かすまでには至ってないし、史実に縛られた人物が物語的ブレイクに至らないもどかしさも確かにあります。それを踏み越えてなお、赤穂浪士討ち入りの際の凄まじき山鹿流大流血殲滅戦。後の大岡越前やら清水一学やら堀部安兵衛ら元禄のスーパースターが吉良邸で斬り結ぶ殺陣の妖しさは、堂々ホラーが歴史を制圧した瞬間でもあるぞ(~_~;)。だから伝奇小説って好きなんですよね。呪詛対決もスパイス利いてるし、趣向の凝らし方がなかなか堂に入ってるねえ。

 惜しむらくは、前々作『元禄霊異伝』と前作『元禄百足盗』を読んでなくて、いきなり妖臣蔵に飛びついちゃったことですかねえ(~_~;)。魔界の背景をよく把握しないままの本書における呪詛合戦ってのは、いきなりだと我が理解の範疇を超えちゃう部分もなきにしもあらず。出来れば順を追って読んでいただければと思う次第でございます。初版から1年で5刷。売れてる本はやはり売れてるだけのことはある証拠ですな(^^)。ホラーしか書かないっていう朝松健の作家的嗜好は我が嗜好とも大いに合致する部分があるので、これからは要チェック作家として記憶に留めておきたい。(99年4月読了)

題名:青猫の街 著者:涼元悠一
出版:新潮社 発行1998年12月20日 著者HPへ
価格:本体1500円(税別) 極私的評価:★★1/2

 第10回日本ファンタジー大賞優秀賞受賞作だそうである。だからミステリとして読んではいけないのである。このファジーさは、やっぱりファンタジーなのであるなあ。現実から浮遊した感覚が次第に違和感となって、破綻を来す前に物語はブツ切れに終わる。『これが青猫ってわけ?』う〜む、ミステリ読みには困った物語なのであるが、ファンタジー者にはこれはこれでツボにはまった作品と言い切れるのか、残念ながら私に語る資格はない(~_~;)。ただ、つまらないよって投げ出せないサムシングが、優秀賞としての結果に繋がっているのだろうことは予想が付くのである。

 まず、おっと驚くのが、横書き作品であること。ネット上のMESそのものが横書きであるからして、こういう出版の仕方は当然の帰結と言えるかもしれないけど、目新しさが十二分に売りになる。作者のサイバー空間に大胆にメスを入れた現代性こそが、新タイプの面白さを引き出した。こういうのは早い者勝ちだわな。ネットサーフィンでクリックしてWEBを渡り歩く感覚。次々とディープなサイバー空間へ、アンダーグラウンドなBBSやらメール爆弾等のダークサイドなインターネットを存分に暴き出す現実感。ハッカー連中にはまだまだ甘いなって言われるかもしれないけど、素人筋にはこの程度で十分に感心してしまうのである。読了後、即インターネットにアクセスしてアングラBBS関係を検索してしまったぞ(~_~;)。ほとんどリンクが切れてる物が多かったけど…。現実でも『青猫の街』してるんでしょうか!?

 紙に印刷されて本になってしまうと浮いた感じもあったりなんかして、インターネット上で公開したならば逆に、この小説も一層の迫真力で読者にアピール出来たのではないでしょうかねえ。実際にクリックすると、別のサイトで関連した物語を重層的に発信したりすれば、これはこれでさらにサイバー・ノベルとして傑作たりえたかも(~_~;)。誰かそこまで踏み込んで公開してくれないかしらん。ネット上ですでに小説を発信してる井上夢人あたりに期待しちゃうんだけど、ねえ。(99年3月読了)

題名:プラチナ・ビーズ 著者:五條瑛
出版:集英社 1999年2月28日 第1刷発行  
価格:本体1800円+税 極私的評価:★★★1/2

 時として青臭い表現が鼻につく。散見する回りくどく口語体になりきっていない会話体。そ〜んな瑕疵を思いっ切り飛び越えちゃった国際暴力小説じゃなかった謀略小説。覆面作家のデビュー作としては水準を見事にクリアしてるのではないか。エピローグが長すぎてちと余韻を味わいきれないぞ、と文句を言っておこうか。スパッと切れ味いいラストでデビューを飾ってくれたら、もっと★増やしちゃうんですけど…(~_~;)。

確かに前半戦はもたついてます。メリハリがなくて主人公も頭使うヤツと体使うヤツ(~_~;)にクッキリ分かれちゃってるから、焦点がぼやけてなかなか感情移入し辛い展開ではありましたね。エディなんか無理に背伸びして作ったキャラっぽくて、あまり感心できなかったけど、決してステレオタイプじゃない分、ワシは評価します。今後、書けば書くほど文体に磨きがかかって、似非ハードボイルドっぽい表現が自然に消えて行けば、もう鬼に金棒ではないか。1800円+税をちゃんと本屋に払って買ったのだから、ガンガン言わせてもらいまっせ(~_~;)。

 おお、そうかそうか。目から鱗。『プラチナ・ビーズ』の謂われが結構新鮮ではあったぞ。よく考えてあります>この謀略の仕組み。人的情報収集活動に関してはほとんど手の内に入れていた作者でありますからして、ここまで描けるのは予想はしておりました。そっからが作家的発想をいかに膨らませるかが勝負なのですけれど、作者はこの勝負、勝ちを収めたようですな。さて、あと何人の新人作家が年内デビューするのであろうか。熾烈な新人賞レースを勝ち抜ける体力+気力が、この作家に備わっていることを願いつつ、続編でのあっと驚く新機軸を見せてくれぃ!と今から期待しておこう。(99年3月読了)

題名:永遠の仔 上、下巻 著者:天童荒太
出版:幻冬舎 1999年3月10日 第1刷発行  
価格:上巻1800円、下巻1900円(税別) 極私的評価:★★★★

 天童荒太、渾身の一撃。見えざる手に導かれし永遠の子供たちの辿り着いた地平には、立ち尽くすべき大地がポッカリと陥穽を空けて子供たちを飲み込み、銜えて離さないあぎとが彼らを永遠という名の監獄に幽閉してしまう。in printing=刷り込み。被虐待児童たちの幼い脳裏に焼き付いた親たちのありうべからざる日常。産み出された少年たちのトラウマの無惨さが淡々と描かれる天童荒太の筆先で、過去と現実の出し入れの中、あたかも現実のように焙り出されて行く衝撃度が、頁を繰る速度を緩めることを許さないのだ。

 サイコホラー系の作家としての認識から、予想と違う方向への展開に絶え間ざる違和感を持ち続けながらの読書ではありましたが、この作家の尋常ならざるポテンシャルは、読者を現実社会からの逃避を少しも許さないのでありますな。目を背けてはいけない親たちの『原罪』。人は救いを求めるのか。愛を求めるのか。なぜ罪を犯すのか。子供は無垢の魂を何色にも染める。染められる。強いられる。甘酸っぱい香りに支配された青春小説が、徐々にその仮面を剥がされて行く結末は、大人になった彼らの終着点でバラバラに弾け飛ぶ。飛び切り悲惨なかたちで…。もし、物語の構成が甘いと感じたのならば、物語上のクライマックスが、過去の時点に重きを置かれていたためではないかと思う。人は救いを求めて罪を重ねる。罪の源流がここにある。

 人間の深層心理を抉る作家の描き出す魂の復活は、限りなく深い悲しみを伴って静かに終わりを告げる。生を高らかに歌い上げる訳でもなく、死を否定すらしないまま。as times goes by。時の過ぎゆくままに魂は癒し癒され、罪は償われたのか。読者に委ねたまま、物語は数々の死を収斂して幾つかの生を産み出す。そこから歩み始める予兆を感じさせつつ、期せずして暴かれた過去に対する『罪と罰』をしみじみと噛みしめるラストではありました。(99年3月読了)

題名:李歐 著者:高村薫
出版:講談社文庫 1999年2月15日第1刷発行  
価格:本体714円(税別) 極私的評価:★★1/2

 たびたび話題に上るのだけれど、高村薫の描く世界ってこっち方面がそこここに見え隠れするのであるなあ(~_~;)。プラトニックな同性愛っていうか、どちらかというと同志愛に近いかもしれませんが…作者自身の性向もいくらかは反映しているでしょうし、まさか無意識にそちら方面に筆が滑るということも無いでしょう。ならば意図的、かというと実はそうでもない。描きたい世界がそっち方面と同心円的に混じり合うのでありますな。鬱陶しいと思うか肯定的に読めるかで、そのまま高村薫の好き嫌いに直結するのであります。

 何故に『我が手に拳銃を』を改題してまで『李歐』という作品に仕上げたのか。読めばたちまち分かるのですが、この物語は『我が手に…』から隔絶され進化した新たな物語なのであり、かといってまるっきり『李歐』の物語と言い切っちゃうことにも抵抗があるのだ。ああもう鬱陶しい高村ワールドの今回の出し物は『旋盤』&『町工場』。これでもかこれでもかと取材した旋盤工の日常を読者にぶちまけてくれるのはいいのだけれど、CIAだの中国当局の陰謀なんぞが出てくると途端に腰が引けちゃう部分もなきにしもあらず。

 確かに難読さ加減が影を潜めた。文章がこなれたのか。売れて作家的素養がソフィスティケイトされたのか。何にせよ大歓迎である。読みやすい高村薫なんて2〜3年前なら想像も付かなかっただろう。問題は主人公に容易に感情移入出来ない点か。生涯モラトリアム人間の一彰の糸の外れた凧そのままちゅー人生が容易に肯定出来ないのである。妻子より李歐なのか。何故? 説明仕切れてない。彼はホモだから? いやいやそんな単純な理由付けじゃ納得できないディープな物語の骨格が浮かび上がってくるのである。

 大陸への憧憬が、かたちを伴って一彰の前に現れたのが『李歐』なのではないか。夢は夢のまま遠く離れて現実との距離を置く。現実の工場経営こそが仮の姿であることを夢想しながら、李歐に託した希望が手の届かない現実であることを心の隅には認識している自分を遠くから眺めている。そんな一彰が遭遇した転機。満開の桜が象徴するパラダイスが李歐の棲む大陸に果たして存在したのか。憧憬は現実のものへと進化したのであろうか。読者自ら確かめることをお勧めする。(99年2月読了)

題名:双頭の鷲 著者:佐藤賢一
出版:新潮社 一九九九年一月三十日発行  
価格:本体2400円(税別) 極私的評価:★★★★

 『傭兵ピエール』を超えるスケールでありながら、単なる冒険活劇に終わらせなかったのは、佐藤賢一という作家の資質に関わるところが大であろうと勝手に推察させていただく。歴史上、特に中世フランスへの造詣の深さに、彼の想像力を思う存分そそぎ込めば、自然と立ち上がってくる主人公は、すでにオーラを纏った生の人物として小説をそのまま生き物に変えてしまう。実在の人物だろうと、空想のそれが大手を振ってパリの市街を闊歩していようと、息をし、女を抱き、城を攻め、敵兵をなぎ倒す様を俯瞰すれば、すなわち歴史の渦に飲み込まれて行く一過程に過ぎないある部分を切り出しただけ。作家は読者に給仕するシェフであるという立場をあくまで崩さない。

 ベルトラン・デュ・ゲクランという破天荒な人物を主人公に据えながら、その外堀を埋めるかのように回りから攻める作家の筆裁きに物足り無さを感じるのは事実なのだが、完成した物語にそれ以上を求めるのは無理というものだろう。あともう一歩踏み込んで書き込んでくれたら…。振り上げた剣を下ろす先は、すでに戦場の露と消えた痕跡でしかない。歴史上の一頁を全速力で走り抜けた男の破天荒な足跡を丁寧に辿る中世冒険絵巻。そこにあるのは確かな歴史の痕跡と確かに流れたであろう血潮の浸み行く大地。淡々と進行する物語は定められた歴史の頸城を免れ得ないのだろうか。フランス軍はデュ・ゲクラン大元帥のもと、イングランドの黒太子エドワードのモード・アングレを確実に撃破する。やはり歴史に『if』はあり得ない。

 作り上げられたキャラクターは呆れるほどに奔放不羈で、最期まで悪童ぶりを貫いた無垢の人でもある。ゆえに突っ走る彼をそのままストレートに取り上げても、ギクシャクとテンポの悪い読後感になっていたであろうことは容易に想像が付くのである。あまたの登場人物側から見たデュ・ゲクラン。側面からのアプローチ。客観的に捉えれば捉えるほど鮮やかに浮かび上がる大元帥像なのであるぞ。これが作者の狙いなのだな、多分。英雄の隠された真実(作者の想像部分)を味付けにして構築された物語。虚実の出し入れが単なる歴史書との大いなる隔たり。まさしく佐藤賢一はシェフ殿であらせられる_PEACE.gif (1079 バイト)。広げられた鷲の翼が包み込むように荒々しくもどこか優しげなその物語の着地点から、しみじみとした寂寥感を読者の脳裏にしっかりと刻み込んでくれる一級品のエンターテインメントとして導き出されたのは必然である。(99年2月読了)

題名:宣戦布告 上、下巻 著者:麻生幾
出版:講談社 1998年3月25日 第2刷発行  
価格:本体各1600円+税 極私的評価:★★★★

 官僚が国を導き、そして国を滅ぼす。バッドエンドへのシュミレーションを淡々と見せつけられているようでもあり、待ち受けているであろう苦い結末と現実との距離に読後呆然とすること請け合いである(~_~;)。幾分の誇張はあるにしても、紛う方無き役人の事勿れ主義が憲法第九条をタテに誰彼無く足を引っ張りまくりやがるのである。ああもう、鬱陶しいぞ>木っ端役人ども! 読み手にこう思わせてしまえば、もう作者の勝ちは決まったも同然。現実の日本の危機管理は一体どうなっってるんだ>内閣総理大臣殿(~_~;)。有事にまともに自衛隊動かせるのって小沢一郎ぐらいじゃないかって思われる今日この頃の政治家どもの憲法第九条周辺事情なのだな。

 生臭い政治家連中もほとんどモデルが誰か分かっちゃう書き方で、その方が臨場感ありありでストーリー的にもノリノリっすね。何せ現職の首相が公務時間に母親の見舞いに出掛けちゃうのだから、某剣道大好き首相を思い浮かべるしかないじゃありませんか。政治畑のジャーナリストである作者の皮肉な観察眼がよく利いてますぜ。国家って何だろう? 高級官僚どもの操り人形と化した大臣職の有名無実ぶりが、自分ですら判断できないがんじがらめの首相周辺と絡んで、極東一の軍事力を誇りながらただのお飾りでしかない現実にただ呆れ返るしかない。ここへ来て切羽詰まってる対北朝鮮のテポドン対策って、現実でもこの小説と大差ない無為無策ぶりが目に見えるようではある。

 ただのシュミレーション小説ではない。登場人物の血肉を感じさせる物語的厚みが悪夢の敦賀半島に展開する。リアルな戦闘シーンを支えるディテイルの濃さが、マニアな読者すらも納得させるのではないかな。バルカン砲の標的にされた生身の肉体は血と肉の霧となってわずかな痕跡を残すのみ。こりゃ凄いっす。非合法なことなら何やっても似合ってしまう北の工作員って、フィクション的には美味しい題材つーことが言えますねえ(~_~;)。でも、原子力発電所を制圧するって現実の戦略としては十分あり得るでしょ。潜入工作員ってあの辺に本当はうじゃうじゃいるんだろうなあ。金正日ソウル6月侵攻説って結構説得力あって、日本国内でも同時多発ゲリラが引き金となって、終末的光景が世紀末のあだ花としてのキノコ雲っちゅーシナリオは勘弁して欲しいのですけれど…(~_~;)。

 何でも噛みつく左がかった方たちは、現実にどう反応するかが見物ではありますね。お前らこそ前線で命張ってみろってんだ! 右翼思想の持ち主でなくとも、この小説読んだら声を大にして叫んじゃうでしょう、やっぱり。憲法改正論議もまた5月に再燃するでしょうから、一度、理論だけじゃなくて有事の際の自衛隊出動に関するアクションを前提にきっちり話し合って貰いたいものです。う〜むこういう感想書いてるワシって結構右寄りなのかな(~_~;)。(99年2月読了)

題名:OUT アウト 著者:桐野夏生
出版:講談社 一九九七年一〇月十五日 第四刷発行  
価格:本体2000円+税 極私的評価:★★★★

 アウトローかインローか。出口の際でモラトリアムに揺れる登場人物たちが織りなすボーダー小説の妙味を存分に味わい尽くすがいい。萬月風バイオレンス描写が隠し味となってスイッチの入れ替わる後半戦。意表を突くストーリー展開が物語に変調を加えて悪魔的なラブストーリーにメタモルフォーゼする時、カミングアウトした主人公は息を潜めつつ退場して行く。

 別人格として再生した彼女の愛はやはり奇形の愛なのであろうか。抑圧が生んだそれぞれの登場人物たちの出口は、それぞれに辛く重過ぎる現実に塞がれてしまう。この救いの無さがこの物語を支えていると言っても過言ではあるまい。う〜ん、ダークやねえ(~_~;)。

 インローのまま、日常の倦怠からの脱出こそがOUTのはずだった。現実社会の混沌はそんな甘えすら許さなかったのだな。読み進めるのが辛くなるほどの圧倒的現実を突きつけられ、唯一見つけた出口が『非食肉解体業者』への道(~_~;)。そこまで雅子を追い込んだものは何か。読者は必死になって考える。考えなければ感情移入出来ぬゆえ主人公には付いていけない。読み進められない。だからこそ、嫌悪感より先に彼女らの深層心理に触れようとするため、前提としての肯定がある。

 み〜んなアウトになるかセーフで終われるのか。審判は読者である。愚かな女たち。男たちはその隙間を埋める。補完する関係こそがラストのスイッチングに直結するのだな。ああ、もう究極のエクスタシーを理性が押さえきれない小説的結末。現実を突出させないで押さえ込んだ作家的勝利がここにはある。だからこそ、ここまで血生臭い小説を息吐く暇もなく読み進められるのだ。

 この作品でブレイクした桐野夏生はどこへ行こうとしているのだろうか。人間の心の闇を深くのぞき込んだ作者が、さらに闇の奥へ。もしくはミロ。どちらにせよ、萬月が憑依した作風は禁断の味ゆえに、最後まで女性作家がコントロール出来得るかが肝だな。ただ、萬月より血生臭さは不思議と感じなかったけれど…。(99年1月読了)

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