- Chapter 4- Page 1 Page 2 Page 3 Page 4


- 1 -


 《カチッカチッ》

 酔いがまわったさくらは、弾が切れるまでその勢いを止めなかった。

 そしてその場にいた者たちは、難を逃れるのでやっとと言う状況だった。
 ただ一人、安子を除いては。

「なんだ、もう終わりか」

 さくらの目の前にいながら、まったく動じることも無く酒を飲んでいる。

「これでやっと落ち着けるで」

 そんなうにゅうの言葉が届いたのか、さくらは正気をとり戻した。

「あ、あれ、私・・・」 
「気が付いたか。 周り見てみ」

 自分の周囲を見回して、少し困り顔をするさくら。

「私、また?」
「ああ」

 うにゅうの言葉に肩を落とすさくら。 凶悪に燃え上がる炎を見ながら、そっと呟く。

「不審火って・・・怖いよね。」
「火を付けといて今更のように言うなぁぁぁぁっ!!」

 うにゅう全開血管ぶち切れモード突っ込みが、夜空に空しく響き渡った。

 いまや火は高々と燃え上がり、空が揺らいでいる。
 そんなさくらの言葉を聞いたまゆら。

「さくららしくないよ〜 どうしたの?」
「・・・うん。 一応表彰式じゃない、だから暴れすぎるのはやめとこうと思ってたんだよ」

(出掛けにやめとこ言うとったのに、しょっぱなから暴れてたやんか)

「あ、それなら大丈夫。
 こんな炎、冷凍系最強魔法のラダルトであっというまに氷付けにしちゃうから〜♪ 」

(その後の解呪・除雪は俺達がやるんだが・・・)

 そんなうにゅう達の心の叫びなど、二人が知る由もなかった。

「そっか。 そうだよね。 さっすがまゆら、伊達にナイチチやってないのね〜♪ 」
「ナイチチはお互い様だよっ。 さ、安心して完全燃焼しよう〜♪ 」
「よ〜し。 ・・・でも、さすがに熱くなってきたよ。 なんか冷たいもの出してよ〜 」

 胸元をパタパタさせ、暑さをしのごうとするさくら。

「わたしはドラえもんじゃないけど、はい。 マダルト〜♪ 」
「わ〜い、氷柱だ〜。 ん〜、ひんやり〜。 まぐに、ほら、来なさいよ〜 」
「・・・たしかに見た目はペンギンかもしれないが・・・」

 横で相変わらずへにょへにょな涼璃の世話をしているまぐに。

「お、氷か。 いいねえ、表彰前の酔い覚ましにかき氷でも作るか」
「賛成〜」
「愛理に入れ物もらってくるよ」
「みんな〜、カキ氷パーティーだよ〜」


 まゆらの声とともに、近くにいたゴーストたちがわらわらと集まって来た。
 なにげにこの界隈、食欲旺盛(単に食いしん坊とも言う)なゴーストが多いのは有名な話である。

 そんなゴースト達の中、真っ先にきたのは美来とゆげ。
 満面の笑みでかき氷を受け取る。

「ゆげ、やっぱり食べられるものを召喚できると便利だよね」
「・・・自分で召喚した物が、『食べられるもの』の範疇に入っていなくても食うことがあるくせに」

「ショーちゃんは、僕と遊ぶんだよ!」

「なに言ってるですか! ショーちゃんはあたしだけのものなのですよー!
 何度言えばわかるのですかー!」

 いまだショータを巡って争っているソルトとねここもやってきた。

「はいっ、ショーちゃんカキ氷。 ア〜ンして(はぁと)」

 いつの間に来たのか、一人あたふたしていたショータを黒姉が独り占めにしている。

「ああっ! 抜け駆けは無し!!」
「なにしてるですか〜!!」

 三人の間に挟まれるショータ。

「う〜ん。 ちょっと・・・(ふにふに)・・・あついよ〜 」


 さくらは少し離れたところで、いちごシロップのかかったカキ氷を食べていた。

「キャンプファイヤー囲んでカキ氷って言うのも、なかなか乙なものね。」

 ちなみに2杯目。

「・・・ん? なあ、さくら」
「なに?」
「双葉が居らんようやで。」
「え?」

 確かにカキ氷を食べ、にぎわっているところに双葉の姿は無かった。

 辺りを見回すと、双葉とただきちが少し離れたところにたたずんでいる。
 さくらはカキ氷を手に、双葉とただきちの所へと行った。

「ほら、双葉。 あんたも食べなさいよ。」
「あ」
「なにやってんのよ、こんなとこで」
「ちょっと、いろいろ考え事を。」
「・・・そ」

 双葉の隣に座るさくら。
 共に過去を背負った存在。
 言葉を交わさなくても分かり合っている。
 そんな雰囲気が二人の中にあった。

 ・・・シャクシャク
 辺りに響くのは、二人の食べるカキ氷の音。
 周りの喧騒も、あまり届かなかった。
 ふと食べる手を止める双葉。

「・・・義姉さん」
「ん、何?」
「メロンは無かったんですか?」 
「・・・・・・あたしはいちごが好きなの」

 カキ氷を食べ終わると、夜の静寂、そしてキャンプファイヤーの喧騒が戻ってきた。
 そよそよ流れる夜風が気持ちいい。

「・・・」
「・・・」
「・・・そろそろ最終結果発表ね」

 夜空を見上げつつ、さくらは言った。
 澄み切った空には無数の星が瞬いていた。
 今日という日を祝福しているかのようだ。

「なんや、ちゃんと覚えとったんやな」
「当然でしょ。 かわいい義妹のことだもん」

 ちょっと照れくさそうに双葉を見る。

「義姉さん」
「かなり怪しいですね」

「う」

「ま、暴れ疲れただけやな。 きっと明日は雨やで」
「う〜、なによなによ! 私がこういうこと覚えてちゃいけないって言うの!?」
「お、落ち着けっ! せっかくのええ雰囲気が台無しやないか!」
「ぶち壊したのはうにゅうの方じゃない!!」

 どこから取り出したか、その手にはすでに火炎瓶が握られている。

「そんなもん出さんでええ!! ほ、ほれ、結果が発表されるみたいやで!!」

 見ると表彰台の上に人が登っているのが見えた。
 暗い表彰台の上。
 スーツに身を包んだ一人の人物がいる。


 カシャッ! カシャカシャ!

 表彰台に設置されたライトに明かりが灯り、その人物が浮かび上がる。
 伏せていた目を開け、静かにスタンドマイクに歩みよる。

 と同時に、ざわついていた会場に沈黙が走った。

 かの人は一度会場を見回し息を吸い込む。


『皆さん、大っ変長らくお待たせしました!
 何か最萌トーナメント、決勝戦の最終結果を発表します!!』


 待ち望んでいた公式発表。

 ファンファーレが鳴り響き、

『ワー!』 『待ってました!』 『最終公式発表 キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!』

 などなどの声援とともに、会場は一気に盛り上がった。

『結果発表は私、最萌運営代表のもりばがお届けします!!
 さぁ、気になる最終結果はコチラです!!』

 「ダカダカダカダカダカ・・・」

 ティンパニが盛大に打たれる中、後ろに用意されていたスクリーンに次々と文字が点灯する!


 【(双葉,涼璃得票)=(391,426),(392,427),(392,428),(393,434),
               (393,437),(394,427),(394,428),(394,432), 】
 

 「シャァンッッッ!」

 すべてが表示されたところでシンバルが鳴り響く。


『はいっ、疑問票の判断の違いによるバラつきが生じましたが・・・』


「・・・さすがに、負けてしまったみたいですね」

 表示される結果に気落ちする双葉。

「気を落とすことは無いよ、あんただって・・・」


『いずれの結果においても双葉の得票が上回りましたので、
 【双葉&ただきちさん】の優勝が決定致しました!!』


「え?」
「なんか間違ってへんか?」


『公式ページに掲載する得票値は各結果のメディアン(中央値)である・・・』


 「ダカダンッッ!」

 ティンパニと共に、得票の下に表示される文字。


 【最終結果(メディアン)
     双葉&ただきちさん    428票
     涼璃とまぐに           393票 】
 


『を採用致します!!』


「どういうこと?」
「涼璃さんが勝ったんじゃ・・・?」

 ファンファーレが鳴り響く中、会場のほうも混乱がおきているようだ。
 ざわざわと落ち着きがなくなっている。


『以上を持ちまして、何か最萌トーナメントは全日程終了となりました!
 皆さん、この3ヶ月間多数の投票、支援、応援等ありがとうございました!!
 しかーし、キャンプファイヤーは火が消えるまで続きます!!
 さぁっ、最後の宴を、存分に楽しみましょう!! 』


(やはり決勝の発表ともなると落ち着かないものだ・・・・)

 そう思いつつ表彰台を降りようとしたところ、運営スタッフの一人が走ってきた。

「どうしました?」
「はぁ、はぁ、双葉さんと涼璃さんの得票が・・・ 逆に表示されているようです・・・」

 スタッフはマイクに声を拾われないように耳打ちする。

 もりば氏は慌ててスクリーンを見上げた。
 最終結果は双葉の票が上だが、得票では明らかに涼璃が上回っている。

「今修正版を出します!」

 運営スタッフが走っていくのを見送る間もなく、
 もりば氏はすぐさまマイクの前に戻る。


『申しわけない! 微妙に間違ってる!』


 スクリーンには改めて


 【(双葉,涼璃得票)=(426,391),(427,392),(427,394),(428,392),
              (428,394),(432,394),(434,393),(437,393),

   最終結果(メディアン)
        双葉&ただきちさん    428票
        涼璃とまぐに           393票 】
 


 と表示された。


『・・・このように修正します。
 水差してごめんなさい。 吊ってきます・・・』


 寂しそうに立ち去るもりば氏の背中には、

「気にするなー!」 「よくやってくれたよ!」 「お疲れさまー!!」

 などの温かい言葉、拍手が送られる。

 もりば氏は、 「この場に関われて本当によかった・・・」 という想いを胸に、ステージを降りていった。


『これより表彰式会場のセッティングを行います。 大道具担当の方、よろしくお願いします』

 運営アナウンスが響く中、
 控え室に戻ったもりば氏の元に中継班から視聴率40%オーバーの知らせが届く。

(この企画にそれほどの人が注目してくれたのか・・・)

 改めて自分たちの成したことを噛み締めるのであった。


「ま、何はともあれ、おめでとう、双b・・・」
「がはは!! そろそろワシの出番だな!!!」
「な、汁?!」

 突如二人の後ろに現れた汁親父。

「・・・あなたは先刻に燃やされたのではなかったのですか?」
「がははは!!あれごときでワシの情熱までもは燃やしつくせんぞぉっ!!」
「正に最強不死身生物ですね」
「ただ単に迷惑なだけです」

「ふっ・・・お前達、これを見てみろ!!!」

 ば〜ん!!

『こっ、これは・・・!』

 一同の声が唱和した。

 いきなり響いてきた大量の掛け声。
 会場中に響き渡るほどの声に振り向いた一同の前にあったものは・・・

「そう! これこそ祭りにかかせぬ『やぐら』! 皆のもの、踊るぞっ!」

「・・・いつからキャンプファイヤーは祭りへと変化したのですか」
「いや、それ以前にこのやぐらをどこから・・・」
「わっはっは! 汁親父に不可能は無し!!!」

「だ、そうですよ双葉さん」
「・・・・・・」

 驚きの速さでやぐらの上に登る汁親父。

「それでは行くぞ、皆の衆! 今宵は踊るぞっ!!!」
 ドン、ドン、ドン・・・
「汁も垂れてりゃ〜ほらよいよい♪」

「その歌をまずはやめろっ!! そしてその舞も即刻中止しろ!!!」
「そ、そんな・・・ 折角夜通しでチェ○の舞を練習したというのに・・・」

一同『即刻やめろ!!!!』

「しゅん・・・」

  



<<BACK 【Chapter 3 5/5】  【Chapter 4 2/4】 NEXT>>
- Chapter - Prologue Chapter 1 Chapter 2 Chapter 3 Chapter 4 Chapter 5 Chapter 6 Epilogue A Epilogue B



■ Return to the Index Page ■