はじめに
「星の民俗館」は、1996年にインターネット上の仮想資料館としてスタートしました。
天文民俗学に関する調査資料をもとに、これを分類整理し、一般に公開することを目的としています。
「宇宙」といえば、天文学や物理学の世界を連想される方が多いかと思われますが、実は神話や伝説の世界
ばかりでなく、人々の日常の暮らしのなかにも立派に生かされてきたのです。
ところで、人と「宇宙」とのかかわりは、いつ頃からはじまったのでしょうか。おそらく、人間の意識のなかに
「宇宙」という概念が確立するまでには、遥かな歴史の流れがあったものと思われます。そして、世界のさまざまな
民族のあいだでは、自然科学としての「宇宙」の探求と並行して、人びとの生活や文化と直結したもうひとつの
「宇宙」が形成されてきました。これは、日本においても決して例外ではなかったのです。
日本人と星
かつて、日本人は星に対してほとんど関心をもたなかったと考えられた時代がありました。近世までは、ごく
一部の史料に星に関する記述が散見される程度でしたので、そのような捉え方も無理からぬことであったのでしょう。
しかし、その後の民俗学による常民文化の調査が進展するなかで、日本には豊かな「星の文化」が育まれてきた
ことが明らかとなったのです。現在ではむしろ、日本人ほど星というものを自然の一部として純粋に捉え、そして
利用した民族も少ないのではないかと考えられるほどです。
星の民俗といえば、多くの著作を遺された野尻抱影氏が第一人者といえるでしょう。日本で生まれ、伝承された
星の和名(呼び名)を積極的に蒐集し、それらを集大成された業績は特筆すべきものがあります。また、内田武志氏や
桑原昭二氏なども優れた業績をのこされています。さらに、各地で独自の調査・研究に取り組んでおられる方も少なく
ありません。これら、志を同じくする方々の記録や資料につきましては、できる限り「文献資料」に整理させて
いただきました。
展示について
当館では、このような「人間と宇宙の文化誌」を対象に、人びとが星や太陽や月とどのような関わりをもって
生きてきたのかを探求しています。その基盤は、約半世紀に及ぶ先達方の地道な調査研究を主体としていますが、
こうした努力の結果、従来からよく知られていた政治や宗教と結びついた天文の歴史とは別に、いわゆる庶民レベル
での天文の世界がようやく明らかになってきました。資料の多くは近世以降の記録や伝承ですが、その発想と
利用の形態は、他の民族ではあまり例をみないパターンを創出していることがよくわかります。特に星に
関する民間伝承においては、星の名の多様性や自然暦としての星の利用など、日本人独自の宇宙観が展開
されています。
展示内容は、一部の資料を除きすべて当館の調査データをもとに構成しています。したがって、地域的に日本全国を
網羅したものではありません。この展示において対象外となっている地域、あるいはテーマ等につきましては、
「文献資料」の記録や情報をご利用ください。

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