今回は、電磁力と重力の対比などをもう少し補足し、それが終わったら、次回はマクスウェル方程式をヤン−ミルズ場へ拡張していきたいと思っている。そうすれば、歴史的発展にも沿い、またゲージ原理の有効性が分かると思うからだ。

前2回のゲージ自由度の話では、重力場と電磁場のゲージ変換(座標変換)について、数式的な対比は行わなかったが、まず、それを完成させておこう。
アインシュタイン方程式は任意の座標変換に対して不変であるが、重力場すなわちΓijkは不変ではなく、ある規則に従って変換される。どういう規則かというと、適当な本を見てもらえば分かるのだが、座標変換後の値にダッシュをつける表記にすると、
             

となる。座標変換後こういう面倒な式になるのは、右辺第2項があって、そのためにΓijkがテンソルではないからである。(もしテンソルならば、第2項はなくなり、式はすっきりするが、そのかわり、等価原理を満たさなくなる。なぜなら、テンソルなら、一つの座標でΓijkが0でなければ、どんな座標でも0ではないから、局所慣性系は作れないからである。)

さて、この式はもっと見やすい形に書き換えることができる。そのために、4×4の行列Uとその逆行列を、その各要素が、
             
               (14)

を満たす行列としよう。また、Γk
という4×4の行列を

                            (15)
と定義する。
すると上の変換式は、次のように見やすく書ける:
                   
(16)

一方、電磁場のゲージ変換(位相変換)も、

             
                            (17)
とすると、
             
              (18)
と書くことができる。
重力場の(16)は電磁場の(18)と対応しており、こうしてゲージ変換そのものも、似ていることが分かる。ただ、電磁場の(17)は1次元のユニタリー変換
(U(1)という)だが、(14)はそうではない。

第2点目に補足しておきたいのは、曲率(場の強さ)の対応である。
電磁場の曲率は
                                           (19)
であったが、重力場で、それに対応するリーマン曲率は、もっと複雑で、一見、これとなんの類似性もないように見える。だが、本当に、類似していないのかどうか、みやすく書き直してみよう。

(15)と同様に、4×4の行列ijを、その要素がリーマン曲率と一致するように

             
と定義すると、Γとの関係は、交換子を使って、次のようになる:

             
            (20)

この各要素が普通のリーマン曲率になる。
で、これを(19)と見比べてみると、右辺第2項があるところだけ違っていることが分かる。この右辺第2項は、アインシュタイン方程式が非線形であることを示しているが、線形である電磁場ではたまたま交換子が0になっただけであるとも考えられる。つまり、非線形方程式まで含めた一般論としては(19)は本来、(20)に対応して

                                      (21)

であって、電磁場ではたまたまAiが単なる数であるので0になったのだけなのではなかろうか、という推測をすることができる。
実際、マクスウェル方程式を拡張する立場に立つと、その通りなのだが、これについては次回で明らかにする予定である。

さて、補足の第3点目は、共変微分の使い方についてである。
それには、まず、
すべてはラグランジュアンから始まる、というラグランジュアン物理帝国(?!)の立場を堅持することにしよう。レプトン、クォークすべての場の方程式は、ラグランジュアン密度から、オイラー・ラグランジュ方程式で導き出せるという物理帝国(?)の立場である。
第一にまず、相互作用のない自由場のラグランジュアンを書き下ろす。たとえば、電子について考察しているとして、自由場のディラック方程式は、
                        (22)

である。これから、自由場のディラック方程式が導かれる。
次に、方程式のなかに電磁場との相互作用を取りこみたいとする。
それにはどうしたらいいかというと、それはただ、自由場のラグランジュアン(22)において、微分を共変微分に置き換える操作
をすればよい。これで、自動的に電磁場との相互作用が方程式に取り込まれる。
すなわち、この場合では、電磁場と相互作用する電子の方程式は、

             
となる。これがゲージ原理の有用性であり、電磁場以外の相互作用にも通用する点が重要である。

                                      
                                        (以下は次回)

                                          

第26回                             電磁力と重力の接点(3)